毒殺魔の教室/塔山 郁
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あらすじ


那由多小学校児童毒殺事件―。

男子児童が、クラスメイトの男子児童を教室内で毒殺した事件。

加害児童は、三日後に同じ毒により服毒自殺を遂げ、動機がはっきりとしないままに事件は幕を閉じた。

そのショッキングな事件から三十年後、ある人物が当時の事件関係者たちを訪ね歩き始めた。

ところが、それぞれの証言や手紙などが語る事件の詳細は、微妙にズレている…。

やがて、隠されていた悪意の存在が露わになり始め、思いもよらない事実と、驚愕の真実が明かされていく。

『このミステリーがすごい!』大賞2009年、第7回優秀賞受賞作。




感想


三十年前の事件に巻き込まれた生徒たちからの証言ではじまっていくこの作品。テンポがよく、すらすらと読めた。何十人といる生徒を数人だけにしぼって、その間で渦巻く人間模様を、繊細に、だけど分かりやすく書いている。特に、美和と夏実の女の子特有の初恋の人を巡っての争いは、なかなか見ものだった。自分が小学六年のときなんて、ただぼんやりとして過ごしていた気がする。そういう意味で、自分の過去まで振り返されるようだった。新人とは思えない書きっぷりがいい。最後、作品中で出てくる小説でのエンドロールも余韻を残しながら、静かに幕引きがされる。とても味わい深い作品だった。湊かなえの「告白」と被るということをちらほらと聞くが、さいわい、自分はまだその「告白」を読んでいないため、充分に楽しめた。