SS 星に願えば | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは蓮キョ中心、スキビの二次創作ブログです。


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 一葉です。我ながらすごいっ∑( ̄□ ̄;) 何とか間に合いました!

 さて、本日の七夕SS、いつもの様に長いです。



 そしてさらに厳重注意。

 心臓が弱い方もそうでない方も、一葉が綴る拙い文章であっても無理だと思ったときは、潔く読み進めるのをやめて下さいね。

 まぁ、そうなることはまずないでしょうけど。



 ……はぁ?どんな話だよ…と思われるでしょうが、ネタバレなし原作沿い両片想い蓮キョです。

 おや、これでは説明になっていませんね。……うふふ♡




■ 星に願えば ■






 日本の夏と云えば怪奇特集…というのはすでに定番となっている。

 だからこのお仕事の話を椹さんから聞いたとき、私は少しも驚いたりしなかった。



 ロケ現場は夜の森。

 言いにくそうにそう伝えてくれた椹さんにニッコリと笑顔を返したのも、心の底から余裕だわ…と思えたから。



 だって私は子供の頃からコーンの森に馴染んでいたし

 過去の自分の行いを紐解けば、真夜中の雨の中、泣きながらコーンを捜してさ迷い歩いたこともある。



 あれから10年の時が過ぎ、私は17歳に成長した。

 子供の頃に怖いと思わなかったのだ。不安なんて微塵もなかった。



「 …だが、出演するか? 」


「 はい。大丈夫です!お受けします 」



 もちろん、出演を一瞬で快諾したのはそれだけが理由じゃない。


 以前、先生が言っていた。

 演技者なら、演技を見てもらわなければ意味がない…と。



 私の最終目標は一流の演技者になることだから、このお仕事をこなしたところで演技力が身に付くはずもないけれど


 いまの自分はまだ売り出し中の新人芸能人な訳で、つまるところ色々な番組に出演することで、京子という私を覚えてもらえるかもしれないそれに大きな意味があると思った。




 私の返事に安堵の溜息をついた椹さんは、よし、それなら…と言いながら表情を和らげた。




「 最上君 」


「 はい 」


「 このロケは7月7日の夜になるそうだから、予定を空けておいてくれ。詳細は追って知らせるから 」


「 ……は…い? 」



 途端に目が点になった。



 信じられない。

 なぜに七夕?


 本来その日は天の川を眺めながら織姫と彦星に願いを託す、素敵な日のはずでしょう!?



「 …ん?どうした?都合悪いか?ちなみに小雨程度なら決行するらしいんだが… 」


「 は……承知いたしました。大丈夫です。出演します 」




 本気で情緒の欠片も無いわね…と脳内で激しくあきれ返りながら、なけなしの演技力を駆使して私は満面に笑顔を浮かべた。







 そしてロケ日当日。

 指定された待ち合わせ場所に出向き、数人のスタッフさんと合流した私は小さなロケバスに乗り合わせ、撮影現場に移動した。



 当然のことながら、太陽はとっくに沈んでいる。



 移動の車中で肝試しルートの説明を受けていた私は本気で余裕だと心の中で人知れず笑っていたけれど、いざ案内されてスタート地点に立ったとき、何かが背筋を駆け上った。


「 ひえっ… 」


 森の入り口より向こう側はぱっくりと闇が口を開けているだけで、目を凝らしたところで何も見えない。



 背筋を這ったそれを振り払おうと、思わず視線を真横にずらして頭を二、三度横に振る。



 そもそも……


 太陽が沈めば辺りが暗くなる現象というのは、地球が誕生してからずーっと続いてきたはずで、それにビクビクする必要はないはずなのよ。


 なのになぜ人は見知らぬ場所に放り出されてしまうと、そこで恐怖を感じるのだろう。




「 京子ちゃん、準備OK?じゃあこのカメラを持って! 」


「 は……はい? 」


「 ロケバスの中でルートは頭に入れてあるよね?暗くて良く見えないかもしれないけど、道だと思われる場所を歩いて行けばちゃんと建物に着くはずだから 」




 ……はずって、ちょっとアバウトすぎませんか?




「 はぁ…。ところでこのカメラはなんのために… 」


「 ん?そりゃもちろん、京子ちゃんが自分で証拠を撮影するためだよ 」


「 ええっ?! 」


「 ええっ?!…じゃないよ。この番組のコンセプト、判っているよね?肝試しだから。

 だから周りに人がいたら全然怖くないだろ?そう考えて森の中には誰もいない。京子ちゃん一人だけ。

 でもそれだと京子ちゃんがちゃんと肝試しをしましたよーって判らないから、それを判定するために京子ちゃんがそれを撮影するんだ。OK? 」




 嘘?うそでしょう?信じられない!!!



