佐々木譲の「降るがいい」(河出文庫、税込858円)を読んだ。13本の短篇からなる短篇集。どんな話が並んでるかといえば、例によってウラ表紙の紹介によれば。

〜突然、再就職の採用を断られた男、余命数カ月で敢えて籍を入れた女、金を返してもらえぬ元上司……。都会の片隅でごく普通に暮らす男女が隠していた過去の小さな過ちは、突如ありふれた「日常」を切り裂いていく。何が本当で、何が嘘なのか? じわじわとせり上がる焦燥感に満ちた珠玉のサスペンス。〜

 そのとおりなんでアトは「おもしろいから読みましょう」といってこの高座終わらせりゃいいんだが、ソレだと「手ェ抜くなつ‼️」とお叱りをこうむりそうなんで少し話をしときまさ。

 さてこの本は13本の短篇からなる短篇集といったが、アタシがいちばん「お〜つ‼️」となったのは、本の題名になっていて冒頭に収められてる「降るがいい」だね。

 何が「お〜つ‼️」なのかって? 

 この短篇、説明が少ねえんだ。上に引いた紹介に出てくる「突然、再就職の採用を断られた男」の話なんだが、何で再就職がダメになったのかも、再就職先がどんな会社なのかも、主人公が何で前の会社辞めたのかも、そもそも主人公はどういう経歴の持ち主なのかも説明されてねえ。

 は? 「ソレじゃ話がわからないじゃないの?」ですって?  

 ところがギッチョンホトトギス。

 この説明のなさが、逆に主人公の怒り哀しみやるせなさを出すのに役立ってんだな。この「降るがいい」を含めた最初の4本の短篇は、まず朗読会で読むために書かれたてえから、雰囲気てのをでえじにしたてコトで、ソレが説明があるとかないとかてえトコロにこだわらせねえチカラを持たせるようになったんじゃねえかと思うね。

 あと気に入ったなあ、「ささやかな悪意」の怖さを出した作品かな。まわりの人間関係をこわして、自分が女王でいようとした女性を描いた「遺影」とか、ビル清掃のおばちゃんが横柄な住人に対してした仕返しを描いた「分別上手」とか。こういう怖えのはどうもねえてかたは、「三月の雪」とか「終わる日々」でハッピーエンド気分してくんなまし。ヒネってはあるけどね。

 ソレにしても。アタシは佐々木譲の小説をわりと読んでるほうなんだがソレはみんな長篇だったから、「降るがいい」に収められたよな短篇があるコト知らなかったし、ソレがまた上手いというか読ませるというかおもしれえというかたあ思わなかった。

 ホント。まだまだいろいろ読まねえといけねえな。Cancer持ちになって人性の残り時間が少なくなったなんてボヤいてらんねえ。