ACT205の未来妄想 ■14 | 有限実践組-skipbeat-

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こちらは10/19発売の雑誌に掲載されました、スキビACT205の未来妄想小説になります。

内容には、妄想とネタばれが大量に含まれております事をご承知の上、自己責任でお読みください。


よろしくお願いします( ̄▽ ̄)=3



こちらは続き物です。前のお話はこちらから

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ACT205未来妄想 ■side 蓮 ■Scene14 『 慈愛の雨 』





 全身にシャワーを浴びながら、落ち着きを取り戻しつつあった頭の中で、彼女の事を考えた。

 自分の胸を激しく叩き、罵倒するなけなしの良心の声が、痛いほどの現実を俺自身に突き付けていた。


( バカだ…俺は… )


 振り返る直近の過去。

 彼女の首の後ろについた、消え入りそうなほど頼りないキスマーク。あれを見つけた瞬間に簡単に己を見失った自分を思い出して、反吐が出そうだと思った。


 そして交わる白色の記憶。

 汚れた恋情が吐き出した欲望で、彼女の心臓に口づけた瞬間。魔法のように闇から解放された自分を思い出して、情けなさが積もり積もる。



 愛しいと ――――― 。



 彼女の事を愛しいと想う、この想いの深さに変わりはないはずなのに。

 彼女を想う気持ちを軸に、自分の心が振り子のように激しく行き来をする苦しさすら、自分は知らなかったのだと今更ながら思う。




『 蓮、恋愛ってのはな 本気になればなる程

 余裕が無くなるんだ

 格好悪く 取り乱すわ

 なりふり構わず ジタバタもがくわ… 』




( 本当…かっこ悪いよな… )



 自分が、彼女に何をしたのか…。それを思い返すと背筋が凍りそうだった。

 熱いシャワーを浴びているはずなのに、浴びれば浴びるほど冷静さを取り戻して全身が冷えていくのを感じた。


 自分の脳裏に、浮かぶ危惧は一つだけ。



( 赦して…くれるだろうか…? )



 目的を達するために

 自分に激しい言い訳をして


 あの子の気持ちを

 思いを

 あの子の心を置き去りにした自分の事を ――――― 。



 彼女は――――― 果たして赦してくれるだろうか?



 それを考えると激しく胸が軋みを上げた。

 想像を絶する冷たい現実が、目前に控えているようにすら思えた。



 …名を呼んだ。


 彼女は確かに俺の名を口にした。


 嫌だと泣き叫んだ、頼りなげに震えた唇が

 胸いっぱいに空気をため込んだ後で、暗闇を切り裂くように俺の名を叫んだあの時。



 …――――― あの衝撃。



 瞬間、味わった自分のすべてを貫いたあの甘い感激は。

 けれど、そんな優しいものではなかったのではないかと、すぐに思い至った。


( もしかしたら、俺を覚醒させるための… )


 彼女の、なけなしの勇気だったのかもしれない、と。




( 何度も…あの子の前で自分を失ってきたから… )


 久遠に翻弄されて、何度も自分を見失って。

 その度ごとに自分を引き上げてくれた彼女は、まさしく強力なお守りだった。



 怯えた唇が今更ながら脳裏に蘇る。

 恐怖に涙を落とし、無感動に頬を伝ったそれは、彼女の心そのものだったのではないかと、今更ながらに思う俺は…。



( どれだけ薄汚れた人間なんだ ――― )



 彼女を守りたいと思いながら、その中で最低な方法を容易に選択した自分が、やはり一番誰よりも信用できないと、怯える良心が俺の罪を苛む。



( あの子を、守りたいと…そう思っていたはずなのに )



 シャワーの向こうで、泣きじゃくる声が聞こえる。

 しゃくりあげて、どうしたらいいのかすら判らないみたいに、彼女は涙を流し続けていた。



( あの子にだけは、嫌われたくないと、そう思っていたのに… )



 手短にシャワーを浴びて、カインの身体についたタバコの匂いを落として。

 こんなことで騙されてくれるはずは無いと思いつつも、これ以外の方法は思いつかなかった。



( 謝ることも、出来ないな… )



 カインの仮面を脱ぎ捨てて、謝罪の言葉を口にのせれば、あの行為がカインのものでは無かったと肯定することになってしまう。


 どこまでも卑劣な自分を、彼女は許してくれないかもしれないけれど。



 バスルームの扉を開けると、漏れる嗚咽がかすれているのが聞こえた。

 無理もない。ずっと彼女は泣き通しなのだから。



 冷蔵庫から水を取り出して、彼女のもとへと足を進める。

 涙を流したままの彼女の肩は、未だに怯えて震えていた。



 …本当は、怖くて仕方がなかった。

 彼女の瞳に映る色が。



 呼びかけて、顔を上げて、そうして覗き見た彼女の瞳に、軽蔑の光を伴っているだろう視線を浴びるのが怖かった。


 それでも、自分のせいで涙を流している彼女を放ってはおけなくて。



 当の昔に闇に堕ちた自分の、罪深さを呪うのと同じで。

 穢れのない彼女に触れた罰を、背負う覚悟を持った。



 震えた肩に手を置くと、彼女の身体がビクリと跳ねて



「 最上さん、顔をあげて?」



 そう口にするのでさえ、自分の心は怯えていたのに。




 弾かれて、俺を見上げた君が ―――― 。

 結んだ唇を静かに緩めて…。




 安堵の笑みをのせて俺の胸に飛び込んできた瞬間、どれほどの嬉しさが込み上げたのか、きっと君には判らない。





 本当に、君は。

 何度俺をすくい上げれば気が済むんだろう?



