いちばん初めにあった海/加納 朋子
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あらすじ


堀井千波は周囲の騒音に嫌気がさし、引っ越しの準備をはじめた。その最中に見つけた一冊の本、

『いちばん初めにあった海』

読んだ覚えのない本を捲ると、その間から未開封の手紙が……。

差出人は<YUKI>

だが、千波にはその人物にまったく心あたりがなかった。しかも、開封すると、「私も人を殺したことがあるから」という謎めいた内容が書かれていた。

<YUKI>とは誰なのか?なぜ手紙がはさまれていたのか?

千波の過去の記憶を巡る旅がはじまった――。
心に傷を負った二人の女性の絆と再生を描く感動のミステリー。




感想


なんというか、不思議な小説だった。この小説は一度小学校高学年か、中学校の頃くらいに読んだことがあって、とても感動して、たまたま書店で文庫になっているのを見つけて、買って読んでみたのだが、胸の奥が感懐で満たされた感じがした。ただ、これで短編なのは惜しい気がする。加納さんはとても優しい小説を書く。その世界観に僕はとても長く浸っていたい。とくにこの小説はそう思えた。短編だと主人公千波と関わっている謎のYUKIがすぐに誰だか分かってしまう。けれど、千波の境遇や、YUKIと思われる人物の優しさ、そして、この小説に出てくる、もうひとつの海の話。小説全体に見受けられる優しさに、僕はとても心を奪われた。