これは、マタニティーブルーなのだろうか。
べべの声で目が覚めた夜中
授乳が終わって布団にもぐりこんだ時、
ふと、数時間前のことが頭をよぎった。
夜中の12時に仕事から夫が帰宅したので、仮眠を取っていた私は起き上がり
「Joyeux Noël(メリークリスマス)!」とビズを交わし
一人で食事をする夫をぼぅっと見ていたら、なんだか急に悲しくなってきた。
「T'as l'air triste, mon amour. Qu'est-ce qu'il y a?(悲しそうだけど、なんかあった?)」
そう夫に聞かれ
「Rien.(別に)」
と答えたが、本当はこの気持ちをどう表現していいかわからなかった。
―学生生活が終わってから、これまで10数年、私はクリスマスにゆっくりしたことがない。
職業柄、仕方のないことだし、今までそんな境遇を恨めしいと思ったことは一度もなかった。
夫も、日本に来てからは、クリスマスに休んだことがない。
そんな、日本では当たり前のことが、当たり前じゃない国からやって来た夫に対して、何だか急に申し訳ないと思えてきたのだ。
Facebookを開くと、向こうの国では皆バカンスに入り、楽しそうな一言が画面を賑わし…ふと、ワーホリ時代にフランスで過ごしたクリスマスを思い出した。
イヴの家族でテーブルを囲んでのディナーや、クリスマス当日の静けさ…仕事の雰囲気…何もかもが私には初めてのことで、「クリスマスって、こんなに大切な日だったんだ…」と思ったものだ。
家族で過ごす、その大切な日を、日本でがむしゃらに働く。
日本に来た宿命ともいえる。
わかってはいるし、後悔はしていないけど、なぜかその夜はそのことが頭から離れずに、夫に対して申し訳ない気持ちになって、何だか急に泣けてきたのだった。
今年も、昨年同様、ツリーを飾る時間も、プレゼントを買う余裕もなかった。
そして何より、べべにとって初めてのクリスマスなのに、親から何もプレゼントを用意していなかったこと。
フランスからは段ボールが3箱も届いていたが、このフランスと日本の温度差のようなものが余計に私を悲しい気分にさせた。
私はそんな思いを振り切るかのように、薄暗い部屋の中、小さな灯りが天使のような寝顔のべべを照らしているのを見ていた。そして、また布団にもぐりこみ、目を閉じたのだった。
翌朝、折角買っておいたケーキを、出したまま寝てしまった挙句、もう仕事に行かなきゃいけないから食べていいよと言った夫を責めたが、少し悪かったな、と反省をし、ゴメンね、とお互い言い合って、笑顔で夫を送り出した後…急用があり会社の上司と電話で話をして、何だか上司の暖かな声でやっと元気が出てきた。
来年も、きっとこの時期は2人とも忙しくなる。
だけど、その中でも楽しいクリスマスを過ごそう!
夫にもべべにも喜んでもらえるように、当日ではなくても、お休みの日に美味しいご馳走を作って…