 だって私が想像していた肝試しは、定められたルートを沿うように歩いて、要所、要所にオバケトラップなるものがあって、オバケ役の人に驚かされたりとかして、それに応じてビックリ・ビビリ・リアクションを披露すればそれでいいと思っていたのよ?!


 それなら当然カメラはあちこちにセットされているだろうし、少なからず機材を見張るスタッフもそこに絶対常駐するはず。



 そう予想していたのに

 まさか、まさか、まさかよね?



 まさか夜の森に入るのは私一人ってこと……?




「 う…そ… 」


「 ホント。それでもし怖い映像とか撮れたらギャラアップしちゃうから!やりがいあるだろ? 」



 ……って!このひと正気?冗談でしょ?何がやり甲斐よっ!



 それってつまり、番組スタッフさんの他力本願ってことじゃないですか!


 要は恐怖映像は欲しいけど、自分達で撮りに行くのは嫌だからそれを新人タレントにやらせてしまえってことですよね?!


 肝試しが終わったあと、本当にルートを守ったかを確認するとかいう名目で、驚いたりビビったりしている再生映像を見て思いっきり笑うつもりなんでしょう!!?



 それ、すっごい悪趣味ですから!!!

 もちろん口が裂けても言えないですけどっ




「 あ…の…。もし緊急事態があった時はどうすれば… 」


「 あー、そっか。その場合はね、この緊急用の花火を打ち上げてくれる?下の紐を引っ張れば音が鳴って煙が上がる。それを頼りにスタッフが一目散に駆けつけるから。…安全だろ? 」



 安全って、どこがですか!?

 そもそもそれ、信用できるんですか?!


 いま私が聞かなかったらその緊急用の花火を渡すのすら忘れていたんじゃないですかぁ???



 やだぁ、このお仕事ぉぉぉ!!

 私の予想とだいぶ違うぅぅぅぅ……!!




「 ん?あれ?京子ちゃん、もしかして怖いんじゃない?出演はやめておく? 」



 そう言われて私は百面相をピタリとやめた。



 いいえっ!

 最上キョーコ、自分で大丈夫ですと椹さんに言いました!!



 この手の番組は一つの企画に何人もの芸能人が投与されるのはもはや常識。

 その枠の一つを自分から手放すなんてしたくない。


 お仕事として引き受けた以上、尻尾を巻いて逃げるなんてことは絶対、絶対、致しません!



 気張るのよ、キョーコ!

 大丈夫よ。


 だってほら

 良く見たらこの森、コーンの森と似てるじゃないの!





 ……なんて

 無理に自分を納得させて肝試しをスタートさせた私は

 渡されたハンディカメラを相棒に、一人、森の中に踏み入った。




 本当にここがコーンの森だったとしたら、ちっとも怖くなんてないのよ。


 なのにいま、私がこんなにも心細く思うのは

 ここが見知らぬ土地だから。



 だって、誰だって怖いでしょう?

 見知らぬ土地というのは、いわば未知の世界とほぼ同じ。


 この先に何があるのかがまるで判らないから

 その不安が簡単に疑心暗鬼を煽るのよ。




 けれど私は、歩みを止めることは負けることだと必死に自分に言い聞かせ、懸命に前へ進んだ。



 心拍数は激しく高く

 視界に少しでも動くものがあれば、神経が敏感に反応を示す。



「 ひゅっ!!……な…によ、昆虫!?…。もう!驚かさないで!吸い込んだ息が一瞬、止まっちゃったじゃないのっ!



