唯我とはかつて、FICTION(おもしろい劇をする希有の人間たち)で一緒に苦しいも楽しいも共に過ごした。その日々は本当に思い出深い。
その井上唯我が6月11日午後2時ちょっと前に息を引き取った。
知らせを聞いて病院に駆け付けた時、唯我は色んな器具をつけられてベッドの上で必死に闘っていた。
それはもう本当に壮絶で、あんな壮絶に戦っている人間を観たことがない。
「もうちょっとこの身体と闘うべきか?それとも、もうやーめた!って抜け出そうかな?」
そう思いながらも、そばにずっと寄り添っている奥さんのまさみちゃんや唯我のおとうさんおかあさんの為にも、最期の最期まで唯我は闘いをあきらめることはなかった。
そして、その強い意思とは関係なくゆっくりと意識はなくなっていった。
そして、唯我の魂はポンとついに身体から抜け出た。
でもそれは負けたんではない。絶対に違う。
最期の最期まで充分に闘った末の結果なだけだ。
唯我は最期の最期まで闘いながら逝った。
その瞬間から唯我はそこらじゅうにいるようになった。
唯我を思うみんなの心に中に。
ベタベタした付き合いを敢えてさけてやってきたFICTIONだったので
俺がFICTIONを離れてからはみんなと会うことはなかった。
でももう、唯我はそこらじゅうにいるようになった。
それはひとりとかふたりとかの数の事じゃない。
唯我を忘れないみんなの元に、時には同時に唯我は現れる。
あんまり現れるから常に観られてる感じがして「ここも観るの?ここは観ないでいてくれる?すまんけど」と言いたくなる。
FICTIONで一緒にやってた時、色んな役をやっていた唯我。
最初に観た唯我は「ひまわり」を演じていた。
「天使」もやった。
「アヒル」もやった。
「ナマズ」もやった。
「ひきこもりのリストカット少年」もやった。
「顔を黒く塗って黒人(別人)になろうとしてる男」もやった。
「見事な刺青を入れた男」もやった。
ありとあらゆる役を「自分を変化させて」やっていた。
「ひまわり」はシュッとしてて嫌な感じな奴で、でも悲しくって良かったなー。
「天使」になろうと濃いすね毛まで剃ってたなー。
「アヒル」は自己主張のないサラリーマンみたいで面白かった。
「ナマズ」なんか、身体を張って背骨が折れるんじゃないかと思うくらいに手加減なしに舞台中を
暴れて飛び回ってすさまじい地震を表現していた。凄い地震だった!面白かった!
「ひきこもりのリストカット少年」は滴り落ちる血の量がもう凄くて、あんな血の量、舞台で観たことないから、完全にお客さんが引いてた(笑)
それでも、「心地良いなんてくそくらえ!そんなん知るか!へへへ」って感じでリアリティを追及してやってたなー。
「顔を黒く塗って黒人(別人)になろうとしてる男」は滑稽で哀愁さえ漂ってた。
「見事な刺青を入れた男」は今までにないキャラで本当に楽しそうにやってたなー。
本当に見事な刺青だった。刺青姿の写真、いい顔してた。
そして、唯我らが新たに立ち上げて創作した「素のもの」。
本当に面白かった、嫉妬したよ。(これは俺の個人的な感情だからどーでもいいが。)
お葬式の席で、奥さんのまさみちゃんは唯我に会いに来た人達をひとりひとり丁寧に対応し迎えていた。
喪主の最後の挨拶で「最高の男でした」と思いを語ったまさみちゃんの声が今も心に響いている。
唯我、もう痛みもないだろうからあの独特の笑い声でケラケラ笑ってゆっくりやって下さい。
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「わが母の記」を観たり
「パコと魔法の絵本」を観たり
両作品から感じられるものは全く違う。
もちろん比べるものでものでもない。
でも両方とも本気で作っているのだけは共通している。
「パコと魔法の絵本」を観たり
両作品から感じられるものは全く違う。
もちろん比べるものでものでもない。
でも両方とも本気で作っているのだけは共通している。