彼女がその名を知らない鳥たち/沼田 まほかる
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【あらすじ】


十和子は淋しさから、飲み会で出会ったうだつの上がらない中年男・陣治と関係を持ち、なんとなく一緒に暮らすようになる。

ある日、陣治の部屋で、昔の男から贈られたピアスを発見する。

何故ここに…。

十和子が選んだ驚くべき行動とは!壊れかけた女、人生をあきらめた男。

ダメな大人が繰りひろげる100%ピュアな純愛サスペンス。



【感想】


前半はだめ大人のだめ生活が長く書かれている。これは本を読みはじめたばかりの人にはかなり辛い場面だ。本当に小説が好きじゃなかったら、ここで投げ出す人もいるだろう。僕は前半が特に好きだ。さえない中年男、陣治のありとあらゆる嫌いなところ、だめなところを、ヒロイン主点で書いていくのだが、それがもう読んでてヘドが出るくらいの罵声なのに、なぜかその中に、愛とはまた違う感情、同情のような、哀れみのような、そんな十和子の心境を読み取ってしまって、陣治のことが本当に嫌いになれないように仕向ける作者に完敗だ。後半、昔の男の面影をおとした男と出会って浮気に走り、いっきに展開が加速する。ラスト一ページは涙なしでは読められない。この二人にこんな愛の結末が待っていたなんて……と思わせる。最高だった。