オレの妹と同じ年くらいか?犯罪・未成年・家出...そのワードに加えて、泣き叫びながら警察に悪態をつく音声でテレビに視線が向く。
援助交際...取り締まりにあったのは、その相手。
顔にはモザイク、声はヘリウムガス。
家族が、仕事が、懇願する惨めな姿。
そんなおっさんはどうでもいい。
この威勢のいい女の子。何が悪い?身体を使って働いてお金をもらって生きている。
死ねというの?泥棒になればいいの?
言ってることに妙な説得力がある。
しかし、補導員に両脇を抱えられながら、暴れて、泣いて...その姿に幼稚さを感じて、なぜか安心するオレ。
引きこもりはじめて3年。
ゲームや動画を見ながら過ごす毎日。
髪も髭も伸び放題で、風呂は気が向けば入る。
社会人になって1年目、人との関わりが原因で、何もかもが嫌になり今の生活になった。
ダラダラ過ごす毎日。
カーテンを締め切った部屋、朝も夜も関係ない。ダメなことはわかってる。
思いながらも3年の月日が過ぎた。
オレからすると、このテレビの女の子は凄い。
生きるために、自分で稼ぐ。リスクからすれば安い金額を手にするために。
犯罪、病気、そんなことは関係なさそうだ。
このおっさんはみたく欲しがるヤツがいて、与える人間がいれば、売り買いは成立するのだから。
外気に触れて、正体のわからない人間を相手に身体をさらして金銭を得る。
たくまし過ぎる、オレから見ると、ある意味カッコいい。
それにひきかえオレは、毎日3度、飯を母親に部屋の前まで運ばせて、必要なものを書いたメモを配膳に置く。ジュースやお菓子類。
母親は、それを見て買い出しに行く。
気に入らなければ、母親に暴力を。
外に出られない極弱なオレの分際でも、家では、母親に対しては王様。
この女の子を見て、つくづく情けない。恥ずかしい。
こうなったのは、すべて自分以外のせいにしている。
今もそう。母親が言いなりになるから、オレは王様になる。
オレに、この女の子ほどのたくましがあれば...犯罪とわかりながらも、生きていくために必要なお金は自分で稼ぐ。何が悪い、死ねというのか、そう歯向かうくらいの根性があれば...