奇偶/山口 雅也
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【あらすじ】



誰かが骰子を振って、この世界を壊すことに決めたんだろう…。

混迷の中、片目になった推理作家は、自らの墓碑銘を書き始めた。

その墓碑銘は…「偶然」。『メフィスト』連載に大幅加筆訂正して単行本化。


【感想】


「偶然」という名の神の存在意義を問う小説、かな。そ答えに辿り着くまでに、とっっっても長い、物理的、哲学的、心理的、宗教的、色々なものの観点から「偶然」とはなにかを解いていく。その説明がとっても難しいのだが、ストーリー性が豊かで、登場人物も魅力があったためか、結構すらすら読み進めることができた。最初の冒頭の出だしから、ちょっとこれは、頭を捻って読んでいかないといけないぞ、と読者を構えさせる文章構成となっているから、結構な量の本を読み込んできた人じゃないと、理解できないかも。ラストに近付くにつれて、主人公と、友人である精神科医の推理合戦がはじまっていくのだが、その推理のオチに「ええーっ」と鳥肌が立ったが、それとはまた違うオチが用意されていて、だけどそのオチはちょっとイマイチ。密室殺人のトリックは、本格推理好きな人にはちょっと物足りないかも。だけどこれを推理小説として読むのではなく、ひとつの奇書として読めば、ラストも納得できるし、面白かったって言えるかも。