いつもありがとうございます。一葉っす。(`・ω・´)きりっ★
本日のお話は先日UP致しました複合体温でトップ賞を獲ったお嬢様から頂きましたリクエストです。キョコsideをお送りいたします。
遅くなってごめんなさい~。でも一葉的には俊足対応なのですよ~…。
ちなみにアレと同じ話とは思えないぐらい爽やかに仕上げてみました。少しでもお楽しみ頂けましたら幸いです。
■ メルヘン・レイン ■
好きな人と二人きりならどんな世界もバラ色に見える。
突然降り出した激しい雨は
そんなことを考えていた私と、想い人である敦賀さんの距離を一気に縮めてくれた。
「 ……はっ……つ、るがさ……ふぁ… 」
「 ん? 」
前触れもなく、急に盛り上がった雨雲が雨粒をばらまき始めたのは瞬く間。
驚いて顔を見合わせた私たちは、取り敢えず狭まった木立が並ぶ公園の一角に逃げ込んだ。
降り出した雨の冷たさに寒さを覚えて、何度も私が身震いをするうち、敦賀さんが大木の洞を見つけてくれて。
加えて風雨から私を守ろうと、敦賀さんは当たり前のように私の前に立ちはだかった。
「 あの…も、そのぐらいでもう… 」
「 やだよ。そのお願いは聞けない 」
「 でも…… 」
「 譲れない。したいんだ、俺が。ごめんね? 」
「 ……いえ… 」
「 ……最上さん。ツライ? 」
ツライ…というより切なかった。
自分的には可愛いと思って着て来た一張羅のワンピースはびしょ濡れで、同じように敦賀さんも全身が濡れているのに、紳士然とした姿勢を崩さない敦賀さんの額から流れ落ちる雨粒はまるで汗のような輝きを放っていた。
もう、ずるい。
どうして敦賀さんだけ。
濡れてなお美麗さを維持し続ける想い人に、私の恋心は歓喜に震えていた。
同時にみすぼらしく濡れそぼった自分を過剰なほど恥じていた。
本当にあなたはズルい人。
そんな姿になっていてもあなたの魅力は翳りもしない。
「 私は、平気ですけど。でも、敦賀さんが… 」
「 俺?俺はぜんぜん平気だよ。男の方が体力だってあるしね 」
「 そりゃ、敦賀さんと私を比べちゃったらそうでしょうけど 」
濡れた衣服の向こう側にある鍛え上げられた筋肉。
敦賀さんを男の人だと強く意識できるそれが、いま確かに私の目の前に存在していて、雨に濡れた敦賀さんは騎士の様に凛々しくて
視界がけぶるほどの雨の中、私の心臓はあり得ないほどバクバクしていた。
「 なに?俺以外に誰と比べようって云うの?君、ときどき酷く辛辣だよな 」
「 そんな…。そんなつもりは 」
「 いいよ。今は赦してあげる。君いまこんなに濡れているもんな…。服を着ていてもはっきりと判るよ 」
「 ……は………ぁふっ…… 」
一張羅のワンピース。
薄着でいた分、体温は容赦なく奪われて、私は何度もくしゃみが出そうになっていた。
そのたびに両手で口を覆ったけれど
それはなかなか素直に出てくれなくて…
でも、出て欲しくないとも思っていたの。
だって私の前には敦賀さんがいて
この人の前でこれ以上みっともない姿を晒したくはなかったから。
「 無理しなくていいよ。ほら、そのままで。それだけでいいから 」
「 ……っ……は、い…。……っ…くっ……んっ、敦賀さん…… 」
「 うん? 」
大地を叩きつける雨脚が一層激しく聞こえ始めた。
視界を奪うかのように世界はまた徐々に見通しを狭めている。
変わらず私を雨からかばい続ける敦賀さんを見上げて
この人の体温まで雨に奪われるのは嫌だと思った。
「 もう、お願いですから。……もう… 」
「 もう…なに? 」
「 い……意地悪な目で私を見ないで下さい。それに… 」
きっと、私の気持ちなんてお見通しなんだわ。
見通していながらわざとこう言ってるのよ、この人は。
もしあなたが風邪を引いたら、それは100%私の責任。
だけどたとえそうなったとしても、敦賀さんはそうじゃないって、そう言うつもりなんでしょう?
