ナイン・エール◇前編 | 有限実践組-skipbeat-

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 いつもありがとう。一葉です(。-人-。)


 本日お届けいたしますのは、先日設置いたしましたリク受付窓口よりご投函頂きましたリクエストです。


 お名前は伏せご希望様でしたので内緒のままにしておきますね。

 お付き合い下さる方も、リクエストご投函者様も、萌え悶絶して下さったら嬉しいです♡少々思いがけない内容だと思うので。



■ ナイン・エール ◇前編 ■





 仕事で日本へ ―――――――…




 この幸運に恵まれたことにわたしが頬を緩めたのは、一週間ほど前。

 自分が主演を務める映画のPRをするため、上映国一覧から自分が行きたい国をピックアップしろと言われて日本をトップに掲げたそれが受理されたときだった。



 ロスの季節は移ろいが薄く、月日の流れをつい惰性で受け止めてしまいがちだが、カレンダーを覗くたびにわたしの脳裏にたった一つの想いが過ぎる。





 ……わたしの子供たちは、いまどんな風に成長しているところだろうか。





 行くことが決まった途端、大きく膨らんでしまった想像。



 会いたい。

 単純にそう思ってしまって


 久しぶりにあの子たちの元気な笑顔を見て、その成長ぶりを直に目の当たりにしたいと思った。



 日本へ行くことが決定事項になってすぐ、わたしはボスに連絡を入れたが、ボスはひどく迷惑そうな声をあげた。



「 はぁ?また最上君を接待につけろ?…だけじゃなく、今度は最初からアイツまで巻き込めというのか。前回で味をしめやがったか、クー 」


「 う…やはり苦しいだろうか。あの子まで…というのは。彼は応じてくれないかな? 」


「 んなこた聞いてみねぇ事には判らん。

 それはそうと、日本に来てまたアイツに会おうとするなんざ、まさか妙な事を考えているんじゃなかろうな? 」


「 それこそとんでもない!わたしはただ子供たちの成長が見たいだけなんだ!それで、出来る事ならプライベートな時間を一晩…と思っただけだ。信じて欲しい!

 ……だって、いいじゃないか、一晩ぐらい。今回は日本に一晩しかいられないんだ。だからせめてあの子と、あの子たちと会話を楽しみたいと思ったわたしのお願いぐらい叶えてくれてもいいじゃないか……。なのにボスはそれさえもわたしに与えないというのか。日本にいたときあれほど頑張ったわたしに対して。それだけを唯一の希望にして日本をトップに掲げたわたしの気持ちを無視してボスはそれすらもわたしに…… 」


「 恩着せがましいイジケ方をするな!!一応判ったけどな、蓮が応じるかどうかなんざ責任持たないからな。最悪、最上君だけになっても文句は言うなよ!! 」


「 ……ああ、言わない。言う訳がない 」




 自分が日本へ行くことをジュリに告げると、彼女はまた自分だけ?…と酷く腹を立てていたが



 必ずお土産を持って戻ってくるからとなだめすかし、ようやく納得してくれた…というより納得せざるを得なかった彼女には申し訳ないと思ったけど。

 わたしの心は否が応でも弾んだ。






 使い慣れたロスの空港は相変わらずの賑わいで、行き交う肌色のまばらさについ笑みが浮かぶ。

 人種のるつぼと呼ぶにふさわしい活気とざわめきの中でわたしは一人佇んだ。




 我慢が利かない…なんて

 わたしはあの子の、あの子たちの父親として失格者だろうか。




 浮かぶ感慨。

 数多の感情がひしめくそれを複雑な思いで受け止める。



 あの子が絶えず努力を重ねているだろうことは聞かずとも判るし

 きっと事あるごとに成果を上げているだろうことも信じている。


 なのにわたしは……




 キャリーの柄を握りしめ、さて行くかと一度止めた歩みを再開したとき、少し遠めの横方向から声がかかった。



「 よーう、クー!これから日本か?おお、相変わらず黒いSP何人も引き連れて… 」


「 おっ、なんだ、そっちは戻って来たのか?…な訳ないか。出発ロビーだな、ここは 」


「 ははは。某番組からの依頼でインタビューをしていた所だったんだ。偶然だな 」


「 嘘だろ?お前、役者以外の仕事も引き受けたりするのか? 」


「 当たり前だろ。こういう仕事だって演技の役に立つ日が来るかもしれないだろ。何だって修行だよ 」


「 お前らしい。ある意味貪欲だな 」


「 クーに言われたくないね。ところで、これから日本なんだろ?古巣だからって根を張って戻って来ないとか、よしてくれよ? 」


「 ははは。その心配はご無用だ。わたしはまだハリウッドでやりたいことが山ほどある 」


「 それを聞いて一安心。じゃ、気を付けて行って来いよ! 」


「 Thanks! 」


「 ミスター、こちらの搭乗口よりどうぞ 」


「 ああ、ありがとう 」




 さっぱりと笑顔で手を振り、導かれるまま歩みを進めたわたしは搭乗口までの通路を黙って歩いた。



 他人が作り上げた道を歩くことに抵抗はないが


 自分の人生のレールだけは、自分自身で敷くべきだとわたしは思う。

 そしてあの子はいま、そうしているのだ。






 ――――――― 久遠。愛しい息子よ




 お前が自分で決めて歩き出した道を邪魔するつもりなんて全くないよ。

 ただ、わたしは……





 搭乗直前、わたしは携帯電話を取り出し、座席に座ると同時に画面を見つめた。



 詳細が決まったらメールで知らせてくれと言ったボスの指示に従い、搭乗時間と到着予定時刻を知らせたそれの返信は見事なほど簡素な4文字。





『 概ね良好 』





「 ……概ね、か。それもまた彼らしい 」




 口元に微笑が浮かび、一抹の寂しさを覚えた。

 だがそれがあの子が決めたことならばわたしは従うしかないのだ。



 親として我慢を受け入れること。

 自分に出来るたった一つのそれは、同時に自分にしか出来ない唯一の事でもあるのだから。




「 ……キョーコに会えるだけでも充分だ。もしかしたら彼の話を聞くことが出来るかもしれないじゃないか 」




 かつてわたしの息子を演じ、彼の心のままをわたしに教えてくれたキョーコ。

 あの子もまたわたしの子供に違いない。



 そして彼女もまた、きっと彼と同じように切磋琢磨していることだろう。




「 どんな話が聞けるかな…… 」




 静かに揺れ始めた機体の動向を感じ、震えるほどの期待感を胸に、わたしは日本へと旅立った。







 ⇒中編へ続く


旅立ちました、クーパパ♡

こういうリクエストを頂けるとはまさか想像もしていませんでしたので、拝見した時とっても新鮮な気持ちでした。


次もぜひお付き合い頂けたら嬉しいです (〃∇〃)

ただし!これから書くのですけど(笑)



⇒ナイン・エール◇前編・拍手

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