ただあなたの傍にいたかったから、あなたの望む私になった。


車好きのあなたはその愛を惜しみなく愛車に注ぎ手を掛けお金を掛けた。


それでもよかった。あなたの傍に居られるのなら。自分の意志など無視されてもいい。


私に向けられる気遣い、ましてや“愛”などそこになくても構わない。


心が私に向けられていないのは感じてる。でも、あなたは私を邪魔にしたことはなかった。


どんな時でも傍に居させてくれた。愛車を触るとき、友達と出掛けるとき、いつも一緒。


私はそれで幸せだった。それが続けば幸せなままだった。


最近、あなたは一人の時間が増えた。愛車にさえ以前の様に接していない気がする。


休みになるとあなたはどこかへ出掛けて行く。浮気?心が落ち着かない。


今までよりも活き活きして見える。私の知らないところに行ってしまう気がして辛い。


あなたに不安を打ち明けると、こんな切り出しだった。「車、売ろうと思う」すごく驚いた。


ここ最近の一人の時間が明確になった。


友人に懇願されて参加した自己を向上させるセミナーに毎週、出席していた。


その内容を話す姿に今の彼が見えた。話す力強さや信念。私は言った。


「そんなにあなたをキラキラさせるものなら、一度、私も連れていってよ。」


あなたは私にも見せてくれた。そこは愛車を手放すほどあなたのこころを掴んだ場所。


あなたに置いて行かれたくなかった。いつも傍に居たかったから、私もここを選んだ。


しばらくして思う。何かが合わない。貯金は底をつき、大切な友人が私を避けていく。


あなたに置いて行かれる不安より、今の自分への疑問が強くなった。


私はその場所からもあなたからも離れる決断をした。数年後・・・人づてに聞いた。


多くのものをその手から離し、人生をやり直していると。昼も夜も必死で働きながら・・・