こんにちは。一葉梨紗です(^O^)
静かにおしとやかに登場しているのは、つつましやかにした方がいいと思っているからです(笑)
先月末までにアップすると豪語していたドン☆フェスの捧げもの。やっとまとまりましたのでアップいたします。
最低なことに私、主催者のゆみーのんさんに何の連絡もしていないのです…。
不義理すぎる…。最低マナーの烙印を押されても仕方ないのです…。
(わざわざこのブログに確認しに来てくださった事が判って更に恐縮)
それでは!まさかの「蝉ドン」にチャレンジ♪
笑ってほしい、ドン☆フェス捧げもの
■ ゲリラ豪雨・避難訓練 ■
その日は、ただの避難訓練のはずだった。
イベント好きの社長が計画した、半ばゲリラ豪雨よりも激しく唐突な避難訓練が、今月あることは知っていた。
突然来ることも知っていた。
けれど、実際にその状況に身を置くと。
今この状態をどうしたらいいのか。
それだけが判らなかった。
( やっぱり…開かない )
ラブミー部の活動の一環として、本日は地下にある倉庫に身を沈めていたキョーコは、陸の孤島という呼び名がぴったりの状況に困惑を隠せなかった。
たかが避難訓練のはずなのに、煙までも充満してきていることが彼女の冷静さを損なわせていた。
( どうしよう? )
トラックで横付けされて搬入を促す半地下の倉庫は、ファンからの贈り物を一時的におさめる倉庫のようなもの。
3mはある高い天井で、トラックを受け入れる大きなシャッターと、そして唯一取り付けられている搬入出用のエレベーターだけがこの空間の出入り口だったのだが。
シャッターは外から操作しないと開かない仕組みになっていて。
避難訓練のためなのか、エレベーターは機能を損なっていた。
( 30分前にはここに敦賀さんも社さんもいたけど… )
一体どうやって誰に助けを求めたらいいのか。
それさえも判らずにキョーコは困惑する。
様子を見に来てくれた二人はとっくに仕事に出ていて、ここに自分がいることを知る人はどれほどだろうかと思考を巡らせた。
その結果算出された状況に、背筋がうすら寒くなるのを感じた時だった。
ピリピリピリピリ・・・・・・・
ラブミーつなぎのポケットに入れておいた携帯電話が、息を吹き返したかのように存在をあらわし、そうだったと思ったキョーコは急いでそれを取り出した。
表示の人物は…
「 え?敦賀さん? 」
驚きはしたものの、急いで通話ボタンを押すと、堰を切ったように飛び込んだ蓮の声音に心が揺らいだ。
「 最上さん?いまどこにいるの? 」
「 えっと…実はまだ地下の倉庫に… 」
「 判った。待ってて? 」
そう言って、ツーっと聞こえる携帯に向かってキョーコはいま聞こえた蓮の言葉を思わず反復した。
・・・・・・えーっと…?
「 待っていると…何があるというのでしょうか?敦賀さん… 」
そう呟いて、恐らく10秒もなく。
スタン!!と軽快な音が聞こえてキョーコは目を見張った。
「 へ?敦賀さん? 」
「ああ…良かった。大丈夫だった?」
いたく自然に。そして優雅に。
風のように現れた想い人の不自然な登場の仕方に、キョーコは目を点にした。
「 えっと?敦賀、さん?次の仕事場に行かれたんじゃ? 」
「 え?この状況で一番初めに聞くことそれ? 」
小さく笑みを漏らした蓮は、それでもキョーコの質問に真摯に答える。
「 忘れ物を取りに来たんだよ。社さんに感謝だね 」
「 あ、そうなんですか?でも… 」
どこから入ってきたのでしょうかと尋ねると、蓮は軽く目配せをした後、高い天井を指さした。
「 へ? 」
驚いて見上げた天井には、四角い穴が開いていて、形の悪い煙突のようなそれがあることにキョーコは初めて気が付いた。