 蒸し暑い、夏の夜のはずなのに

 一人で歩く森の中は、渡る風の温度がやけに低く感じられた。




 天の川どころか月の光さえも遮る深い木々の下で、夜行性の鳥の声が心細く耳に届く。



 森の中は本当に昏く

 けれど事前に下見をされていたと推測できる肝試しのルートには、所々に迷い防止のためだろうと思われる、ペンライトより少しだけ光度の高い人工ライトが設置されていて、どちらかというと私は、その仄かな明かりを求めて森を彷徨っている感じだった。




 誰もいないはずの場所で、唐突に揺れ動く草葉



 風の誘いでがさがさと音を奏でる不穏な枝葉



 明るさを求めて頭上を見上げてみても、木々で覆いつくされた空は真っ暗闇で



 自分が持つカメラのライトめがけて飛んでくる虫の羽音にまでビクビクしている私が居た。





「 …頑張って、耐えるのよ、キョーコ… 」



 口に出すのはカメラが拾えるかどうか程度の、最小出力の自分エール。



 でも怖いと思ったらダメだと思うほど、森の中は本当に怖くて



 人の気配が感じられないことが、こんなにも恐ろしいものだと想像したことすら無かった私は、けれどここでいきなり人の気配を感じたら、それはそれで怖いと思った。





 この肝試しのゴールは、スタート地点に帰ることだった。


 スタッフさんの説明によると、森の中には目的地となる2階建ての掘っ立て小屋があって、中に入って撮影できれば一番いいけれど、無理だったらその建物の外周を撮って戻って来ればいいと言われた。



 スタートを切ってから幾つ目かも判らない人工ライトを見つけて、ほんの少し緊張感を緩ませホッと息を吐いた私は、次の瞬間、辺りに響いた野鳥の大袈裟な鳴き声に激しく全身を揺らした。



「 きゃあぁぁぁぁぁ!!!!! 」



 思わず頭を抱えてしゃがみ込み、激しく波打つ鼓動をなだめるように右手を自分の胸に押し当てる。


 半泣きになりながら何度も自分の周りを見回し、私はまた勇気を奮わせて立ち上がった。





 怖い…!!

 もう、信じられないぐらい怖い!!!!




 恐怖心が脳裏に浮かび上がらせたのは、たった一人の人の姿。



 時折見せてくれる、優しさに溢れたあの笑顔を浮かべた敦賀さんの顔を瞼の裏に思い描いた私は


 怖い…と、敦賀さん…と、二つの言葉を頭の中で繰り返し唱えながら、いつの間にか両手でしっかりと抱きしめていたハンディカメラと共に震えながらまた歩き始めた。




 そこから数分、進んだと思う。

 スタートを切ってからどれ程の時間が過ぎたのか、なんて自分ではもう判らなかったけれど



 深い森が唐突に途切れ、求めていた空が現れ

 見上げた夜空に瞬き流れる天の川を見つけて私は自然と目を細めた。



 次いで視線を前に戻すと、スタッフさんが言っていたのはこれだろう…と推測できる建物のシルエットが、暗い森をバックにどんよりと佇んでいるのが見えて、その輪郭が星の瞬きの力を借り、ぼんやりと視界に映った。





 ―――――――― 無理だと思ったら外観をぐるりと撮って来ればいいよ





 ……申し訳ないけど、本当にそうさせてもらいます。


 夜空を仰ぐために歩みを止めた足に力を込め、固唾を飲んで覚悟を決めた私は潔くまた一歩を踏み固める。


 近づくほどに判る、今にもボロボロに崩れてしまいそうな古い建物。

 カメラを抱え直してファインダーを覗いたとき、建物の入り口に嵌め込まれたすりガラスの向こう側に、白くぼんやりとした影を認めて私はもう一度固唾を飲んだ。



 まるで人影みたいだと……意識した途端に這い上がる恐怖。


 背筋がゾクリと粟立って、進めた歩みを再び止めた。



 ガタガタと震えはじめた肩が、何に怯えているのかはっきりと判る。



 どこにも人の気配などしないのに、カメラを通さず見ている建物の入り口にはやはり何かの影が見えた。


 それは人の形を成した白いもの。

 建物全体を支配しているのは暗闇なのに、そこだけ白く見えるという矛盾した恐怖。



 なまめかしい風が渡って、私の髪を揺らしてゆくと

 どこからともなく私を誘う声が聞こえた。




 こっちにおいで…

 入っておいで……




 そのとき、自分はもう本当にギリギリだったに違いない。

 自分の耳に届いた、やけにあの人を彷彿とさせる低い声音に私は反論を唱えた。




「 嫌よ、絶対入らない!!怖いけどアンタなんて怖くないわ!私はお化けが何人いたって絶対に負けないんだからっ!

 だけど!!だけどねっ!私の好きな人を騙るのはやめてよぉぉ!

