甘い空気に包まれて、ゆっくり時間が流れる。
ふたりの間に言葉は要らない。
理解して、打ち解けて、辿り着いたから...

"いいよね?"とか"いいかな?"その問いかけに頷きで応える。...これくらいにしておきたい。

"この先に進むのは同意の上だよね"とか、"ムリやりでも、強引に迫ったりもないよね"なんて、事務的でさらに意思確認の音声で記録する。

この一見、デリカシーのなさそうな、ムードも何もない発言と行動も、今や、正解になる。
"そんな雰囲気になって..."も、時間が経てば、愛と紙一重に存在する憎しみに触れれば、犯罪扱いにされてしまう。
それも何年、何十年を過ぎて、かたや過去や記憶に納めてあって、おとなしくしていた思い出が突如暴れだす。
言った言わない論争や、意思表示の曖昧さ諸々が都合よく脚色されて、愛ゆえに心と心でのふたりの関係は、被害者と加害者に。
本当の犯罪も存在するけど、自分の描く恋愛に進まなかった腹いせで、それに仕立てるものもある。
もう、雰囲気に任せてとか、成り行きで、気がつけば触れ合っていて...みたいな甘美な出来事や思い出は消滅したのだろうか?
素敵な時間とか、心と心で繋がる関係は絶滅したのだろうか?
その背景には、お金や名誉が絡んでいることがある。

密室でふたりだけ。だから素敵な関係が、仇や傷に変化する。

1度でも愛を意識した相手なら、その一瞬だけでも心が望んだことならば...

蒸し返すより、記憶や思い出にしたい。
成就しなかった想いであれば、経験や学びとして留めたい。