第3雪  ~スノウ・ワー that day~ 雪の戦争(当日)


 そして、皆が待ちに待ったスノウ・ワーがとうとうやって来た――!
 俺は昨日麗音達と決めた場所に決めた時間に着くように朝早く起きた。
 時計を見てみると、7時ぐらいだった。
 待ち合わせ場所は、この家から歩いて5分ぐらいの所にある『雪山公園』に決まったので、ちょうどいい時間だろう。
 ――言い忘れていたが、俺の家から麗音の家まで1分もかからないらしい。さらに、麗華の家は麗音の家の2個隣にあるそうだ……。
 なので、集合と言ってもどうせ5分で目的地に着くし、集合する必要がないと言う事で会場となる、雪山公園に集合すると言う事になった。だが、混むと大変なので時間は開始1時間前の8時に決めた。
 俺は、時間があるので少しリビングでくつろぐ事にした。
 俺がリビングに着くと、そこにはもうリナがいた。
「おぅ、おはよう」
 いつもより上機嫌な挨拶をした。
「おっはよ~!」
 リナは、かなりテンションが上がっている挨拶をした。――まぁ、何と言っても今日はスノウ・ワーだからな。テンションが高いのは皆同じ。
 俺は、くつろぐためにイスに座り、窓の外を眺めた。――あぁ、平和だな~。
 俺がのほほ~んとしている中、キッチンから料理の物音が聞こえてきた。
 ――まぁ、ついでに朝ごはんも食べるか。
「リナ~、今日はコンポタよろ~」
 俺は気分屋なので、大体はその時の気分で料理を選ぶ。――今日は、コンポタの気分なのだ。
「分かった~。すぐ作るね~」
 そして、リナは調理を始めた。
  ――それにしても、朝起きてリビングには、パジャマ姿で料理をする妹って……。まぁ、悪くはない。
 俺たちは、土曜日と日曜日はパジャマ姿で朝ごはんを食べている。――これは、俺が決め事だ。理由はご想像におまかせします。
「ごはん出来たよ~」
 調理開始から数分で作るとは……。さすがリナ。
 まぁ、調理と言っても俺が言うコンポタは、コーンポタージュとトーストと言う意味なのだが。
 カチャカチャと音を立てながらテーブルに料理を置いていく。俺も少し手伝う。
 そして、リナも俺と向かい側のイスに座り、いつもの言葉を言って俺たちは朝食をとった。
「いただきま~す」



 そして、俺たちはスノウ・ワーの話をしながら楽しく朝食を食べた。
「ごちそうさまでした~」
 俺は一回伸びをして、時計を見てみた。――7時20分。
 まだ時間に余裕があるので、自分の部屋で時間を潰す事にした。
 そして、俺は立ち上がり自分の部屋へ向かおうとしたら、リナが俺を呼び止めた。
「そういえばさぁ、今日のスノウ・ワーって友達と見に行くんでしょ?」
 リナが少し寂しそうな目をしてそう言った。
「あぁ、今日は初めて見るし、いろいろと知りたいからな。リナも友達と行くのか?」
 俺は、適切な言葉を選び言った。
 そうしたら、リナが少し恥ずかしそうにしながら言った。
「そ……それじゃあ、今度スノウ・ワーが開催されたら、一緒に観に行こ……?」
 うっ……、妹が恥ずかしながら上目遣いって――! ……落ち着け~、落ち着け、俺。
「あ……あぁ。機会があったら、一緒に――な」
 俺がそう言うと、リナはニコニコしながら言ってきた。
「ありがとう、おにぃ~ちゃん!」
 ――いやいやいや! ダメだろ、これは。いろいろとアカンだろ。
 俺は、大変な事になりそうなので速めに歩き自分の部屋へと向かった。

