飛水HISUI (100周年書き下ろし)/高樹 のぶ子
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【あらすじ】


一緒に暮らそう、一生に一度の気持ちでそう誓い合った翌日、惨劇が襲った。

日本中を悲しみで震撼させたバス転落事故に巻き込まれた男と女。

なにがなんでも、あの人に会いたい。強い気持ちで待ちつづけた時、

信じられないような奇跡がおこる。

切ない気持ちの輝き、強い願いの果て、空と山がまじわる場所での感動の再会。



【感想


髙樹のぶ子の新刊だーっ!と思ってすぐ購入。その装丁の美しいこと。

最初の桔梗の話がとても好き。それからだんだんと物語はそれっぽくなってくる。不倫……だけど、切なくて甘い愛。不倫の物語をここまで美しくしく書ける人はこの人だけだと僕は思う。

しかして物語は女の一人称で進んでいく。その語り口は、まるで現在のことをその場で見て語っているようだったから、後半あれれ?おかしい。おかしいぞ。段々女の心理描写が強くなり、そして劇的な再会を果たす。まさかそれが死後の世界でとは。思いもよらぬ展開に圧巻。その境目が分からずに何度もページを戻して読み返した。若くして死んだ男と人生を生き抜いて老婆となった女の再会はすごく不快なはずなのに、そこに嫌悪感は存在しない。不倫という悲恋を、純愛以上に大きく純粋な愛として書ききった作者に乾杯。