その時は気付かなかった。
環境、人脈、あらゆることに恵まれていて、それが普通であり、当たり前のことと思っていたから。
胸を張って行動したし、自信に満ち溢れていた。怖さも失敗も考えたことがなかった。
1度のズレをきっかけに、円滑だった歯車はきしみだした。
ズレた部分を修正すればよかったのに、それだけなのに、放置した。正さずに、向き合わずに。
と、いうか、その方法を知らなかった。
それまでが恵まれていたから。
はじめての挫折。認めて受け入れることにも時間が掛かった。
自分ではない、誰かや何かのせいにした。
ここから、一気に崩れだす。
胸を張っていた自分は、人影に隠れるようになり、自信を失っていく。
否定して、不安になって、怖くなって...
その思いは、次の失敗を作る。
そして、また、自信を失う。
やがて、人と接することが苦痛になり、家を出ることもしんどくなり、引きこもる。
あの頃...恵まれていた頃を想う。
もっと大切にしておけばよかった数々のことを。
「ありがとう」も「ごめんなさい」も口にしなかった愚かな自分を。