葬儀開始1時間前に葬儀場に到着。


中に入ると

最初にお線香をあげてくださいと

斎場スタッフに支持された。


この時は私が車を駐車場に駐めているうちに

息子二人が夫と義弟を介助してくれた。


一人遅れてお線香をあげたが

その後、なかなかスタッフからの説明がなく

喪主が視覚障害者だと伝わっていなかった

ようだった。


こちらも初めてのことで

どうしたらいいのかと待っていると

ようやくスタッフに喪主様ですか?と

話しかけられた。


そこで義弟がネクタイを気にし始め

「ちゃんとできてますか?」などと

私に聞いてきたので

スタッフに見ていただいた。

嫌そうにされたが、

私も締め方がよくわからないので

お任せしてしまった。


スタッフからは、当日の流れを

聞く予定と聞いていたのに

今後の四十九日の法要の話ばかりで

資料を渡され説明を受けていた。


そのうちに、私の両親、兄弟や

義実家サイドの親戚が来てしまい


一応受付をすることになっていた

息子たち二人は何の説明も受けず

慌てて受付に行くことに。


打ち合わせの時には

斎場スタッフに安心感を得たが

今日はなんだかぐだぐだで

不安が募る一方だった。

家族葬で心底よかったと思った。


その後、司会の方がいらして

義父を紹介するプロフィールアナウンスについて

確認や相談があった。


とにかく夫からも義弟からも

義父に関する情報やエピソードが少なすぎる上に

なんだか残念な内容が多く

司会の方も苦笑していて、

本当に申し訳ない気持ちになった。


その後、住職へのご挨拶。

契約上、斎場側で用意してあるおもたせに

お布施とお車代を添えて

住職の部屋を夫と訪問した。


お部屋は和室だったので

慣れない革靴の脱ぎ履きを

介助するのは一苦労した。


そこで、住職に戒名、その説明をいただき

「般若心経を唱えますので

皆さんにもプリントしたものを

お配りしますから一緒に唱えたりしてください」

と言われた。


「目の見えない方だと知らずに用意しましたので

聞いていただくだけでも大丈夫です。」

と言っていただいた。


住職からご挨拶の電話をいただいた時に

夫が伝えなかったのでこうなったと思われる。


とりあえず、ご挨拶を終えて

みんなの元に戻った。


夫側の親戚サイド、私の実家サイドに

軽く挨拶をしてからホールへ。

あっという間に葬儀開始時間だった。


司会の方がアナウンスを始めた時だった。

夫が、お腹が痛いと言い出した。

夫、私、義弟の席順。

後ろに息子二人がいたので

館内後方の司会の方に

喪主がトイレに行きたい旨を

息子から話しに行ってもらった。

そして、息子にトイレ介助をしてもらった。


戻って来たのは予定時刻を回っていたが

なんとか葬儀が始まった。


祭壇は打ち合わせの写真で見た通りに

質素ながら華やかさもあって

義父自らが生前に撮影していた遺影も

素敵に飾られていた。


供花は多くはなかったが

最後に棺に詰めるには十分な量だった。


葬儀進行に合わせて

スタッフから来る指示に対応しながら

そういった情報をすべて夫に伝え

喪主としての立ち居振るまいを介助し

さらに義弟も介助するという事態に

正直キャパオーバーになっていた。


何度もお焼香の大変さ、

一人での介助の難しさをスタッフに伝えたが

並ぶ席を変えることもできず

時間の都合上、同時に二人としてくれと言われ

火を扱うのにそれは無理だという私に

夫が強引に私に二人分を介助させると

スタッフと決めてしまい

無念にも最悪の事態になった。


結局、最初に夫と私で焼香台に向かい

夫を介助したあと、その場に待たせ

私もささっとしてから一緒に席に戻る。


そしてすぐに義弟を連れていき

皆様への一礼からお焼香3回をひとつひとつ

指示しながら最後の一礼をして

席に戻るまでの介助をするという形にした。


一度に二人なんてできるかっ‼︎


最初、パニックになっていた私は

大失態をしてしまった。。

夫を連れてお焼香に行った際、

一礼をしたあと、なぜかお坊さん側に回って

ご遺体に背を向けてお焼香をしようと

介助をしてしまった。。

自分でも自分が嫌になるほどの混乱ぶり。。


ギリギリ、始める前に気づいて

反対側に移動して参列者に背を向ける形で

夫とお焼香をした。


知らないわけでもなく

なんであんなことをしたのか

自分でもわからないけれど

ただただテンパっていたんだろう。


夫はお焼香をするに決まっている

というスタンスに対し

義弟は無理です、火傷しそうなので...

という真逆のスタンス。


じゃあやらないで済ますのかと言えば

夫からの圧力でやる方向になり

本人が気乗りしていないのに

介助してやらせなければならないという

とんでもなく精神的苦痛を感じる任務で

私の心は乱れまくっていた。


実際、義弟は、謎に畳まれた白杖を

握りしめていて離さない。

僕はコレを持っているから

何もできません、と主張しているのだ。


それを振り切るように

白杖を奪うように取って床に置き

私の肩に手をついてと指示をし

お焼香をこなした。


初七日も含めたので

お焼香は2回ずつすることになり

2回目になっても、義弟は「私は...」と

腰が引けたまま、また短くした白杖を

いつのまにか握りしめていて

それを同じように奪って連れて行くのは

こちらも本当に気が病みそうだった。


お葬式がトラウマになりそうだ。。


プロフィールアナウンスは

びっくりするほど上手にまとめられ

話し方や間合いの取り方にBGMも合わさり

最後の最後に夫の涙を誘った。


絶対泣かないからハンカチは要らないと

言い張るので用意しなかったら

喪主挨拶直前のアナウンスに

嗚咽をもらす大号泣。。


分からなくもない。

本当に涙を誘うアナウンスで

プロの凄さに感心した。


しばし背中をさすったりして

落ち着いて来たところで

所定の挨拶位置へと誘導した。


挨拶は私も一緒に暗記し

夫がとまってしまったら

こそっと伝える準備をしていた。


こういう時、みなさん日常には

使い慣れない言葉を原稿にして読む方が多いが

視覚障害者には原稿など意味がない。

暗記するしかないのだ。

夫もそこは大変な中よく準備したと思う。


一度だけ止まってしまったが

ほぼ忘れることなく喪主の挨拶をこなした。

義弟には兄を見習ってもらいたい。。



つづく。