紳士然としたいつもの声で、私を腰砕けにするあの優しい笑顔を浮かべながら…。
「 …こんな格好でいつまでもここにいる訳にはいかないでしょう? 」
「 そう…だね。君、こんなにぐっしょりに乱れちゃっているもんな 」
「 もう!敦賀さんったら、わかり切っていることをわざわざ口にしないで下さい 」
そうよ。言われなくても判ってる。
どんなに可愛いカッコをしたところで、ボロなんてすぐに出ちゃうの。
雨に濡れて、それすら演出のように見せてしまうあなたと、こんなにぐしゃぐしゃに濡れそぼってしまったみっともない私とじゃレベルが違い過ぎるのよ。それをいま嫌というほど思い知らされてる。
「 恥ずかしがることないだろ。本当のことなんだから 」
「 ……やっ、ダメ!! 」
そんな私に自然の猛威は手を緩めることをしなかった。
雨は更にけたたましさを増して降り出し
公園へと視線を戻せばアスファルトの上には水が溜まり始めている。
近年、ゲリラ豪雨による被害が拡大していた。
いま私たちが避難をしている木立は土が盛られた場所だけど
もしこのまま水かさが増えてしまったらどうしたらいいのだろう。
「 もう…やっぱりもうダメです、敦賀さん 」
「 駄目じゃない。君の口からそんな言葉聞きたくないよ、俺は 」
「 だっ…て… 」
「 でも、確かに君の言う通り、このままじゃマズいよな? 」
こうなると大木の幹から伸びた枝葉など傘の代わりにすらななかった。
たわわに茂る葉の隙間から幾つもの雨粒が滑り落ち、それが私達の周りで軽快な音を立てている。
雨水が幹を伝って地に流れゆく。
それでも、直接雨に打たれるよりはまだ全然マシだった。
「 ……敦賀さん。もっと私の方に…もっと奥に… 」
「 …ん………っくしゅ!! 」
「 ほら!だから言ったんです!どこが体力あるから大丈夫なんですか。もうちょっとこっちに来て下さい。私のことはどうでもいいですから! 」
「 ど……どうでもよくはないだろ!君より俺の方がずっと体力があるのは判り切っていることだし、体の大きさだって君と俺じゃ全然違うだろ。それに、男が女性を守るのは当たり前のことじゃないか 」
「 私のせいでそんなにぐっしょり濡れちゃったアナタに言われたくありません。さっき敦賀さん、自分で仰っていたじゃないですか。私だってすでにこんなにビショ濡れなんですよ?なのにどうして雨よけになろうとするんですか。もういい加減にやめて下さい 」
「 ……さっきから何度もくしゃみを押し殺している君にそれを言われたくはないよ 」
「 ふっ……ぁふぃ…… 」
「 ほら、また押し殺す 」
「 ちがっ…違います!これは押し殺しているんじゃなくて本当に出ないんですぅ!私だって出せるものなら出したいですよ。さっきから全然すっきりしないんですから 」
嘘じゃないわ。
出ないからすっきりしない。これは本当のことだもの。
「 そう。それが本当なら大変だね、最上さん 」
「 信じていませんね?敦賀さんはいいですよね。さっきくしゃみしてらしたし。相当すっきりしたんじゃないですか?
あー、いっそ私と敦賀さんの位置を交換しましょう!そしたら私もくしゃみが出そうな気がしますし 」
「 ダメ。っていうか、俺がその洞に入れるわけないだろ。それに、君にそんなことさせられない。こんな冷たい雨に打たれ続けたら最上さんなんか一発で風邪を引くよ 」
「 え?それって……敦賀さん、もしかして、いま寒いんじゃないですか? 」
「 別に。俺は平気 」
そんなの嘘よ!
寒いって聞いた以上、見過ごすことなんて出来ない。
「 そんな!平気なんて言って、後輩の前だからって我慢したらダメです。無理したり取り繕ったりしないで下さい 」
「 じゃあ、もし俺が寒いって言ったら、君何かしてくれるの? 」
「 やだ!やっぱり寒いんじゃないですか。じゃあ私、濡れちゃってますけどくっつきます!! 」
「 え? 」
「 もうこのまま抱きついちゃってもいいですか?いいですよね?あ、でも。やっぱり余計に寒くなっちゃうかしら? 」
「 このまま? 」
「 その前に敦賀さん、もっと私の方に近寄って下さい! 」
我ながら大胆な発言だとは思ったわ。
だけどこうも思ったの。
肌に吸い付くほど濡れてしまったワンピース。
もしかしたらこの貧相な体の線が敦賀さんに見えてしまっているかも知れないって。
いえ、少なくともこの時点で足の線は見えちゃっているに違いないの。
だって太腿にぴっちり裾がくっついちゃっているのだもの。
「 や…ちょっと待って!俺は濡れているのは気にしないけど、でも君は嫌だろう?俺、こんなにぐっしょり濡れちゃってるし… 」
いいえっ!!
