ヴェサリウスの柩/麻見 和史
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あらすじ


解剖実習中“ご遺体”の腹から摘出された一本のチューブ。

その中には、研究室の教授を脅迫する不気味な詩が封じられていた。

「園部よ私は戻ってきた。今ここに物語は幕を開ける…」

動揺する園部。彼を慕う助手の千紗都は調査を申し出るが、園部はそれを許さない。

しかし、今度は千紗都自身が、標本室で第二の詩を発見してしまう。

「黒い絨毯の上で死者は踊り生者は片腕を失うだろう…」

事務員の梶井に巻き込まれる形で調査を始めた千紗都は、チューブを埋め込んだ医師を突き止める。

だが、予想外の事実に千紗都は困惑した―その医師は十九年前に自殺していたのだ。

抜群のリーダビリティ、骨太のストーリー、

意表を衝く結末―第16回鮎川哲也賞受賞の傑作ミステリ。



感想


純粋に面白かった。一日で読み終えたし、読む手が止まらなかった。まず、献体制度に興味を惹かれた。

舞台が解剖実習室というのもいい。文体も滑らかで、作者が書き慣れている感じがした。キャラクターも魅力的で、一度だって生きた姿で登場しない「久世」という男の破滅的なキャラもまた一興。ただ、本格ミステリという部分においてはトリックなどは浅い気がする。言うならサスペンス。本格サスペンスだ。人間模様の織り交ざった江戸川乱歩的な。ラストもちょっとご都合的な展開だったから、その点においては残念。だけど、梶井を最後に活躍させてほしいという願いを作者は叶えてくれた。ありがとう。