「 え?何あれ? 」
思わず敬語を忘れて天井を見上げたまま疑問を口にすると、蓮はもう一度小さく笑ってから冷静にキョーコに答えを重ねる。
「 この倉庫、少し前まではごみ置き場だったんだよ 」
あの四角い煙突のようなものはその名残で、昔は各フロアから不要な書類などが段ボールごと放り投げられたのだと続けた。
「 じゃあ、行こうか? 」
差しのべられた手にキョーコは戸惑う。
「 え?あ、でも。エレベーターは動いていないですし、シャッターは外から開けるタイプなので… 」
そこまで言って、あ、そうだ!と続けたキョーコは、手に持っていた携帯に視線を移して連絡をすればいいんでした、とまくし立てると、蓮はにっこりと笑ってキョーコの携帯を取り上げた。
「 大丈夫。出られるよ、ココから 」
なんちゃってダストシュートから現れた人物は、そこから帰ると言い出して、長い指先が間違いなく天井に向けられるのを確認したキョーコは、思わず蓮から3歩下がった。
「 む…無理ですよ、敦賀さん!第一、あそこまで届きませんし! 」
焦って声を荒げるが、蓮は大丈夫だと笑うと手早く段ボールを積み上げてあっという間に階段を作った。
「 ほら、おいで 」
笑顔で差しのべられた手をキョーコが払えるはずもなく。誘われるままに段ボールの階段を登ると、下から見るよりずいぶん大きな四角形のダクトに眉根を寄せた。
おそらくは80㎝四方ほどの縦長の通路は、見上げれば確かに垂直ではなく角度がついていた。
たぶん、落とされるものの衝撃を和らげるための作りなのだろうと思ったが、それでも上階に伸びていることに間違いはなく、身長190㎝の蓮が手や足をつっぱって登ることは出来るかも知れないが、自分がそれをする気力も体力も、キョーコには自信がなかった。
すると。
「 最上さん。俺の首にぶら下がって 」
「 え?ええっ!?嘘ですよね? 」
「そんな嘘ついてどうするの?大丈夫。君一人くらい余裕だから 」
自信ありげに笑う瞳に、そりゃあこの人の身体能力の高さは判っているけど、とキョーコは心の中で呟く。
しかし要求された体勢にいささか問題があるし、もし万が一落っこちて蓮にけがをさせたら、それこそ一大事に他ならない。
キョーコが困惑顔で躊躇っていると、煙がどんどんと充満してきたことに危惧した蓮が、キョーコの細腰を抱き上げた。
「 迷っている時間はないよ。腕を回して? 」
言われるままに両手を首にかけて、蓮の胸にしがみつくように体を寄せると、よしと一声かけた蓮は悠々とダクトを上がっていった。
( ちょっと…。敦賀さん、どれだけ強靭な肉体なんですか… )
曲がりくねったダクトの途中で、少し休もうと言って蓮は腰と脚をダクトの壁につっぱらせて、キョーコを自分の脚に座らせた。
「 重く…ないですか? 」
蓮の首に回した手を外すことも出来ずに、キョーコは俯いた状態でそう聞くと、全然重くないよと聴こえた返事に安堵の笑みを漏らした。
「 それより、怖くない?大丈夫? 」
優しく問いかけながらキョーコの背中を壁に寄りかからせると、少し驚いた声を上げた彼女に笑みを投げかける。
少し蓮から離れたことで気恥ずかしさが先に立ったキョーコは、自身の頬の赤みをごまかすようにクスクスと笑った。
「 こうしていると、敦賀さん、ダクトに張り付いている蝉みたいです 」
「 …セミって、こんな感じじゃない? 」
キョーコの照れ隠しのセリフに悪戯に目を光らせると、蓮は壁に背中を預けたキョーコの顔の両脇に両肘をついて、至近距離でキョーコの眼を覗き込んだ。
( ち…近い近い近い近い!!!詰め寄らないで下さい、敦賀さん!)