俺が教室に入った時には、クラスの5分の4ぐらいの生徒がいた。
 ――残りの5分の1は、クラスに数人はいる遅刻生徒達だ。
 そして俺が自分の席に着くと、最近仲良くなった「花咲桜」(男)が話しかけてきた。
「やぁ、おはよう。――ところで、君が持っている「それ」は何だい?」
 ――俺は気づいた。
(……弁当入れるの忘れた)
「その中には何が入っているのかな?」
 ――中身を見られたら、かなりやばいと思うのだが……。何と言ったって、リナの手作り弁当なのだから……。
「い、いや。これは、ただの弁当だ」
 俺は焦りつつも言葉を返した。
「ふ~ん。変な物とか入ってるんじゃないの~?」
 桜は変なことを考えながら、変な目をして、変な喋り方で俺に聞いてきた。――いちいち、こいつの喋り方といい性格といい、何か腹が立つな。
「それじゃあ、変な物って何だよ。言ってみ」
 俺は少し強気になりながら答えた。
「は……? べ、別にそっち系のことじゃねぇし。――てか、見せればいい話じゃん」
 ――うわ~。どんどん性格変わって来た。女子に見られたら大変だよ~。男の娘さん。
 俺は勝利を確信し、最後の一押しに出た。
「それじゃあ、普通の弁当見て何がしたいの? 見せ合いっこならいいけど~」
「――う、うるさい! も、もういいよ!」
 桜は最後、負けるとなったら女子っぽくなるな~。さすが男の娘。
 このミニ喧嘩は、桜の声の小ささで、他の人には気づかれていなかった。
(女子にボコされずにすんだ…・・・)
 俺は「ふぅ」と息を吐き、朝読書の準備に入った。


 ――そして、数分後にチャイムが鳴り、担任の先生「勾原美華」が教室に入ってきた。――相変わらず、遅刻生徒は来ていない。
「は~い。それじゃあ、朝読書の用意をして」
 美華先生は、いつもの言葉を言った。そして、いつも通り生徒の数を小声で確認した。
「1、2……3,4,5――チッ」
 ――そして、いつも通りにいない生徒を見つけると舌打をした。――顔が怖いって……。
 そうしている内に、8時30分になり朝読書が始まった。
 ――それと同時に遅刻生徒達の登場。
「遅れました~」
 そして、後ろからゾロゾロと5人ぐらいが入って来た。
 ――俺は先生を見てみた。……やっぱり怖い。
「ちょっとこっち来い」
 先生はそう言って、遅刻生徒達を教室から連れ出した。――いつも通り、先生に『orz』しなくてはならないらしい。
 そして、俺は大人しく朝読書をした――。


 ――キーンコーンカーンコーン……
 朝読書終了のチャイムが鳴った。
 そして、先生と――『w』ではすまされない姿になっている遅刻生徒か帰って来た。
 ――まぁ、これもいつもの光景。
「――それでは、朝の会を始めます」
 そして、俺のいつも通りの学校生活が始まった。



――俺は授業中も、スノウ・ワーを早く見てみたいと言う気持ちでいっぱいで、全く勉強をする気になれなかった。
 さらに、3時間目の国語の時間に周りを見てみると、クラス中(先生除く)がソワソワしていた。――中には、俳句を先生が読む時『雪』と言う単語が出るたびに「はぅ!」と声を漏らす生徒もいた。
 ――そして放課後。授業と言う拷問から開放された生徒達は、明日の集合場所や時間などを決め、いつもの1、5倍ぐらいのスピードで帰って行った。
 そして俺も、昇降口で麗音と麗華を待った。
「おっまたせ~!」
 ――直後に麗華が来た。
「待たせて悪い!」
 続いて麗音も来た。
「おぉ、それじゃあ帰るか」
 そして、俺達も皆と同じ様に明日の事を話しながら帰った。

