やわらかな日射しに、少しずつ桜の花芽がふくらんできました。

その様子は、希望という花が少しずつふくらんでいくようで、

今年は、ゆっくり、すこしずつ・・・と 

そんなこのスローな感じが、とても今の状況に相応しく、神様の配慮のようにさえ感じます。



この時季、毎年手に取り、大切にしている、手作りの小さな冊子があります。

以前、私が『湘南通信』という媒体で仕事をしていたとき、

画家の鈴木登美子さんが、当時、病気だった私のボスに3冊くださり、

その1冊を、私にも、といただいたものです。



表紙は、桜の幹で染めた、美しい和紙で綴じられています。




その冊子の名は『無名詩』


 


道の学びを極めるために

強さが欲しいと祈ったけれど

慎みを学ぶようにと弱さを恵まれました


偉業を成し通すために

健康でいたかったのに

日々の愛おしさに気づくようにと

病を得ました


幸せゆきの切符が欲しいと

富を求めたのに

賢く知恵をめぐらせよと

貧困を与えられました


ひとびとに誉められたくて

地位や名誉をめざしたのに

節度をわきまえなさいと

失敗を施されました


人生をときめきたいと

あらゆるものを求めたのに

あらゆるものをゆかしく暮らす

人生をいただきました


求めたものは何も与えられなかったけれど

望みをすべてめぐまれたわたしは

豊な歳月を過ごしました




・・・・・・


この詩の作者は、

アメリカ南北戦争に敗れた南軍兵士というだけで、名前などはわかっていません。


150年近く前の誰かの言葉に

私は今も、勇気づけられます。