おとといの5月24日のことです。

東京工業大学に用があり、東急大岡山駅のお手洗いを利用しました。

 

午後1時過ぎという中途半端な時間だったためか、

お手洗いはとても空いていて、私の他に利用客の姿はなく、

制服を着た女性スタッフの方がお掃除をしておられる最中でした。

 

その日、私はぺったんこの靴を履いていたこともあり、

個室の便器をタワシで洗っておられた彼女は、

音も立てずに入ってきた私に全く気づきませんでした。

 

一心不乱というより、一生懸命という言葉の方がふさわしく、

汗をふきふき便座や便器を磨いているその様子が

なんとも素敵で、私は声をかけることもなく、

後ろからそっと見ていました。

 

どちらかというと手慣れた感じとは程遠く、

キュッ、キュッ、キュッではなく、

ゴシゴシ・ぎゅっ、ぎゅっ、と力いっぱいな感じです。

 

もちろん、私は勝手に隣の個室に入ることもできたのですが、

そうすると、彼女の手をとめてしまう、

気を散らしてしまう気がして、

それはなんとなく憚れたのです。

 

たまたま、待ち合わせの時間まで余裕があった

ということもあります。

 

彼女が水を流し終え、全体を見渡し、よしっと言って、

(私にはそう小さく言ったように聞こえました)

立ち上がって後ろを振り向いた瞬間、

知らない女性が後ろにぬぼっ〜と立っていたわけですから、

彼女は大慌てです。

 

「あっ、すみません!!どうぞ、どうぞ」

 

そりゃあ、そうでしょう。驚きますよね。

じっと見られていたかと思うと嫌ですよね。

ごめんなさい。

 

 

それにしても、その彼女の慌てた感じ、驚いたお顔の可愛らしかったこと。

まだ20代前半のように見えました。

もしかしたら、東急の新入社員さんなのかもしれません。

(だとしたら、東急という会社はすばらしい新人研修をされるのだな、

と思いました)

 

もちろん、彼女とはそんな会話はせず、

「ありがとうございます。使わせていただきますね」

とだけ、お伝えして終わっています。

 

でも、やっぱりひとこと伝えておけばよかったな、

と思うのです。

 

 

「きっと、あなたにはいいことがありますよ」

って。

 

 

あれから2日。

今も、彼女のゴシゴシと便器を磨いていた姿が

ずっとまぶたに、心に、あたたかく残っています。

 

そして、昨日、大きな失敗をした私を

励ましてくれています。

 


 

どうか、彼女にたくさんの幸がありますように。

 

(この写真は、先月、屋久島へ行ったときのもの。

本文とは関係ありませんが、「小さな幸せの種」

という意味では、どこか重なるものが私の中であります)