夏の終わりに
今日はとうとうある儀式を行うため、
荒川の土手へやってきた。
一週間ほど前、自分のバッグの中に
バッタの死骸が入っていた。
でも私は見て見ぬ振りをした。
だってどう考えてもそんなわけないから。
しかし今日、
バッグからワックスを取り出したら、
蓋の縁についたワックスに
彼の一部が付いていて
私はあのとき見た事実を受け止めざるを得なかった。
いまもこのバッグの底に眠る
彼の本体を、私は自然に返そうとした。
何のことはない、単に自分の部屋のゴミ箱に彼を捨てたいと思えなかったからだ。
(猫がかくれている)
そしてこの自然豊かな緑色の大地に
私はバッグを思い切り逆さまにした。
財布も時計も、小銭も、彼も、
自然と一体になってもらった。
私は拾うものを拾って、去った。
緑の中、彼の姿は見えなかった。
でも、これは私の中で必要な儀式だった。
怖かった。この夏一番。
ico


