い……いちよーです……。
なんか、風邪ひいちゃってさ~……。
ちょっと頭と喉が痛いにょよ。
だから、って訳じゃないけど、ほのぼのパラレルお届けいたします、ね。
■ あなた色 ■
ある春の日。
本当に久しぶりに、新たに大地に芽吹いた新しい命に向かって女神さまがこう言いました。
「 さあ、目覚めなさい、キョーコ。あなたに花を与えます。
ただし、花の色は自分で見つけて来るのよ。色が決まったときにあなた色の花が咲く。期限は一年。その間に色を決めることが出来なければ蕾のまま枯れて二度と咲けなくなってしまいますからね 」
生まれたばかりの新しい花は、女神さまの言葉に従い色を見つける旅に出ました。
最初に向かったのは野原です。
既に咲き誇っていた多くの花々があちこちに咲いています。
色も種類もとても豊富で、そこはまるで色の見本市のようでした。
「 貴方の素敵なピンク色、どうか私に分けて下さい 」
「 嫌ぁよ。これは私だけの色 」
「 明るい黄色がステキですね。私にもその色を分けて? 」
「 ダメだよ、これは僕の色 」
春の花々は競うように咲き乱れ、誰も色を分けてはくれません。
そうしているうちに時は過ぎ、いつの間にか季節は夏に変わっていました。
「 なんて素敵な青色。まるで空の色みたい。私もそんな色になりたいわ 」
「 だーめ!この色はワタシだけの色 」
断られてまた別の花へ。
キョーコは決してめげません。
「 あなたのその瑞々しい赤色を私にも分けて下さい 」
「 無理ヨ。だってあなたには似合わないと思うもの 」
けれど既に花として咲き乱れていた先達たちは決して自分の色をキョーコに分けようとはしてくれませんでした。
やがて夏も過ぎ去り、秋の季節がやってきて、キョーコはたわわに実った沢山の果実たちに話しかけました。
「 ミカンさん。そのオレンジ色を私にもくださいませんか? 」
「 色を分けたら不味くなりそうだからあげられない 」
「 ブドウさん。あなたの素敵な紫色で私を着飾ってくれませんか? 」
「 特別な色だから誰にも分ける気はない 」
そのとき、後ろから声が聞こえたのです。
「 色が欲しいなら俺の色を分けてやろうか? 」
キョーコは喜々として振り向きました。目に飛び込んだのはキウイフルーツ。全身茶色のそれを見てあからさまにキョーコはガッカリ。
中身が美しいエメラルドグリーンであることを知らなかったキョーコは、土と同じ色にはなりたくないと、キウイフルーツの申し出を断ってしまいました。
やがて秋が終わろうとする季節になってから、キョーコは深く後悔します。
あのときやっぱり色を貰っておけばよかった。
寒い冬が来たら虫も花も土の中。誰にも色を分けてもらうことが出来なくなります。
急いでキウイフルーツの元へ戻ったキョーコでしたが、キウイフルーツはキョーコを待っていてはくれませんでした。
どうしよう。もう誰も私に色を分けてくれない。
せっかくこの世に生まれたのに……。
キョーコが悲嘆にくれている間にも季節は着実に冬へと移ろい、寒い空気が漂います。
あれほど美しかった空には鼠色の雲がかかり、そこから冷たい綿がふわり、ふわりと地上に降り立ち始めました。
雪はキョーコの上にも降り積もり、固いつぼみを付けたままだったキョーコの花は雪の重さに耐えられず下を向き、そのままキョーコを隠してしまいそうでした。
余りの寒さと悲しさにキョーコが泣き叫んでいると、雪が優しく囁きました。
「 泣いたらダメだよ。さらに冷たくなって凍えてしまうよ 」
そんなことを言われても、結局、誰からも色を貰えなければキョーコの命は冬一杯まで。
せっかくせっかく、せっかく生まれる事が出来たのに。
キョーコの涙は止まりません。
「 だって、もう時間が無いんです。せっかく生まれる事が出来たのに花を咲かせることが出来ないのだもの 」
「 そうなの?なぜ? 」
「 女神様が、色が決まらないとダメだって。だけど誰も…… 」
自分に色を分けてはくれなかったんです……。
大粒の涙があふれ、キョーコの足元に積もった雪を溶かしてゆきます。
泣きじゃくるキョーコがとても痛々しくて可哀想で、雪はキョーコの頭を撫ぜながら優しく、優しく笑いました。
「 そう。君はどんな色が良かったの?どんな色が素敵だった? 」
「 ……っ… 」
「 君は白をどう思う? 」
「 え? 」
思いがけない質問をされてキョーコは目を見開きました。
――――――― 白?
今まさにシンシンと降り積もっている雪は、世界を白く染めようとしています。
涙目のまま辺りを見回したキョーコは春から秋にかけて出会った様々な色を思い出しました。
赤やピンク、黄色に紫
青やオレンジ、茶色や葉の色
色は沢山あったけれど、そういえば白を見た事は無かった気がする。
無言のまま世界に降り積もる雪は、まるで優しい綿布団のよう。
キョーコは細く笑ってから雪の上に佇む大きな男の人にぺこりと頭を下げました。
「 優しくて、とても素敵な色だと思います。
どうか私をあなた色に染めて下さい 」
「 ……いいよ。俺の色を分けてあげる 」
固いつぼみだったキョーコの花が、白色に染まってから静かにつぼみを開きました。
雪から色を分けてもらったキョーコの花は、その名の通りユキノハナ。
自分に色を分けてくれた雪を恋しがるように、ユキノハナは時折、雪が降るより先に花を咲かせることもありました。
その姿から、一部の人達にはマツユキソウとも呼ばれるように。
冬に花咲く可憐な草の
ちょっぴり優しいお話でした。
E N D
別名スノードロップ。そして年中一緒にいたくなって、二人で寒い国に行く(笑)
子供の頃、たぶん絵本とか童話とかそういうので知ったお話だと思うのですが、忘れられなくてお届けしてみました♡(〃∇〃)
あなた色ってところがツボ。
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