"あの人たちを許さない!"
その怒りと同時に抱いた後悔。
私にも何かできたはず。私が何か行動していたら、こんな最悪の結末にはならなかったかもしれない。
たぶん、いつも通りに起きて、ごはんを食べて、家族と会話したり、テレビを観たり...そこには穏やかな日常があったと思う。
違ったのは、仕事に出掛けたまま、家には帰れなかったこと。
オーナーご本人も、今日、その命が終わるなんて考えもしなかったと思う。
優しくて、思いやりがあって、家族を従業員を大切にする人。自分のことよりも先に。
その日は忙しくて、開店と同時にお客様で店内は満席。
その中、お店にいた私も知らないところでトラブルは起きていた。
怒声が私の耳にも届いたときには、収拾がつかない状態で、お酒も入ったお客様の個室からは、机や物を破壊する荒々しい物音がした。
警察に...私や居合わせた他のお客様が携帯を耳にあてると、個室から出てきたひとりの男性が、"こちらでおさめるから、警察は待ってくれ"と。
そして、オーナーを呼んでほしいと言われて、その日は別店舗にいる旨を伝えた。
別の男性が出てきて、オーナーの友人だからと、名刺を出されて、連絡を促された。
この男性が怒声の本人だとわかった。
10分くらいして、オーナ-の姿。そのまま個室へ。
怒声と破壊音がしばらく続き、私は心配でたまらない。しかし、仲間の男性の見張りで助けを呼べない。
10分、15分、声と音がピタリと止んだ。私は、ホッとした。
しかし、個室を開けると、散らかった室内に血だらけのオーナーが目を閉じて正座していた。
声が上げられないほどの恐怖。身体がブルブル震えた。
誰が通報したのか、警察が4人店内から個室へ。私は抱えられて外へ。
オーナーは既に息がなく、死亡確認された。
4人逮捕されて、ニュースにもなった。
顔は認識できないくらいに腫れ上がり、ひとりで暴行に耐えた。正座をしたまま。
オーナーの声は個室から聞こえてこなかった気がする。地獄のような時間をひとりで。
逮捕された主犯の男性は、後の裁判で"刑期を終えたら、慈善事業だけに生きる"と。
だからなんなんだ。刑期を全うして、慈善事業で償い。それは、勝手にやればいい。
私は、あなたに同じ目に遭ってほしい。
いきなり呼び出されて、数人の個室で、正座させられたまま10分以上の暴行を、後に、そのまま...対等だと思う。
それ以外...私はあなたを許さない。