ホンダのインサイトが口火を切った低価格ハイブリッド車が、市場を活性化し
ています。その背景には、ホンダイズムが見え隠れするドラマがありました。
関康成氏(ホンダ技術研究所四輪開発センター主任研究員)は、入社以来、低公
害エンジン開発に携わり、ハイブリッド車は門外漢。
急遽、LPL(大プロジェクト責任者)としてキックオフ・ミーティングに呼び出
され、渡された開発指令書には、前例無き5つの条件が並んでいました。
(1)世界ワンボディ、(2)各国の法規制に対応、(3)世界共通の販売戦略、(4)主
要部品の共用化、(5)世界販売台数は年20万台、日程・工場も自分らで決めよ、
というもの。5番目の条件は全工場がフル稼働中で、困難を極めます。
まず、関氏がやったのは「山ごもり」。全ハイブリッド車を大洗海岸の旅館に
持込み、開生販の主要メンバー皆で試乗します。宴会でのワイガヤを通じ、各
自が理想とする車について熱くぶつけ合います。この山ごもりが、メンバーの
連携を強めた様です。
開発の鍵は、いかに軽くするか・・・目標1200kg。
試行錯誤の末、エンジンとバッテリーの「パラレル方式」によるハイブリッド
システム、コストに有利なニッケル水素電池、工場は実力者へ願いをストレー
トにぶつけ、1つ1つ課題を解決していきます。
しかし、3万点もの部品設計が終わった段階で、目標を10kg以上も超えている事
が判明。関氏は「このままでは失敗する・・・」と直感し、苦汁のダメ出しを
します。執行役員へ試作車製作1ヶ月延期を報告し、部品設計のやり直しを決断。
「一度、モノを作ってしまうと、変えられなくなるんだ」と皆を説得。
その後、関氏は、500g超の1000点もの部品を、担当者とCAD端末を前に、一緒
に削減アイディアを練っていきます。そして13kg減というチリツモを実現。
また、電池メーカーの三洋電機が、トヨタと協力関係にあるパナソニックが買
収する事から、GSユアサと合弁会社を急遽設立。
しかし、プリウスを出し抜けたであろう戦略価格情報は、あえて秘密にしませ
んでした。「ホンダ1社でハイブリッド市場は担えない、切磋琢磨して市場を活
性化したい」と、幹部は言います。
ホンダが選んだ方式はシンプル構造で小型車向き。廉価にできるのは「訳」が
あるから・・・と、展開を示唆しています。
<AGORIA 2009. 05. 20より>