鵬王の飛昇 ◇1 | 有限実践組-skipbeat-

有限実践組-skipbeat-

こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


※出版社様、著作者様とは一切関係がありません。
※無断での転載、二次加工、二次利用は拒断致します。
※二次創作に嫌悪感がある方はご遠慮ください。

 …ども。一葉です。( ̄▽+ ̄*)


 続かないと言ったお話の続きを思いついちゃった時ほど気まずいものはありません(笑)

 そして今回はかなり思い入れが強く、どうしても完結まで書き切ってからお話をUPしたくて四苦八苦しましたが、無事たどり着くことが出来て本当に嬉しいです。

 ※推敲の関係で連日アップにはなりません。


 マリモ様のお話から続きを書かせて頂いております異世界パラレル蓮キョ。最新作をお届けです。

 お楽しみ頂けましたら幸いです。



 前のお話はこちらです↓

◇ 已むに已まれぬ魔王事情 ◇ マリモ様作

◇ 最弱魔王と最強剣士 【 前編 ・中編 ・後編 】

◇ me please

◇ 最弱魔王と最強剣士~半年後~【 前編 ・中編 ・後編 】



最弱魔王と最強剣士シリーズ

■ 鵬王の飛昇 ◇1 ■






 微弱な魔力しか持たない華奢で可憐なキョーコが魔界の玉座に就いてから2年という時が流れた。


 相変わらず魔王は日々、努力を重ねていて

 そんな彼女を優しく厳しく導きつつ、二人の側近もまた己の能力を活かす形で日々、魔界に貢献していた。



 魔王就任とともに落ち着きを払った魔界の気候は、時が経つにつれてらしさを増し、最近では四季の流れと思しき気温の抑揚すら感じ取れるようになっている。



 サンサンと照りつける太陽の明るさをふんだんに取り込んだ朝の魔王城内の、3人で利用するには無駄に広い…と他から突っ込まれそうなほど豪奢な食堂に3人は集った。



「 ヤシロさん、おはようございます。今日もいいお天気ですね♪ 」



 レンとキョーコが揃って食堂に姿を現すのは既に暗黙の了解で、二人より先にヤシロが指定席についているのも当たり前となっていた。


 いつものようにキョーコが淹れてくれたカフェオレに口を付けたヤシロはそれから柔らかく目を細めた。



「 キョーコちゃんは晴れの日でも雨の日でも風が強い日でもそう言うじゃないか 」


「 えー?だって本当ですもん!太陽が出ている日はそれだけで元気になれちゃいますし、雨が降っている日は大地が潤う大切な日です。

 風が強い日は植物の種が遠くまで飛べる絶好の日な訳で…。つまり、それぞれがそれぞれに良いお天気なんです。

 …ヤシロさん、私が言ってること、どこか間違ってますか? 」


「 いえ。どこも間違っていないですよ、魔王キョーコ。

 総てあなたのおっしゃる通りです 」



 そう言ってヤシロは小さく低頭した。


 生まれながらに持ち得た魔力が貧弱だったせいで、彼女が相当困窮な生活を送っていただろうことは想像に易く、またその事実はキョーコからも聞き及んでいた。

 しかし反して彼女が持ち得る知識量の多さにヤシロは度肝を抜かれた。



 前魔王の影響がいまだ残余する魔界の状況は相変わらず厳しく、中でも食料は不足している。


 だがそれもヤシロが宣言した通り。

 魔王の力を得た植物の種は、昨年の秋…と呼ぶにふさわしい時期に少ないながらも初めての実りをもたらした。


 あと数年もすれば安定供給が可能になるだろう。



 ある意味強硬手段だったと言わざるを得なかった初勅での出来事から一年余り。

 こうも早くにここまで漕ぎ着けることが出来たのは、キョーコの努力はもちろんだが、彼女が持つ理解力の高さと恐ろしいまでの知識量があればこそだと言えた。



 魔界には良い風が吹いている。

 キョーコが魔王となった時は明らかに感じていた魔界人たちの反発心もいまはどこ吹く風。


 状況は極めて順風満帆だった。



「 それからするとキョーコが見ている世界はいつも幸せなんだな 」


「 ……むぅ。おかしいですか?レンさん 」


「 全然。それで君が笑顔になれるなら俺はそれだけで満足だよ。

 だけどキョーコ、知ってた?俺は、君が俺のそばに居てくれるだけで人生バラ色だって 」


「 ……くっ!!……っ…レンさん、まるでその道を極めたスケコマシみたい 」


「 確かに。お前、いつの間にそんな技を… 」


「 体得してません!…ヤシロさん、なに失礼なことを当たり前のように口走ってるんですか。

 キョーコも!俺は本心を言ってるんだ。そんな風に茶化されるなんて心外だよ。これは嘘でも冗談でもないんだから 」


「 うふふ。嘘だなんて思っていないですよ?別に 」




 もちろん、まだまだやらなければならない事はたくさんあった。

 けれどはっきりとした手ごたえはヤシロだけではなく、キョーコも感じていた。


 いや、実際それを一番実感していたのはキョーコだったかもしれない。

 そして、それがキョーコの喜びでもあったのだ。




 脆弱な魔力であっても、使い方次第で出来る事はたくさんあることを知り、己がそれに励むことで人の役に立てることに気付けた。


 努力を惜しまないでいれば、自分が自分のままで出来る事がある。


 そのやり甲斐が等しく彼女の原動力になっていたのだ。




 レンの力を借りて魔王になった、という負い目がどこか影を落としていた。だが自分が魔王となった意味がいつか解る日が来るのかも知れない、と。

 キョーコは元来持ち得る前向き精神とともに明るい未来を展望していた。



