ようやく来たよ
待たせてごめんね
怒ってるよね
何？パパが来てないって？
パパはさ、誘ったんだけど
来たくないんだって
お母さんが亡くなってから
大山を見るのも嫌になったんだって
うん、だよね
1番パパに来てもらいたいんだよね
わかったわかった
いつか連れて来るから拗ねないでよ
え？かりんとうは？って？
ゴメン買う時間なかったんだよ
え？熱いコーヒーが飲みたいって？
勘弁してよ…
おばちゃんが毎日お母さんにお供えしてるらしいじゃない
全然減らないってさみしがってるよ
わがままだなぁ
本当に自分勝手
貴女って本当に自分勝手な女
こんな綺麗な場所でこんな綺麗な景色独り占めして
最期逝っちゃうんだもんな
これが1番勝手だったね
もう怒ってないよ
呆れた通り越し尊敬だよ、全く
良かったね
お母さんの大好きな場所で最期を迎えられて
幸せだよね
最期とっても幸せな気持ちだったでしょう
なら良かった
最期とっても幸せな気持ちだったって
あたし信じてるから
ずっと母と会話をして
哀しみと安堵と愛情が溢れて来て
涙が止まりませんでした
すると
「 元子さん、ビール持って来たよ。飲みましょう飲みましょう」
とNさん
プシュッとプレミアモルツを開けて
石の上に優しく流しかけてくれました
「 お母さん、煙草吸いないや」
と、弟はおもむろに煙草に火をつけて石にそっと置いて
「元子ちゃん果物持ってきたけんな 」
とおばちゃんは果物を添えてくれました
ケルンはあっという間に豪華に
「そろそろ行こうか 」
と兄が言わなければ私ず～っとそこに居てしまうところでした
「 また来るけんな」
とケルンに向かって母に別れを言って
その場を去りました