広島市暴走族追放条例(百選第7版84事件)

 

第1審、原審 被告人の行為が本条例19条、16条1項1号、17条に該当 有罪判決

 

被告人は、これらの規定が憲法21条1項、31条に違反する等と主張して上告

 

上告棄却

 

「本条例は、暴走族の定義において社会通念上の暴走族以外の集団が含まれる文言となっていること、禁止行為の対象及び市長の中止・退去命令の対象も社会通念上の暴走族以外の者の行為にも及ぶ文言となっていることなど、規定の仕方が適切ではなく、本条例がその文言通りに適用されることになると、規制の対象が広範囲に及び、憲法21条1項及び31条の関係で問題があることは所論のとおりである。しかし、本条例19条が処罰の対象としているのは、同17条の市長の中止・退去命令に違反する行為に限られる。そして、本条例の目的規定である1条は、『暴走行為、い集、集会及び祭礼等における示威行為が、市民生活や少年の健全育成に多大な影響を及ぼしているのみならず、国際平和文化都市の印象を著しく傷つけている』存在としての『暴走族』を本条例が規定する諸対策他の対象として想定するものと解され、本条例5条、6条も、少年が加入する対象としての『暴走族』を想定しているほか、本条例には、暴走行為自体の抑止を眼目としている規定も数多く含まれている。

また、本条例の委任羈束である本条例施行規則3条は、『暴走族であることを強調するような文言等を刺しゅう、印刷等された服装等』の着用者の存在(1号)等を本条例17条の中止命令等を発する際の判断基準として挙げている。本条例の全体から読み取ることができる趣旨、さらには本条例施行規則の規定等を総合すれば、本条例が規制の対象としている『暴走族』は、本条例2条7号の定義にもかかわらず、暴走行為を目的として結成された集団である本来的な意味における暴走族の他には、服装、旗、言動などにおいてこのような暴走族に類似し社会通念上これと同視することができる集団に限られるものと解され、したがって、市長において本条例による中止・退去命令を発し得る対象も、被告人適用されている『集会』との関係では、本来的な意味における暴走族及び上記のようなその類似集団による集会が、本条例16条1項1号、17条所定の場所及び態様で行われている場合に限定されると解される。

 そして、このように限定的に解釈すれば、本条例16条1項1号、17条、19条の規定による規制は、広島市内の公共の場所に置ける暴走族による集会等が公衆の平穏を害してきたこと、規制に係る集会であっても、これを行うことを直ちに犯罪として処罰するのではなく、市長による中止命令等の対象とするにとどめ、この命令に違反した場合に初めて処罰すべきものとするという事後的かつ段階的規制によっていること等に鑑みると、その弊害を防止しようとする規制目的の正当性、弊害防止手段としての合理性、この規制により得られる利益と失われる利益との均衡の観点に照らし、いまだ憲法21条1項、31条に違反するとまでは言えない。」

 

出題 予備試験平成27年択一

 

『暴走族』の限定解釈をし、合憲