 この、瞬間が訪れるまでは―――――――― ……







「「「 ……え? 」」」



 刹那、まるで巨大な何かが過重量な大木を持ち上げ、フルスイングで床から自分たちを叩き上げたかのような強引で強烈な物理的衝撃を感じた。


 激しい突き上げが3人の全身を揺らし、今までに経験したことのない撞着感に思わず彼らは眉をしかめた。



「 なんだ? 」


「 一体、これは…? 」


「 やっ!なにこれぇ?!? 」



 足元からの攻撃は一度ではなく

 それは間を置かずに何度も何度も繰り返された。


 いまこれが大地の寝返りだと教えられたら、それを容易に信じてしまいそうなほどの撃壌。


 揺れの激しさにキョーコはイスの背もたれにしがみついた。



「 いやあああぁぁぁぁぁぁ……!!! 」


「 ……っ…すごい揺れだ 」



 振動はとてつもなく激しく、イスに座っていた3人をそこから容易に放り出した。

 魔界の中で最も堅牢な造りを誇っているはずの魔王城が大きく身震いしている。



 軋み音が絶え間なく鳴り響き

 イスから投げ出されて床に伏せたというのに安定感は一つも得られない。


 突き上げる激震は容赦なく続き、定まらない視界のブレで世界が大きく揺れ動いているのが分かった。


 不意に揺れは方向を変えた。


 縦に動いていた世界が一気に横に振れ始め、3人はかつて経験したことのない暴虐な横揺れを体験した。




「 きゃああぁぁぁぁぁぁぁぁ…っっ!!! 」


「 キョーコ!!! 」



 いともたやすく乱れ動くすべて。


 先ほどまで穏やかに笑みを交わしていたのが嘘のような悪夢。



 支度されていたテーブルの食器はことごとく床に呼ばれ、オーケストラのシンバル奏者が狂った演奏を始めたかのような破砕音が一斉に鳴り響く。


 床に置かれたすべての物はおもちゃの車のようにそこを這いずり、それはイスから投げ出されその場に伏した3人でさえも例外ではなかった。



「 やだぁっ!!なにこれ、どうして?! 」


「 何でなんだっ?!誰の力も感じないのに!!ヤシロさん、これは一体なんですかっ!? 」


「 お……俺だって判らないよ! 」




 揺れは一向に静まる気配を見せなかった。



 誰かが魔力で意図的に城を揺らしている訳ではない事。それだけはキョーコにも理解できた。


 そもそもそこまで強大な魔力を持つと言われている二人はいま自分の目の前にいるのだ。

 そして彼らも自分と同じように床に身を伏せている。



 激しく揺れ続ける城の中。

 どれほどの魔力を持ち得ようとやはりレンもヤシロも立つことすら許されず、成す術もないまま揺れに身を任せていた。


 だがキョーコは少しでも現状を把握したい一心で、強引に腕に力を込めた。

 魔力に頼らない生き方をしてきた彼女にしてみれば、それは朝飯前の行動だったのかもしれない。



「 外っ!外はいま…… 」



 懸命に床を這い、窓を目指す。



「 キョーコ!!危ないから動いちゃダメだ!食器の破片があちこちに散らばっている! 」


「 窓辺も危ないよ、キョーコちゃん!この振動がどこまで続くか分からない。あまりにも長く続けば魔王城の窓ガラスだって割れちゃうかもしれないんだ! 」


「 そんなことを言っている場合ですか!ここだけ揺れているのか魔界全体が揺れているのか、それを確認しないと!! 」




 言いながら、けれどもう判っていた。

 これは誰かが意図的にやっている事では決してない。


 なぜなら、こんなにも長い時間、城を揺らせるほどの魔力を持った魔界人など一人も居やしないのだから。



 殻を破ったばかりのヒヨコよりも頼りなく、キョーコは窓を目指した。

 まるで彼女をからかうように揺れは面白おかしく乱れ、魔王の動きを翻弄する。


 いつもだったら数秒とかからないはずなのに、この距離がもどかしいほど遠く感じた。

 そうしてようやくたどり着いた窓辺から魔界を一望したキョーコは、その変わり果てた自国の様子に激しく胸を軋ませた。



「 いやだあぁぁぁぁぁぁぁぁ……!!! 」



 揺れはますます酷烈化していた。


 まるで、太古の昔に眠りについたと言われている伝説の恐竜が、地下の深い場所から目覚めたかのような乱動。


 まさしく大地は吼えていた。

 土埃を容赦なく吐き出し、魔界を一掃するように揺れ続ける地面は残酷な咆哮を上げ、軋み音が魔界を掌握していた。


 キョーコは窓枠に張り付きながらその場でガックリと腰を落とし、なんとか後ろを振り返った。



「 どうして!?どうして!??ヤシロさん、レンさん!魔界はメチャクチャです!

 やっと…やっと安定して来たと思っていたのにっ!!! 」



 そのとき最強剣士は

 叫びと同時に溢れ出た最愛の魔王の涙でさえ、拭ってやることが出来なかった。



「 ……っ……キョーコ…… 」






 のちに、最弱魔王の名を後世にまで残すことになる未曽有の大災害が




 ここに発生した。








 ⇒ 鵬王の飛昇◇2 に続く


このお話を思いついたきっかけは2016年春に発生した九州地方の地震でした。


様々なことを鑑み、そのときは書くこと自体を断念したのです。

個人個人で思う事はあるかと思いますが、温かく見守って頂けたら有難いです。



⇒鵬王の飛昇◇1・拍手

Please do not redistribute without my permission.無断転載禁止


◇有限実践組・主要リンク◇


⇒有限実践組・総目次案内   

⇒有限実践組アメンバー申請要項