保育者と保護者の母親との会話 前略

「まるで遊んでいるばかりいるようで」

「いけませんか」

「いいえ、結構ででございますが、でも何かもう少しは…」

「といいますと」

「もちっと何かおけいこを…。遊ぶだけならば、何処でも出来ることで    すし」

「そうでしょうか。おけいことおっしゃるほうは後のお話にして、その、遊ぶだけならばというのが、実はなかなか容易ならぬことなのじゃありますまいか。どこでもできましょうかしら」

……………………

「あれで利口になりますのでしょうか」

「さあ、なるといえばなりますね。なりますよ。ただ無理に仕込まないだけです」

「遊んでいるばかりで………」

「ばかりばかりとおっしゃいますが、遊んでばかりいる気なのは子供のほうで、そこには先生がついていますからね。先生は遊んでばかしいるのではありませんからね」

「やっぱり時々は教育していただくのでございますか」

「時々じゃあない。始終です。あまり結構だから人からきがつかれないのでしょう」

「あれで利口になりますのでしょうか」

「へえ、始終…」

「そうです、先生はたえ間なく、つまりは機会あるごとにですね」

「ともうされますと」

「一体あの遊びというものが、そのままで大きな教育的ねうちをもっているものです…」

荒井洌著「倉橋惣三ー保育へのロマン」より、著者の許諾済。