「ここです。僕が前回来た時にケルンを作っておきました 」
「お母様は、こう仰向けになって、丁度スティックを刺した状態でした 」
母が遺体で発見された時の写真を携帯におさめてくださっていたので
それを見せていただきました
小さな身体が真っ白の雪の中でコロンと
まるで疲れたから休憩をしようと雪の上で寝そべってるかのよう
いまにも起き上がって
「 あら美由起、こうすると景色がとっても綺麗なのよ。見なさい」
と言い出しそうな
小さな携帯画面に写っているのは
紛れもなくお母さん
いつも口うるさくて喧嘩もよくして
誰よりも近い女友達だった自分の母
現場の位置と写真を確認し
静かにケルンの前にしゃがみ込みました
ここの現場にくる前までは
正直
自分がどんな気持ちになるか全くわかりませんでした
実際は
ただケルンの前に座り
無言で涙を流すだけでした
言葉も出ない
何も考えられない
誰にも触れられたくない
ただただ
寄り添うようにずっと居たかった
無言で
ただただ涙を滝のように流すだけ
馬鹿みたいに涙と鼻水でグチャグチャになったくらいから
母と心の中で静かに会話が始まりました
続く