夢食い魚のブルー・グッドバイ (新潮文庫)/玉岡 かおる

たこ焼きの中のたこは邪魔
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【あらすじ】

桜子とヤマトは、播州平野の小さな町で暮らす大学生。

学生から社会人へのわずかに残された時間の中で、二人はあやふやな関係の答えを探しはじめる。

友達から恋人へ、たった30センチの距離を泳いでゆけない水槽の中の哀しい魚に心を託し、

彼の本当の気持ちを探る桜子。

三代続く女系家族の家で、自分らしく生きるために彼女が選んだ新しい道は…。

22歳のせつないラヴ・ストーリー。

【感想】

好きなのに、素直になれないヒロインの心境が繊細に、だけど大きく描かれている。

その心をブラックバスという大きな黒い魚にたとえたのはうまい比喩表現だと思う。文章も滑らかだし、好きな人に対する心のほかに、家族に対する二十二歳という大人になろうとしている年齢の心が読者に共感を抱かせる。関西弁なのもまたいい感じだ。本書はそうとう古いけれど、時代を感じさせない青春小説だと思う。