懸命にそう心で叫んでも。
本来なら蓮の身体を押し返してくれるはずの自分の両手は蓮の首に絡まったままで、キョーコに抵抗する術はなく、そして心の叫びも声にならない。
キョーコが真っ赤になって目を固く閉じると、蓮がクスリと笑って彼女の髪を柔らかく梳いた。
「 じゃあ、登るよ?掴まって 」
「 つか…捕まって、ます 」
同じセリフで意味の違う言葉をつぶやくと、なぜだか少し緊張がほぐれた気がした。
心も。
体も。
あなたに捕まっているのを自覚している。
こんな時なのに。
不謹慎にももう少しゴールが遠ければいい、なんてキョーコは思った。
一番近いダクトの出口は、LMEビルの3階の一室だった。
ひょっこりと顔を出すと、社が腕組み姿の仁王立ちで待っている姿に、瞬間キョーコはたじろぐ。
「 社さん…? 」
恐る恐る声をかけながらダクトから這い出すと、社はいつもの笑顔でキョーコに大丈夫だった?と言って手を差し伸べたが、遅れて顔を出した蓮の顔を見るなり、怒った時の魔王蓮より凄まじい、吹きすさぶ冷気を醸し出して、呻くように担当俳優の名を呼んだ。
「 るぅぅぅぅええぇぇぇん? 」
ここで蓮がしまったという顔をしたのを、キョーコは自分の気のせいだと言い聞かせた。
優美にダクトから全身を出すと、蓮は何事もなかったようにキュラキュラの笑顔で口を開く。
「 あれ?社さん。心配して来てくださったんですか? 」
「 ぬふふほぉぉぉ~ん?すぉぉぉ~んな事を言っちゃうんだぁぁ~?蓮くんはぁ? 」
二人の押し問答を、キョーコは黙って見ていられず。
「 だから、下で待っていて下さいって言ったのに… 」
「 でも上に来ただろぉ? 」
やり取りの内容に自分が深く関わっていることを申し訳なく思い
「 嫌ですね。ちゃんと10分で下に戻るつもりでしたよ? 」
自分のせいですみませんでした…とキョーコが口を挟もうとした時、社が衝撃の事実を声高に語ったその内容に目を見開いた。
「 お前なっ!下のシャッターの鍵を開けたから、電動では開かないけど手で持ち上げれば出てこられるって言っておいただろ?むざむざ危ない橋を渡るなっ!! 」
「 へ?ええええっ?え?あの、社さん? 」
「 いえ。煙が充満していて開けに行くのは無理でしたよ? 」
ひょうひょうと答えた蓮の隣で。
あまりの驚きにキョーコは感嘆の声を上げたが。
「 ああ、いいよ。キョーコちゃんに非はないんだから 」
「 そうだよ。最上さんは心配しなくていいから… 」
二人のその言葉に、はぁ…と小さく返事を返すにとどめた。
「 とにかく時間だ。お説教は車の中ですることにする 」
瞼を閉じて苦々しくそう口にして社が踵を返して歩き出したのを眺めたキョーコは、それから蓮の方に向き直り、あの…と小さく呟いた。
クスリと笑った蓮は、取り上げたキョーコの携帯電話を彼女に渡しながら、ゆっくりとキョーコの耳元に口を寄せた。
「 たまには避難訓練も悪くないね? 」
じゃあねと言って離れていく妖艶な笑みをたたえた夜の帝王の顔は、悪戯っぽく口元を緩めて何事もなかったように手を振って去って行った。
「 もう!何なのぉ~? 」
混乱したままの状態のキョーコは、真っ赤な顔でそう訴えることしか出来なかった。
後日。
焚かれたスモークはシャッターの向こう側で消火訓練をしていたためだと判明。
キョーコが混乱を極めていた頃、一般的には避難訓練は無事に完了しており、中には仕事の都合で訓練に参加しない者もいたため、キョーコが居ないことを気に留める人が居なかったことは事実で、蓮の救助でキョーコが助かったことに一応変わりはなかった。
しかし。
社長が計画したゲリラ豪雨並みの唐突な避難訓練でキョーコが得たものは
避難に対する心得でもなければ、その重要性でもなく。
疑問と、熱い想いと、少しの幸福と、蓮の温もりだった。
E N D
なんちゃって(*^▽^*) てへ…。
え?蝉ドンじゃない?肘壁ドン?
うん。そうかもしれないですよね。でもいいんです。
捧げものになっていれば、もう何でも(笑)
約束を守れずにお待たせしてしまって、本当に申し訳ありませんでした(^_^;)
笑っていただけたら幸いです~♪
Please do not redistribute without my permission.無断転載禁止
◇有限実践組・主要リンク◇