 私が大好きな敦賀さんは、こんな風に人を驚かせて楽しむような人じゃないんだからぁぁぁ!!! 」



 経験したことの無かった恐怖心で

 私は少なからずパニックを起こしていたんだと思う。



 虚勢を張ったセリフを口にしていた事も、そのあと続けた言葉が何だったのかも、私はまったく意識していなかった



 駆け足で建物を一周すると、私は立ち止まることもせず文字通りその場から逃げ出した。

 ベソをかきながら一目散に目指したのはスタート地点。なぜなら指示された通り、私はいま確かに外周の撮影を済ませたのだから。



「 最上さん!!危ないからこっちにおいで!! 」



 逃げた自分を追うように、自分の背に投げられたのは変わらず敦賀さんに似た声だった。


 涙を拭って頭を振り、これ以上ないほど思いきり叫ぶ。



「 嫌だって言ってるでしょ!!やめてって言ってるでしょぉぉぉぉ!!! 」




 誰の気配も感じなかった森の中で、いま自分を追いかけて来る誰かの気配を感じる。



 何度も何度も私の名を呼ぶ声が聞こえて来て



「 もう!!いい加減、頭に来た! 」



 恐怖心より怒りの方が勝ったとき

 私は走るのをやめて振り返った。



 真っ暗闇の森の中、滲んだ視界の向こう側に敦賀さんの姿が唐突に浮かんで


 呼吸を弾ませ、自分のことを疑いながら

 私は驚いて眉をひそめる。




「 ……つ…? 」


「 やっと振り向いてくれた。最上さん、おいで。いくらいま歩いて来た道だからって、土地勘も無い暗い森の中を闇雲に走るのは危ないだろ 」


「 つ…るがさ…?ほんもの、ですか? 」


「 本物。本人だよ。ほら、おいで。怖かったね?良く頑張った 」


「 ほ……本当に…?敦賀さん、ほんとうに…? 」


「 本当だよ。最上さん、俺、お化けに見える? 」




 さり気なく私に伸ばされる手の愛おしさに

 囁くように優しく紡がれた言葉に


 怒りよりも会えた嬉しさが数段勝って、滲んだ目から涙がこぼれる。



 それでも恐る恐る近づく私より早く

 私に近づいてきてくれた敦賀さんは、両手を私の頬に添えるとそっと涙を拭ってくれて、私の泣きべそを見下ろしながらもう一度、俺だよって優しい声で囁いた。




「 ほ……本物だぁぁ…!!敦賀さん、聞いてくださいよ!この森、不届き千万ですぅぅぅ!

 つ…敦賀さんは、怒ると確かにお化けより怖いけど、でもお化けみたいに人を驚かせて楽しむような人じゃないのにぃぃぃぃ!!! 」



 自分の両手でぎゅっと抱きしめた敦賀さんの感触は間違いなく本物で


 その体温を感じてやっと私は、いまが夏だったことを思い出した。



「 ……うん、ごめんね? 」




 私を抱きしめてくれる敦賀さんの腕の熱さが

 いま、とても嬉しい。



「 こ……怖かった……。もうこんなお仕事、絶対にイヤだあぁぁぁ…… 」


「 うん。ほんとにゴメン 」



 泣きじゃくりながら許可も得ずに敦賀さんにがっちりとしがみついた私の耳元で、何度もゴメンと敦賀さんが謝る。



 その謝罪の意味を私は考えようともしないで



 ただ今日が七夕で本当に良かった…と



 敦賀さんに縋り付きながら自分の願いを叶えてくれた織姫と彦星に、私は本気で謝意を捧げていた。



 きっとそうよ。

 星に願いを投げたから


 だから敦賀さんは私の前に姿を現してくれたに違いないの。






 敦賀さんが私の前に現れた本当の理由を

 私が正確に知るのはこれより1時間ほど経過した頃だった。



 この撮影の本当の目的が、新人タレントの肝試しではなかったことを私が知るのと、それはほぼ同時だった。









     E N D


ぎゃふん!!キョーコちゃん♡本気で可愛いっっ(〃∇〃)


実はこの続きにあたる蓮君サイドも思いついていたのですが、入力時間が足りなく、いつもの様に欄外で続けることが出来ませんでした。そもそも長すぎて欄外は無理だっただろうけど

なのでネタ晴らししちゃう。このお話はモニ◯リングという番組を拝見していた時に思いつきました。


依頼を受けて驚かし役を始めた蓮くんの最初のターゲットがキョーコちゃんだったことに、一番肝を冷やしたのはきっと蓮くんだったことでしょう。



⇒2016七夕SS・星に願えば・拍手

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※追って続きが出来ました⇒星に願えば~蓮side~


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