俺達は、教室の前まで一緒に行く事にした。
 靴を履き替え、3階にある2年の教室へ向かった。
 そして、俺達は職員室の前を通った。
 とうとう、無言状態に耐え切れず麗音が口を開いた。
「――それにしても、すごいよな~」
 麗音は、職員室前に飾られている、この町の町技(?)と言われているスポーツ「スノウ・ワー」のトロフィーを見ながら言った。
「1回見たことあるけど、あれはすごい。――まるで戦争だ」
 麗音は、なぜかムードを作りながら話し始めた。
「スノウ・ワーは、簡単に言えば雪合戦だ。――だが、名前通り……戦争だ」
 ――スノウ=雪、ワー=戦争。そう考えると、雪の戦争……。
「ルールは、1チーム5人で、アタッカー・ディフェンダー・サポータに所属する。アタッカーは1~3人、ディフェンダーは1~2人、サポータは1人となっている」
 ――俺なりに解釈すると、簡単に言えばサッカーの様な物だろう。フォワード(攻め)・ディフェンダー(守り)・ゴールキーパー(支持者)と考えれば。
「そして、各チームに1本旗があり、その旗を取られると負け。取れば勝ちだ。――旗はどのような手を使って取っても構わないらしい」
「『――そして、各チームには1つずつアイテムが渡され、それをうまく使いこなす』でしょ?」
 麗音の説明に、麗華がいやみっぽく割り込んできた。――だが、麗音はそれを普通に受け止め、話を続けた。
「そうだ。そしてアイテムは、手溶弾・フレイムシールド・硬雪手袋の3つだ」
「んで、手溶弾はボタンを押して投げる。5秒後にはドカーーン! ――と言っても雪を溶かす事しか出来ないけどね~」
 ――また麗華が割り込んできたし……。――そして、麗音がスルー……。
「そうだ。そして、フレイムシールドは敵の雪球から身を守る。硬雪手袋は、装備して雪玉を作れば普通の3倍――石ぐらいの硬さになる」
 ――俺は、麗音が説明し終わった所で麗華を見てみた。――すねてる……。
 そして、最後に麗音が話をまとめた。
「まぁ、石(雪)が飛んで銃で打ち合い、手榴弾(手溶弾)が飛び交っていたら、もう戦争だよな」
 ――あれ? 石と手榴弾の意味は分かったけど、銃は知らないぞ……?
「銃なんて説明された覚えは無いが……?」
 俺が2人に説明すると、麗華が先に答えた。
「え~っと、銃は3種類あって、1つ目はsnow five shooter――通称SFS。これは5連発銃。2つ目はライフル。3つ目はショットガン」
 ――なんか1つ目だけ名前がすごいんだけど……。まぁ、いいか。
「知ってると思うけど、5連発銃は、5連発で発射する。ライフルは、半径10m内まで狙える。ショットガンは、撃たれれば気絶する。――何発も心臓に打たれて死んだ人もいるらしいよ」
 ――何かすごいスポーツだな……。
「――と、まぁこんな感じかな。スノウ・ワーは、今月中に開催されるから今度みんなで見に行こうよ!」
 俺達3人は、スノウ・ワーを見に行くと約束した。
 ――そして、話している内に教室の前まで来ていた。
「それじゃあ、また放課後」
 俺達は、「じゃあ」と言って教室へ入った。
 ――そういえば、麗音が話を切り出してくれたおかげで、気まずい空気が消えたな。――意外といいやつだな。

      第2雪  ~スノウ・ワーthe day before~ 雪の戦争(前日)


 俺達が学校に着き、時計を見たら5分ぐらい余っていた。
「――はぁ、はぁ……。何とか、間に合った……」
 あの体育好きの麗音でも、かなり息を切らしていた。
 そして、麗華も息を切らしながら言った。
「き……休憩は、教室に入ってからに……しましょう」
 俺も含め、3人は息を切らしながら教室へ向かう事にした。
 そして、俺が歩き出そうとした時、後ろから少女の声がした。
「お兄ちゃ~~ん! お弁当忘れてるよ~!」
 俺はリナだと思い、すぐに後ろを向いた。
 ――そこには、いつも通りの誰をも魅了する(一部)リナが立っていた。
「リ……リナ!?」
 俺はなぜリナがここにいるのか、そして登校中の生徒の前で「妹がいる」と言う事を知られて、軽くパニックになった。
「もぉ~、お弁当玄関に置きっぱなしだったよ?」
 そう言って、リナは俺に水色のバンダナで包まれたお弁当を渡してくれた。
「あ……ありがとう」
 俺は少し落ち着きを取り戻しながら言った。
「後は手紙に書いて置いたから」
 リナはいつも通り――ではない笑顔をして言った。
 ……これは、まずいパターンだな。
「まぁ、今日は氷雪小トラブルが発生して、休みになったらしいよ」
 リナは表情を戻し俺に言った。
 ――納得。だから今、ここに来れた訳だ。
 ちなみに、リナは家から徒歩5分ぐらいで着く氷雪小学校に転校した。――まぁ、俺は中学からだから、転校と言う意味では無いと思うが……。
「それじゃあ、がんばってね!」
 そう言って、リナは家に帰って行ってしまった。
 ――そしてこの場に数秒の沈黙……。
「え……え~っと、氷牙って妹いたんだ……」
 最初に口を開いたのは麗音だった。
「ま……まぁな」
 それに対して、俺は答えた。
「氷牙君の妹って、けっこう可愛いね~」
 そして、麗華も口を開いた。
「と……とりあえず、教室に行こう」
 俺は麗音達に言い、俺達3人は教室へ向かうことにした。

   第1雪  ~メモリー・スクラップ~ 記憶の破片


 今日は、12月15日。ちょうど俺の誕生日の10日前だ。
 そして、リナの誕生日は12月24日。――クリスマスイブだ。
 ――確か火事が起きた年は、クリスマスのイベントやらなかったっけ……。一応、俺達の誕生日パーティーは近所の人の協力でできたのだけれど。
 などと、俺はいろいろ考えながら学校へ向かう道を歩いている。
 俺が昔の事を思い出しているうちに俺が通っている中学校「氷雪中」が見えてきた。
 ――俺は、氷雪中に始めて来た時をふと思い出した。

