10月29日、鎌倉二階堂にある、カジュ・アート・スペースにて
『人生でほんとうに大切なこと』出版記念鎌倉講演を行うことが
できました。
まさか、まさかの台風。荒れ狂う風と雨。外では雷がゴロゴロ。
そんな中を遠方は熊本、千葉、栃木、埼玉からとみなさまお越
しくださり、当日キャンセルもほとんどなく、本当に本当に足
を運んでくださいましたみなさまには感謝ばかりでございます。
担当編集者のKADOKAWA・清水能子さんの司会でスタート。
「精神腫瘍医とは」という、清水研先生の説明があったあと
は、会場にお越しくださった方と対談しながら進む、という
全員参加型の珍しくも楽しい講演会となりました。
(国立がん研究センター中央病院 精神腫瘍科長 清水研先生)
また、第7話に登場の千賀泰幸さんにも登壇いただき、ご
自身の体験談やこの本を作りたいと思った経緯などを話し
ていただきました。
(なにしろ、千賀さんが「僕が清水先生との出逢いによって
救われた経験は、きっと多くの同じようながん体験者の役に
立つ。だから、精神腫瘍科を知ってもらうための本が作りた
い」そんな思いを抱かれなければ、この本は生まれませんで
したから・・・)
会場からは、
「私の父もがんの手術をしたところです。家族としては、
何かしてあげたいけれど、何をしてよいのかわからない。
千賀さんは、ご家族にどんなことをしてもらうと嬉しかった
ですか?」
というような質問が、千賀さんに出ました。
その問いに
「お父さんにちゃんと訊いてあげてください。何をしてほし
い?って。そんな風に子どもが気にかけてくれるだけで嬉し
いものです」
と答えた千賀さんです。
(第7話に実名で出てくださった千賀泰幸氏、この本の企画立案者)
その後も
「母が末期がんといわれています。先日、担当医に心無いこ
とを言われて母も相当つらかったはずなのに、なんだかす
ごく無理をして笑ってたりするんです。いつも喧嘩ばかり
しているんですが、なんとかしてあげたいと思っても、何
もうまく言えなくて。僕はどうすればよいでしょうか?」
「先日、夫の49日を終えたところです。夫は淡々と病気に
向き合い、たった1年で逝ってしまいました。もっと何か
できたのではないかと、どうしても思ってしまうのです」
というような質問が続きます。
(この企画の応援団長・大澤健次さん。頼れる兄貴です)
そういった質問に対して、清水先生が1つ1つ丁寧に、時
にユーモラスに応えてくださり、会場全体があたたかいカ
ウンセリングルームのようになりました。
私は、といえば、ただひたすらに
この本を多くの人に知ってもらうことが
「精神腫瘍科」を知ってもらうことにつながり、
一人で苦しい思いを抱えている人が減っていくこと。
また、清水先生のような「精神腫瘍医」を目指そうと
思うドクターが増えれば、また医療現場が変わっていく
のではないか。
そんな思いを熱く語ってしまいました(笑)
本を読んでくださった方は感じていただけるかと思います
が、あのカウンセリングを保険診療で受けられるのです。
がんになったとき、その機会を得られるか、得られないか
は大きな大きな違いです。
(この着物は 前作『115通の恋文』の喜久代さんから譲り受けたもの。
帯は実家の母のもの。命は繋がっていく・・・そんな思いも込めて)
ちなみに、先ほどカウンセリングルームと書いてしまいま
したが、それは病気そのものに関する相談ではなく、自身
や家族、大切な人の「病気」という体験をきっかけに、
どう大切な人に寄り添い、どう大切な時間を過ごすか、
そんなことを改めて考える場に自然となった、という感じ
です。
人は自分自身の物語を生きている。
いろいろあって、大いに泣いて、大いに笑い、味わい深い
物語になっていけばいいですね。
『人生でほんとうに大切なこと
がん専門の精神科医・清水研と患者たちの対話』
(KADOKAWA) amazon