真緒はクラスの数人の女子たちに、かなり嫌われている状態になっている。
でも、それは蘭の派手彼氏の件のせいだけでないと思っていた。
真緒の周囲からの目は、あきらかに入学以前と違う。後ろの席の野球部男子はこの頃、彼氏のことをいろいろ聞いてきて、真緒と付き合っていることを羨ましがっている。
席の近くにいる子らに聞こえるような声で何気に、彼氏と別れたら俺と付き合ってよと、言う。冗談にならない顔で、そんなことをさらっと女子に言うなんて軽すぎる男子と思ってるけど、なるべく話をしない様にしても限界がある。
真緒は男子の背の高さに興味がない。野球部男子は自分のスタイルの良さをひけらかしていると思うことが多い。
でも、仲良くしてる彼氏もいる上、そんな目立つ男子に言い寄られて調子に乗っているように思われているのはわかっていた。
隣のクラスには、同じ中学から来た一番モテていた男子がいる。
顔はイケメンで、中身が最悪男子なのだけど、学年で一番スポーツが出来たし、先生たちに気に入られていて自分のことを大好きな感じだった。
真緒とは真逆な性格だけど中二まで6年間も同じクラスだったので、親しみがあるのかしょっちゅう話しかけてくる。
高校に入ってからは、見かけると彼氏のことを冷やかすように聞いてくる。
性格の悪いことを良く知っている真緒は何のときめきもなく話しているけど、離れて見てたら、高校に入っても健在な自信に満ちたイケメンに声をかけられて喜んでいるように見えるかもと思う。
真緒は、噂好きの女子たちに確実に浮気者の様に思われている。そういう子達の内訳は、彼氏がいない子と、部活をしてない子と、遊んでいるのか遅刻好きな子が、ほとんどだった。彼氏持ちの子は、そんな仲間に入る気はないはずだった。
今まで真緒は 女子に妬まれることなどなかったので、どんな態度を取るべきなのかも分からない。
蘭の気持ちを考えると、真緒は自分の言葉の足りなかったことを謝りたかった。
あんな風にとらえられるとは思ってなかった自分はまだ、女心の分からない子供だと嫌になる。
でも謝れば余計におかしいとも思う。
何で真緒をじっと見てたかなんて確実なことは分かりもしないし。
もし 彼氏の気持ちを取られるかもという不安が、あったのなら蘭の行動は腑に落ちる。
総体の日、真緒は蘭といっしょに会場に行った。自分は応援だけなので緊張感はない。剣道女子もたくさんいて、嘘みたいにかっこいい試合をしているのを興奮して見ていた。男子の試合も応援に行き、仲間の技が決まるようにみえるたび、皆で大きく手を叩く。女子も男子も個人戦だけで勝ち進み、実力の差を見せられて終わる。
でも、 久しぶりに幸せな気分の日だった。
帰りの時間が近づいた時、真緒の彼氏が、一人の見たことない男子と仲良さそうにしゃべっているのを見かける。
呼ばれて、そばに行くと彼氏がヤキモチを焼くような態度でいる。
会場内では、あまり見かけない感じのその、きりっとした美形が、お前の彼女とか本当?俺、朝とか、わざと通りがかりにぶつかって話かけようと思ってたんだよ と、言った。
彼氏と同じ中学の剣道部だったという、その男子が羨ましがって彼氏をつついているうえ、真緒の肩に腕をまわそうとする素ぶりをして彼氏にさっさと払われている。
蘭も近くに来ていて、もう一人の一年生女子といっしょにいた。
それでまだ、美形男子が自分の名前を言って、真緒にも名前を聞いてきて、彼氏に怒られながらも無邪気に、こいつと別れたら連絡してよ と、携帯を出す。
さすがに首をふって断ると、笑って彼氏とじゃれたりしていた。
真緒はやっぱり、思いもしないことを言われてドキドキして、蘭の近くに何故だか、すぐに行けなかった。