  

   ***


「ここが氷雪中か……」
 俺は、期待と不安でいっぱい(どちらかと言えば不安が多い)の心で校門をくぐり抜けた。
 中はもう、新中1の生徒でいっぱいだった。
 俺は、クラス表が張り出される掲示板の所まで歩き出した。
 ――それと同時に後ろから声がした。
「――そういえばさぁ~、別の町から来た同い年の子がここの学校に入るらしいよ」
「えっ! まじで!? 早く見てみたいな~」
 どうやら、女子一人と男子一人で話しているらしい。――リア充か。
「――? 何か前にいるやつ見たこと無いよな……?」
 俺のうしろにいるリア充(男)がリア充(女)に話しかけた。
「たしかに。このまま放置するのもあれだし、話しかけてあげれば?」
「了解」
 そして、リア充(男)が俺に近づいてきた。――リア充と話す気など全く無いが。
「よぉ。おまえ違う町から来たんだろ? ――この町のこと教えようか?」
 リア男(面倒なので)が俺の前に来てそう言った。
 俺はたしかにこの町の事は知らないので、教えてもらう事にした。
「あぁ、まだよく分からないから教えて――下さい」
 ――一応同い年だが初めて会うし、どちらかと言ったら俺のほうがアウェーな立場なので、敬語で話した。
「あ~……別に同い年なんだし、タメ口でいいよ。んで、俺の名前は 白浪麗音 。よろしくな」
 リア男の自己紹介が終わったと同時に、後ろからリア女もやって来た。
「私は 無月麗華 。よろしくね」
 二人の自己紹介も終わったので、俺も自己紹介をした。
「俺は雪野氷牙。よろしく」
 俺が自己紹介をしたら麗音が「あっ」と言い話を始めた。
「ついでに、俺の事は麗音でいいから。――ちなみに、小学生の時のクラブはサッカークラブだ」
 ――サッカーか。まぁ、俺的には好きな方だ。と言うかすでに麗音と呼ばせてもらっていますけど。
「私の事は麗華でいいから。クラブは、情報だよ!」
 麗華が、麗音の後に続いて言った。
 ――情報か。納得。だから麗音と一緒にいたのか。
 そして、俺も麗音達と同じく言った。
「俺の事は氷牙でいい。あとクラブはパソコンだ」
 ――この時パソコンクラブ入っていたから今こうなっている。

・友達少ない。――と言うか作りたく無い。
・土曜はネトゲ三昧。そしてオール。(日曜は宿題)
・祝日はカラオケかネトゲ。

 これが今の俺の現状。
「へぇ~。パソコンクラブか。福本と一緒だな」
 ――誰だよ。
「あいつ、今どうしてるんだろう」
 ――と言う事は引っ越したか。
 などと、心の中で麗音につっこんでいたら学校のチャイムが鳴った。
 ――キーンコーンカーンコーン――……
 それと同時に掲示板っぽい所にクラス表が張り出された。
「おっ、ついに来たぞ~! さぁ、どうなったか――!」
 そう言って麗音は走って行ってしまった。
「ちょ、待ってよ~!」
 麗音を追いかける様に澪禍も行ってしまった。
 ――そういえば、この町の事教えてくれるんじゃ……? ――まぁ、いいか。
 
そして、俺も麗音達を追いかける様に走った。

 

    ***


 確かその時は、俺が3組で麗音が1組、麗華が2組だったっけな。
 その後も、生活していく内にだんだん周りに溶け込める様になって来て……。
 ――まぁ、友達はまだまだ少ない方だったけど、一応一年間やって行けたんだしいいか。
 俺が思い出を振り返っている時、後ろから声がした。
「よぉ氷牙」
 今では、もう親友の麗音が俺に言った。
「おはよう麗音」
 俺も後ろを振り返って言った。
「おはよー! そして二人とも急げ~!」
 そのまた後ろから女子の声がした。――この声は、今ではもう親友同然の麗華だ。
「やっべ! あと3分しかない……。――よし、学校までみんなでダッシュだ~~!」
 麗音はそういって俺を抜かし走り去ってしまった。
「あっ、ちょっと待ってよ~!」
 そして、麗音を追いかける様に麗華も走り去ってしまった。
 ――と言うかあと3分って……。やばいな。
 そして、俺も麗音達を追いかけるように学校へと向かった。
(何かこの光景、見た事あるような……。まぁ、いいか)