 細い肩を震わせて、泣きじゃくっている君を見れば、あれがどれほどの恐怖だったのかなんて聞かなくても判る。



「 泣かないで?もう、怖くないから 」



 泣かせたのは俺なのに、と我ながら思うけれど。

 自分の感情に流されて君を傷つける方法で君を守ろうとするなんて、本当に馬鹿な男だった。




「 … つ …るが … さ … っ 」



( ごめんね?俺、本当に…バカだった )




 知っていた。


 そうだ。俺は。

 冷静になって、振り返ってみれば。

 知っている全てのピースを繋ぎ合わせれば。



『 京子さん、買い物の途中に倒れてね。

 大丈夫だって言っていたけど、一応心配だし。

 寝不足による貧血らしいって聞いたけど。

 ああ、兄さんには内緒にって彼女に言われたから

 僕、敦賀君に話しているからね? 』



 誰がこの子を助けたのかも。

 誰がこの子をこのホテルに連れて来たのかも。

 監督は他の事を一切、話さなかったけれど…。




 昼間、自分を見た時の奴の顔を思い出して、今更ながらに腸が煮えくり返りそうだと思った。



 村雨 ―――――――

 絶対にあいつだ。



 この子より先に現場に戻ってきて、監督と言葉を交わして。

 入れ違いに監督が居なくなったあの時。


 俺を見た時の、奴の勝ち誇った顔が。

 あの顔に、意味があるように思えてならないと、俺はきちんと感じていたのに。


 真実を知って、戻ってきた部屋で、倒れていた君を見つけて。

 君を介抱したのも俺だったのに。



 どんなに呼びかけても。

 いくら頬を叩いても。


 抱き上げても、身体に触れても ―――― 。

 身じろぎひとつしなかった君を、俺は知っていたのに。



( なのに、俺は―――― )



 君は、知らなかったんだ…。


 意識を失っていた時にされたことなど

 何も、知らなかったんだ。


 なのに、俺は…



( ごめんね?最上さん…本当にごめん… )



「 最上さん、泣かないで… 」



 謝罪の言葉を口に出来ないことが苦しいのに。

 涙を拭って、俺を見上げる瞳の中に、かすかに甘える色が見えて。


( こんな…こんなに甘い罰もないよな… )



 抱きしめて、抱き上げて。

 ベッドの上で抱きしめあって。



 自分の腕の中で泣きじゃくる姿が、愛しくてたまらなかった。

 バスローブの胸ぐらを掴んで、必死に、振り落とされまいとする姿が可愛くて仕方がなくて。



「 … うっ … ふ … っ … 」



 痛みを訴える喉が、苦しみの声をあげて。



「 少し落ち着いて、水を飲もう?ほら、深呼吸して? 」



 そう言えばきちんと空気を吸い込む君は、けれどしゃくったそれがすぐに治まるようにはどうしても見えなくて。



「 最上さん、お水、飲む気ある? 」



 こくんと首を縦に振るのに



「 自分で飲めそう? 」



 そう聞けば、少しの間をおいて君が顔を横に振るから…。




( 男として、触れることは許されないのに… )




 吐き出した溜息で気持ちを落ち着けて




「 とりあえず、人命救助だと思ってくれる? 」



 そう言って、自分の気持ちを諌めることで精いっぱいだった。



「 飲めた?もう少し飲む? 」



 飲み込んだ水のおかげで、落ち着きを取り戻したみたいだったのに。


 君が、俺からの水をねだるから。



 どれだけ甘い罰を俺に与えようとしているんだって、思わず口元が緩んだ。


 何度も何度も、君の唇に触れて。


 プライベートでの二度目のキスなんて、目じゃない位に。


 それでもこれは、人命救助だからと。

 懸命にそう言い聞かせて、君の言葉を俺は待った。



「 …も、大丈夫です… 」



 大丈夫だと言った先から涙が溢れて。

 頬を伝う宝石の美しさに、自分の罪を見出した。


( どんなに溢れる想いがあっても、免罪符にはならない… )



 怖くない。

 もう大丈夫。

 最上さん、落ち着いて…って。



 呪文のように繰り返すしかない能無しの俺が、彼女を癒せる方法なんてもう持ち合わせがなくて。

 どうしようかと散々悩んで思い浮かんだのは、幼い頃に受けた、寵愛の儀式。




 幼いころ、母にしてもらったように。

 子供の頃、父にしてもらったように。



 俺のせいで涙を流し続ける彼女に。

 泣きじゃくる彼女をあやすように。



 涙ですっかり濡れそぼった彼女の顔に

 たくさんの慈愛のキスを降らせた。



「泣かないで?最上さん…」



 やがてしゃくりあげる音が止まって


 苦しげに喘ぐ声が損なわれて


 泣き通しだった涙が枯れて



 俺の胸に縋り付いついたまま、腕の中で彼女が眠りにつくまで。



 オウムのように繰り返した言葉と、キスの雨を ―――― 。



 彼女を愛しいと思う気持ちを、懸命に押し殺したまま

 ずっと・・・・ずっと降り積もらせた。





 ⇒ACT205未来妄想SCENE15へ


よし!SCENE14終わり。

蓮くん、ちゃんと反省しました(笑)

あと、残り…3話、です

(予想通り伸びたよぉん・笑)


⇒ACT205未来妄想S14・拍手

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