どっちかって云うと私はくっついていたいんです。
だって敦賀さんに抱きついてしまえば
少なくとも見えちゃっているかも知れない…なんて余計なことを考えなくて済むもの。
「 それは私だって同じです。それに、敦賀さんがいまそうなっているのは私のせいですよ?なのに私がそれを気にするなんておかしいです。私は平気です。少しでも敦賀さんのお役に立てる事なら喜んでします 」
敦賀さんが悩んだ時間はほんの数秒。
すう…っと表情を失くした敦賀さんは、あっという間に私のことを吸い寄せた。
「 じゃあ、役に立って? 」
「 はい、お邪魔します……ぅきゃうっ?! 」
抱きしめられた途端、雨の音なんて掻き消えて
ゼロにまで縮んだ距離が私の視界をバラ色に変えた。
「 …最上さん。雨足はちっとも軽くならないし、だから嫌かもしれないけど、もう少しで迎えが来るはずだからそれまでこのままここにいよう?……いい? 」
「 はい。私は大丈夫ですよ。もちろん 」
優しく耳に触るあなたの囁き……
好きな人と二人きりだなんて、なんて素敵な時間の共有。
いっそのこと
迎えなんて来なくていいのに………
気まぐれな雨脚は少しずつ、少しずつ弱くなり始め、耳に弾む雨音は徐々に勢いを落としていた。
「 ……敦賀さん? 」
「 うん?」
「 雨…上がったら、虹が見えたらいいですね 」
ふいに訪れたハプニングはゲリラ豪雨に似た大雨。
だけどこんなにも堂々と敦賀さんに近づくことが許されるのなら、こんな悪天候も悪くはない。
「 …――――――― いいね。俺も見たい 」
木立に囲まれた自然豊かな公園の一角で
私たちはお互いにずぶ濡れのまま、迎えが来るまでの長くて短い時間、お互いの体温を分け合っていた。
やがて輝く世界を見下ろしたのは、大きくかかった美しい虹。
E N D
…うん。気付いた方は多いのではないかと思うのですけど、実は某エピソードがごそっと抜けてしまいました(笑)
そう。キョコちゃんがはちみつレモンを溢す下りが入らなかったのです。
悩む隙も無くメルヘン世界を直したくはなかったので、これはこれとして寛大に受け止めて頂けたら有難いです。
お付き合い頂きましてありがとうございました♡(〃∇〃)
■ おまけ ■※前回のおまけで書いたエピソードのキョコちゃんsideの片鱗です。どうしてキョコちゃんがソレをしたのかその理由を思いついていたので上と続いてないのですが敢えて書かせていただきます。
この出来事がたとえば騎士とお姫様の立場だったら、守ってもらったお礼に騎士に贈るのは当然、お姫様からのキス。
だけど自分から敦賀さんにそんなことをする勇気はないから、もしそういう立場だったら出来たのになぁって頭の中で想像していた。
だって、素敵じゃない?
メルヘンチックな雨の出来事。そういうのも素敵でしょう?
……で。
「 ……最上さん。本当に悪いと思ってる? 」
「 も、もちろんです!!ああ、でもどうしよう。雨が酷いから手を洗える場所まで移動するのはムリだし… 」
「 うん、そうだね 」
「 あ、そだ。敦賀さん、私の服で手を拭いちゃってください。ちょうど雨に濡れていますから綺麗に拭えると思いますから!はい!この裾の部分でどうぞ!! 」
「 は?いいよ、そんなこと。する訳ないだろう 」
「 でも、気持ち悪いでしょう? 」
「 かなりね。だから、本当に悪いと思っているなら君がこれを舐め取って? 」
その瞬間、さすがに動きを止めてしまったけど、でも私の思考は活発だった。
…舐め取る?
舐め取るっていうのは、キスとは違う行為よね?
え?そんなことしていいの?
いえ、でも待って!これって私にとっては千載一遇のチャンスではないかしら?
だって、敦賀さんがしてくれって言ってるのよ?
キスじゃないけど
いっそこれをキスとして考えればいいのよ、キョーコ!
「 わ…判りました 」
「 は? 」
「 敦賀大先輩のお手を汚したドリンクは奇しくも最上キョーコ特製です。大丈夫です。心配しないで下さい。すぐ綺麗にしますから。……では、失礼します!! 」
口に含んだ敦賀さんの右手は、当たり前だけどはちみつドリンクの味がしました。 ←(笑)
END…これって本当にメルヘンだろうか(笑)
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