こんばんわ。

今回で最終回となるアンドリュー・グローブさんのお話を書いていきます。

【転機と決断】
インテルは当時、日本計算機(ビジコン)からロジックチップの生産を依頼されている。インテルはそれまでに小型のシングルチップ、汎用の論理デバイスの研究を重ね、独自の成果も上げていた。やがてロジックチップが開発された。インテルは特許権を日本計算機に譲らずに保有し、製造と販売の権利をライセンスした。インテルが今日のようなマイクロプロセッサの巨人になる道筋が大きく開かれたのは、グローブとその経営チームによるこの重要な決断のおかげだった。

 インテル成功の原因は、革新的な製品を出し続けるその力量にあっただけでなく、従来コンピュータの汎用機能部品であったものを、有名ブランドに育て上げたその巧みな戦略にもあった。テレビのコマーシャルによって、舞台裏にあったマイクロチップが表舞台に登場した。

「インテル、入ってる」のキャンペーンにのせられて、消費者はインテルのチップを載せたパーソナルコンピュータが欲しいと考えるようになる。インテル製のプロセッサ「ペンティアム」はマイクロソフト社のオペレーティングシステム「ウィンドウズ」と並んで、パーソナルコンピュータには欠かせない存在となった。

アンディ・グローブのビジョンはインテル成功の原動力となる。グローブは同社を小さなメモリチップのメーカーから、マイクロプロセッサ業界の巨人に育て上げた。インテル設立当初から、グローブはマネジメントと製造の間のバランスをうまく取れる経営者だった。1981年、IBM製PC向けマイクロプロセッサの納入をめぐる交渉でモトローラを蹴落とすことに成功した。

 戦争で疲弊したヨーロッパですごした子ども時代の経験は、さまざまな面で、グローブが経営者として生きていくうえで役に立った。あえて厳しい決断も下せる人間になっていた。1980年代、メモリよりもマイクロプロセッサに賭けたほうが有利だと思われるようになると、グローブはインテルの進むべき方向を見直すという、大胆でリスクの大きい意思決定をする。これは何千人ものレイオフが避けられない厳しい決断だった。1987年、グローブはインテルのCEOになったが、意思決定が楽になることはなかった。

 グローブは同社の主要製品、ペンティアムに欠陥が見つかったとき、会社に襲いかかる危機を未然に防いだ。おそらく数学の専門家以外には認識できないような、極端に狭い範囲の技術的な問題ではあるにしても、これがPRの面では桁外れの大騒ぎになる恐れがあると判断し、グローブは断固とした行動を起こす。

 大企業インテルの力を持ってすれば、クレームになった製品の交換だけに限定し、その手間を小売店と消費者に押しつけることもできた。ところがグローブはプロセッサそのものの交換をすることにした。このために4億7500万ドルという莫大なコストが発生したものの、インテルのブランドの名声は保たれた。その後利益は増加している。

 グローブは同社の株主にとっても神からの贈り物だった。そのCEO時代に、インテルの株価は24倍になっている。1998年5月、グローブはCEOを退き、取締役会議長として同社にとどまった。

グローブが経営の第一線を退いてから、インテルは、マイクロチップに対する需要の先細り観測はもちろん、いくつもの難しい局面に対処した。ムーアの法則(インテルの共同創立者ゴードン・ムーアが提唱した)によれば、マイクロプロセッサの演算能力は18か月ごとに2倍になるという。実際、最初の10年間はこの法則通りになり、消費者向けのチップのアップグレードを繰り返したおかげで、インテルの売上高は続伸した。

 ところが、時間の経過につれ、ムーアは能力向上のテンポがゆるやかになると考え始め、現実もその通りになった。グローブはこの流れに対応しようとしているようだ。そして「あらゆる企業がインターネットの関連企業になる」と公言している。この考えを背景に、インテルはインターネットを活用した事業の多角化を図っている。

プロフィール
1936年 誕生
1957年 「8人の裏切り者」がフェアチャイルド・セミコンダクタ社を設立。グローブがアメリカに脱出
1963年 カリフォルニア大学バークレー校から博士号を受ける
1968年 ゴードン・ムーアとボブ・ノイスがインテル社を設立
1979年 インテルの社長兼CEOとなる
1981年 IBMがインテル製のマイクロプロセッサの使用を決める
1985年 インテルが方針転換、マイクロプロセッサに専念する
1987年 インテルのCEOに就任
1994年 マイクロプロセッサ、ペンティアムに欠陥が見つかり回収
1998年 インテルのCEOを辞任

以上となります。

次回の「世界の偉大な経営者」は日本から。
現在も日本でトップクラスの経営者として知られているあの方のお話です。