令和2年度に引き続き、今年度の仙台支部会総会も「書面審議」となってしまいました。多くの会員の方が、年に1度、メトロポリタンに集って旧交を温める機会を楽しみにされていますが、誠に残念です。

 そうした中で、会員の親睦を主目的をとした支部会活動を如何にすべきか、今何ができるかを検討してきたところですが、交流ブログを活用して各界で活躍される会員にご協力いただきインタビュー形式で会員の皆様へお伝えすることといたしました。

 第1回は、本年4月に東北電力株式会社取締役会長に就任された 増子次郎 氏(昭49卒)です。聞き手は熊谷支部会会長、前・後編の2回に分けて掲載します。

 

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仙台支部会メンバーのご活躍状況(第1回/前編)

 

東北電力株式会社 取締役会長 増子次郎 氏(昭和49卒)

※現在、仙台支部会 副会長

 

令和3年9月15日(水)

東北大学 産学連携先端材料研究開発センター 内

聞き手:熊谷枝折 仙台支部会会長

 

【東北電力会社取締役会長に就任して】

熊谷) 増子さん、困難な状況の中、お越しいただきありがとうございます。

 会長交代の発表があった1月27日には日経がWEB版で配信しましたし、当日の河北夕刊にも掲載され、翌日の朝刊ではトップ記事として取り上げられる程のビッグニュースだったわけで、同窓会内でも非常に沸き立ちました。

 コロナで集まっての総会も開けないし、増子さんへインタビューしてブログに乗せてほしいという声が寄せられました。

 4月に就任されて、約半年経過しましたが、率直な感想をお聞かせください。

 私としては、技術系そして原子力関係を経験され、いっきに副社長から取締役会長に昇格したことに驚いてしまいました。

 

増子) ありがとうございます。本日はよろしくお願いします。

 会長との話を聞いたのは昨年末だったと思いますが、「自分が?」と正直大変驚きました。副社長からの会長就任は、東北電力では初めてのケースですが、副社長と会長では目線の高さが全く異なり、不安はない、なかったと言ったら嘘になると思います。

 

 就任から半年経ちましたが、会社の全てのことを把握している訳でないので、勉強しながら取組んでいるところです。しかし、経営判断は一人がするものではなく、社長を含め取締役会全体で推し進めるものであり、バランスの取れた取締役会メンバー、卓越した識見と豊富な経験を持つ社外取締役で構成されており、会社経営はしっかり進めてこられていると思っています。

 

 ただ、コロナ禍で、実際に足を運んで東北および新潟県の地域の皆さんと情報交換したり、現地の状況を見ることができないので苦労しています。

 

【就職】

熊谷) 一関を離れて北海道で学生時代を過ごし、昭和55年に東北電力に就職されましたが、東北電力を選ばれた切っ掛けは何ですか?

 

増子) 小・中学生のころから原子力に興味を持ちはじめ、大学では原子工学を専攻しました。ということで、原子力関係で就職できればと考えていました。そうしたところ、当時の就職担当の教授から、「君は東北出身だったよね。東北電力に行きたまえ」というありがたい?お言葉をいただき、入社することができました。勿論、入社試験を受けてですが…

 

 恥ずかしながら、当時は東北電力という会社について「発電して電気を供給している会社」程度しか思っていなかったのですが、「東北の繁栄なくして当社の発展なし」という言葉がありまして、これは、昭和26年(1951年)の創業以来の基本的考え方で、単に電気を供給するだけでなく、それによって供給地域である東北6県・新潟県の発展に貢献していく会社なんだということを知りました。

 

 入社してからはほとんどが原子力部門に所属していました。女川原子力発電所1号機の建設にも携わりました。震災の時には女川原子力発電所に所長代理として勤務していましたが、女川町に家族を残している社員が、心配しながらも懸命に、休みなく働いてくれました。思い出すと今でも目頭が熱くなります。また、近隣の停電が解消された際には、わざわざ訪ねてこられた住民の方から涙ながらに手を握りながらお礼を言われ、「東北電力の社員で良かった」と思いました。

 

【経営環境】

熊谷) 電気料金は平成28年(2016年)から完全に自由化され、取り巻く環境は厳しくなってい ると思います。発送電分離が義務付けられたことにより「東北電力ネットワーク株式会社」を分社化するなど、新しい対応に迫られていると思いますが、増子取締役会長としての今後の見通しについて教えてください。

 

増子) 電気事業については、2013年から段階的に自由化が進められ2016年には小売り全面自由化となり、2020年には発送電分離として送配電事業が「東北電力ネットワーク株式会社」として分社化されました。自由化の目的は、様々な事業者が加わることによりお客さまに電力会社を選ぶ選択肢が増えること、電気料金が安くなることですが、電気料金については再生可能エネルギー導入のための賦課金が加わっていることから皆さんは実感されていなしかも知れません。

 

 送配電事業の分社化は、送電線や配電線がどの電力会社にも公平に使用できるように行われたものです。東北電力と東北電力ネットワークは別会社となっていますが、災害が発生した時などには一体となって復旧対応に当たることとしています。その点はご安心いただきたいと思います。

 

 この電力自由化により競争が激化しています。また、太陽光発電などの再生可能エネルギー導入が拡大し、今まで電力供給が不足する日中帯に太陽光による供給が増えることになり、一定運転していた従来の発電所の出力を下げたり、天候に左右される再生可能エネルギーを補うように発電しなければならなくなったりしています。さらに足元では新型コロナウイルス感染拡大で社会・経済活動が大きな影響を受け、電力需要の見通しも不透明なことなど、一層厳しさが増しています。また、「デジタル化」「分散化」「脱炭素化」の動きも加速化しています。

 

 このような課題に対応するため、ベースである電気供給事業と新規事業であるスマート社会実現事業を2本柱とした東北電力グループ中長期ビジョン「よりそうnext」を策定し、実現に向けて、様々な取り組みを加速していくこととしています。

 

 新規事業、成長事業として位置付けているスマート社会実現事業については早期収益化を目指し、今年の4月に「東北電力フロンティア」という新会社を設立し具体的施策を進めはじめたところです。これから、様々なサービスを立ち上げて行くこととしています。

(後編へ続く)

左、増子東北電力会長 / 右、熊谷仙台支部会長