【2017】娘が僕のことは名前で呼んでいた頃 | 主夫作家のありのまま振り返り日記

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奥さんと出会ったとき、女の子は5歳で。
今はもう11歳になった。
2020年には弟もできた。
あの頃を思い出したりしながら、過去を振り返る日記を書くことにしました。
今の様子も書いたりしています。

娘と初めて会ったとき、5歳だった。

娘と言うか、僕にとったら彼女の子どもという感じで。

 

僕たちは一緒に住むようになった。

その時の僕はまだピン芸人をしながら、アルバイトを掛け持ちでしていた。

コンビを解散して事務所にも所属していない。

どこに行ったってアウェーだと感じていた。

 

家に帰ったら彼女と晩酌する。

それが楽しみだった。

 

だいたい家に帰る時間は22時前で、5歳の子どもは寝てなきゃいけない時間。

なのに、娘は起きていた。

 

僕は心配になって

「子どもの頃はたくさん寝たほうがいいんじゃない?10時間くらいはさ」などと言ってみる。

娘も口では「分かった」と言うんだけど。

それでも、翌日も、その翌日も娘は起きていた。

布団に入っているらしいが寝れないようだ。

 

ある日、僕が帰ってくると

娘は「おかえり。はんばーぐだよ」と言って僕を出迎えた。


僕は、娘が寝ることをあきらめ、布団から出てきてしまったことに対して

あまりいい顔ができなかった。

さらに、その日の僕は何もうまくいかずに、少し落ち込んでいた。

 

少し感情を抑えて、

「え、ほんと?ありがとう、シャワー浴びてからいただくね」

と言うと、リビングにいた彼女が手を左右に振り

「ハンバーグじゃないよ」と言った。

どういうこと?と思ったら。

そのハンバーグは娘がおままごとのキッチンセットで作ったものだった。

 



僕はそれを知り、

「あ、ほんとにハンバーグかと思った」と言って、そのままシャワーを浴びた。

 


 

シャワーから出ると、娘はリビングにいなかった。

布団に入ったようだ。

 

しばらく彼女と晩酌をしていると、

僕に視線を合わせずに、静かに言った。

 

 

    

「ハンバーグ食べてあげてほしかった」

 

 

小さな声で。

悲しみのこもった声だった。

 

リビングにはおもちゃのキッチンセットで作ったハンバーグがお皿に並べられていた。

 娘は僕の帰りを待っていたのだという。

 

娘は長い間ママと二人で暮らしていた。

その生活から、自分なりによりよい生活にしようと努力していたのだ。

 

僕は、彼女と晩酌がしたいという自分勝手な思いだけで

「あなたは早く寝なさい」と言ってしまっていたのだ。

 


その日から、

本当の意味で僕は3人で暮らしているんだと理解した気がする。


娘は何も悪くないのに、悲しい思いをさせていたと反省した夜。

娘の作ったはんばーぐを見ながら、ハイボールを飲んだ。