古い蓄音機にレコードを入れるのは私の役目。あなたが針を落とす。ひとつひとつの作業が音を奏でるための準備だと思うとおろそかになんて出来はしない。いつものソファに腰を下ろして耳をすます。しんとした部屋の真ん中の、3メートル先で蓄音機は、プツプツという。4つの耳がその瞬間を待っている。そして音が立ち上がる。私は小さい頃に繰り返し見た絵本を思い出す。本から立体的に絵が飛び出す様子を。音は板張りの部屋に渦を巻いたように広がる。

あなたはいつものように私の手を自分の手で包み、これ以上ないくらいの真面目な視線で蓄音機を見つめる。まるでその機器が運命を握っているんだ、と言わんばかりに。

窓から木漏れ日が差していた。季節は秋から冬へと移り変わろうとしていた。あなたの目を覗き込んでみた。色素の薄いグレーの瞳は何も映してはいない。かすかな安堵と悲しみが私の中に広がる。

音はただ空気を震わせているだけなのに私とあなたをつなぐ。それから、あなたと私は短い旅をする。