突然お届けいたします、超お久しぶりのSS。48巻ACT.301の続き妄想です。←いまさら
しばらく本誌から離れているので、早く新刊出ないかなーなんて考えながら、つい48巻から読み返そう!となって、読後すぐ思いついたお話です。推敲に時間がかかった・・・。
ただし目新しさはどこにもなく、いつもの、いつもーのテイストですよ。
■ エモノのうたげ ■
弾む息はそのままに
誰にも見つからないよう、だるまやのご夫婦にも悟られないよう、出来うる限り音を立てずに二階の自室に忍び込んだ。
とうの昔に夜は更け切っていて、辺りは静まり返っている。
だというのに私の心臓がこれほどまでに騒いでいるのは、きっと走って来たからだ。
おそらく今の自分は顔だけじゃなくて全身が真っ赤に違いない。
後ろ手に、パタムと入り口を閉ざしたところで更に顔が火照った。繰り返し弾みまくる息が苦しい。
こうなった原因は分かっていた。とても単純な理由なのだ。
それは、敦賀さんに抱きしめられた直後だから――――。
数分前の温もりと声を思い出し、羞恥を振り払おうとブルブルと頭を横に振って片手で自分を抱きしめる。すると不覚にもあの人の香りが蘇ってさらに鼓動が激しくなった。
「なんて罪作りなの、敦賀さんってば…っ」
思い返せば、ショーターローのことが好きだったときの私は、いつも心を殺していた。
自分が知らない間に
自分が居ない場所で
あいつが色んな女とイチャイチャしているだろうことは何となく察していたし、何なら学生だったときはその場面を目撃すらしたことがある。
それを一度も問いただしたり責めたりしなかったのは、最終的に私の元に戻ってきてくれると信じていたからだ。
結局、手酷く捨てられたわけだけど。
「・・・っっ・・」
そこまで考え、自分の眉間に深い皺が寄ったことを意識した私は今度は軽めに頭を振った。
すると香って来るのはやっぱり敦賀さんのそれで、自分の口元が柔らかく緩む。
たぶん、抱きしめ刑を受けていたときに頭も撫でられていたから。
冷静を装って分析解を出したところで熱さが冷める気配はなく、とにかく落ち着かなければと手早くお茶を入れた私は、真冬にはこたつに変身する小ぶりなテーブルに向かって勢いよく正座した。
脳裏で平常心、を何度も唱え、とにかく一口を流し込む。
苦みが喉を超えたところで、ほうっとため息を吐いてから、私は変わらぬ部屋の景色を一巡した。
思えばこの部屋にいる時のここが私の定位置だ。
台本を読み込むときもメイクをする時もこの場所だし、数日前に敦賀さんからの電話を受けた時もここにいた。
『違うからね』
思い出せる敦賀さんの声は、ほんの少し焦ったような、きっぱり否定するような響きだった。
どうしてそんなことを?と疑問に思った私のそれが聞こえたかのように続いたのは電話の理由。
『誤解とかしてないかな。万一にも君を不安にさせたくなかったから』
どうやら信じがたいことに本当に、敦賀さんは本気で私のことが好きらしい。
それはあの人からのこんなお願いからも容易に察することが出来た。
『わかった、はっきり言おう。もう少し一緒に居たい。一緒に食べてもらっても?』
もう、どうしてですか、敦賀さん。
そんなのってもう、特別なお付き合いをしているみたいじゃないですか。
付き合ってなんていないのに。
まだ付き合わないでいようとお互いに決めたはずなのに。
だからこそ、こっそり拝顔だけさせていただこうとしていたというのに。
『最上さん。ちょっといけない事して帰ろうか。二人だけの秘密で。大丈夫。もし君の歩調が一瞬でも乱れたと判断したら、俺がお姫様抱っこで降りてあげるから』
速攻、口を割ってしまった。
しかも一部の隙も嘘もなく、ただ本当の気持ちだけを敦賀さんに白状してしまった。
面白おかしく話すなんてとてもじゃないけど出来なくて、意図せず滲んでくる涙が溢れないようにするのに精一杯で、だんだんとビブラートがかってしまう自分の声を抑えることすら出来なかった。
ひと気など全くない非常階段で、意外にも真顔で私の話を聞いてくれていた敦賀さんは、私がすべてを吐露し終えると顔色なんて一切変えずにただ私をギュウっと抱きしめた。
「・・・・っ??!」
戸惑ったのはつかの間のこと。
抱き締められるままに私も敦賀さんに抱き着いた。
なぜならそれが私たちだから。
私と敦賀さんは
互いに想いを通わせ合った好き同士であると同時に
今はまだ付き合わない、という特別なお付き合いをしている間柄なのだ。
だから本当に嬉しかった。
『そうだったんだ。ありがとう、ちゃんと話してくれて。気にしないで突撃しに来てくれていいのに。俺の生存確認なんて、君ならいつだって大歓迎するよ』
ぎゅうぎゅうに抱きしめあった後、エレベーターで階下まで降りて予定通りにだるまやまで敦賀さんに送ってもらってしまった。
繰り返し思い出してしまうと恥ずかしくて居た堪れなくて、それ故さっさと降車しようとしたのに、不意打ちで背後から敦賀さんが私をきゅっと抱きしめてきたりするから!!
私は瀕死の重傷を負ってしまったのです。ほかならぬ心臓に!
敦賀さんとのあれやこれやを思い出すたび鼓動がリズムビートを刻んでゆく。
血液が沸騰し、顔体中真っ赤のまま冷めようにも冷めやらない。
あああ、いけない、どうしよう。また心臓が激しく踊り始めてしまった。
こうなると分かっているのに、それでも思い出してしまうのは、同時に喜びを見出しているからだ。
更け切った夜の部屋
懲りずに宴を繰り返す自分の鼓動を諫めることを諦めた私は、この行為を眠りに落ちるまで繰り返した。
E N D
ACT.301のタイトルになっているトラッパー。正直、意味不明で調べてみたら、(トラパtrapper・罠猟をする人)とあって納得しちゃいました。
そういえばact300で社さんもそんなようなことを言っていたわ、敦賀氏のことを。
原作ではこのあと二人がどうなったのかの表現がないじゃないですか。なんか帰りの車内でモー子さんとのことを「あああっ!」って思い出したようだけれど、肝心なのはその前ですよねっ!?
だって蓮くんの姿を一目見ようとこっそり張り込みしていたキョーコちゃんですよ!その理由を素直に吐露されたら蓮くんなんてきっと右こぶしを振り上げて「ひゃっほー」な心情だったのではとか考えられるじゃないですか!嬉しい時ほど無表情男の体でww絶対に蓮くん、頭の中で浮かれていたはず!!
みたいなことを妄想してちょっくら執筆してみました。ちなみに「抱きしめ刑」は、急に大声で叫んだキョーコちゃんへの甘い罰です(笑)
しかしながら二人のイチャリ具合がこの程度だったのは、私の実力不足です。お粗末っ。
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