【温故知新】
月刊「愛石」2024年7月号(6月1日発売)。

愛蔵石との縁(えにし)を語る。
第12回/最終回
筑前真黒石(福岡県
銘『秀真』※ほつま
左右27・高13・奥行18 ㌢

 石質は、瀬田川真黒石と同じく、粘板岩が接触変成作用を受けホルンフェルスとなったもので、緻密硬質な石を指で弾くと清音を発します。



 来歴50余年の水石(観賞石)で、私で3代目の所蔵者になります。前蔵者のお2人は、先の大戦で泰緬鉄道敷設のため共に技師として戦地へ派遣され、戦火を経験されましたが幸運にも戦後無事帰国されました。初代の蔵者で福岡県在住だった方が戦後暫くして早逝され、そのご遺族から遺愛の石としてO氏が譲られたとのことでした。


桐・共箱




 そのO氏は私の所属する水石蒐集を趣味とする集の「愛石クラブ」で顧問を務めていただいていた当時の2006年、O氏宅へ水石展示会終了後にご出品された石と道具類を返却に伺った折、氏の戦中・戦後の思い出話しを混え水石談義でつい長居しているうちに、氏のご厚志からこの愛蔵石をお譲りいただいた次第。



石正面の張り出しは遠近感を一層引き出しています。



 石の底面には大小の凹凸部分が有るため、先のお2人は水盤に砂を敷き石を据えて愛玩されていましたが、保管のことも考慮し私の手元に来てから直ぐに石の台座を設えました。


背面


 背面からも眺められますが、深遠な景を醸し出すには、少々物足りません。


ありがとうございました。

次回もご笑覧賜れば幸いです。🙇‍♂️