9月3日(金)


今日はいよいよ、私達が結婚式を挙げるCampagne(田舎)――PepeとMemeの住むカンパーニュから程近い小さな村へ、出発する日だ。



車は3台。



パパとママの車には、週末遠くからやって来る招待客や、私達家族が泊まるジット(山小屋風の宿泊場所)で使うベッドのシーツや枕カバー、その際の食事に使う紙コップやお皿、フォークにナイフを詰め込み…

私達の乗る車には、ウェディングドレスなどの衣装類・メイク道具・夫の一式に、念のため日本から持ってきた結婚式のヘアスタイルなどの雑誌などなど…小さな車は荷物でいっぱい!



そして忘れてはならないのが、日本にいる、父から預かった手紙。

父は健康上の理由で来れない代わりに手紙を書いてくれたのだ。

それも、フランスの家族がわかるようにわざわざどこかで翻訳してもらい、私に日本語の自筆の手紙と印刷されたフランス語の手紙と託したのだ。私はその、綺麗に包まれた手紙を大事に取り出し、当日それをみんなの前で読んでくれるよう頼んでおいた夫のパパに前日の夜、手渡した。



日本じゃ結婚式って言うと、なぜか手紙がつき物だけど…フランスではこういうの、ないらしい。

明日みんなの前で読むからと、どんな内容の手紙か確認したパパは、その場でめがねをはずし、涙を拭っていた。そして、それを見ていた周りの弟や妹、夫までも一緒に読んで泣き出した。



遠き国、日本から届いたメッセージが、深く深く、みんなの心に入っていった瞬間だった。

――



妹の車は、結婚式用にリボンでおめかし♪



フランスで結婚式をしているのを見かけると、車のサイドミラーやアンテナ、取っ手などに可愛くリボンがかけられているのをよく見るけど…本当に自分も同じことするんだ…



でも、その車、当日までのお楽しみ♪



・・・



私達は別々に出発した。

今回、私達の挙式の為だけに、今や韓国在住の夫の親友がわざわざフランスに里帰りしてくれたのだ。

私達は彼の実家に車を走らせ、迎えに行くことにした。




彼は言ってみれば、私達のキューピッド。



日本での婚姻届も、わざわざ彼にサインしてもらったし、

今回の挙式のtemoin(証人)もお願いしている、大事な友人なのだ。



のどかな風景を眺めながら、私達はラジオのフレンチポップスを聞いていた。



どれだけ車を走らせただろうか。

随分遠くまで来たようだった。

ようやく一軒の家の前で車が止まった。

静かな、原っぱに囲まれたような小さな住宅街だった。



彼の家族に挨拶をし、私達はその友人の荷物を車に詰め込み、出発した。



もともとは、同級生のこの2人。

フランス語で言うと、


Ils ont fait les quatre cents coups, ensemble.


色々、馬鹿やって来た仲である。

今はそれぞれ別の道を行き、彼は韓国へと生活の拠点を置くようになったが、(以外に近い!?)

久しぶりに、しかもこうしてはるばるフランスに帰って来てくれたのだ。



彼のポロシャツを見ると、なんだかよくわからない日本語が書いてあった。



きのこ。



私は笑って夫に言った。

「"Champignon"(シャンピニヨン←フランス語に訳した)って書いてある!」

私達は爆笑した。



どうも韓国で買ったらしい。





――私達はついに、小さな村へとやって来た。




夫の両親とも合流し、Salle――結婚式のパーティをする会場へと入った。

教会はこの近く、歩いてすぐのところにあり、私達はそこで挙式をした後にこちらへやって来て

パーティをするのだ。




のどかな風景の中――会場が"Ferme"というから(日本語で農場)、牛でもいるのかと思いきや、おらず…。



広大な敷地の中には、今回のパーティに使う、おそらく多目的室(というか建物)、奥のほうにはジット(寝泊りする山小屋)が、何棟もあって、景色は抜群!

私達はジットにそれぞれ荷物を置き、その多目的室のテーブル配置に取り掛かった。




…ここでは全部、自分達でやるのだ。



パパと夫があーでもない、こーでもないとテーブルと椅子を並べ、70人もの招待客が入るように試行錯誤。

なかなか決まらない配置に、皆嫌気が差してきた頃、「これでいいじゃん!」とパパが最終決定をした。



昼食を皆で取り、その後は音響設備の配置に取り掛かる男たち。

機材はパパが会社から借りてきた。照明なんかも持って来て、キラキラ光らせ、調節。

皆で食事する部屋の隣に、昭和な香りムンムンの、レトロな“ディスコテック”(←あえてこう言う)完成!



今回、唯一お願いしたのは、そんな多目的室のデコレーションと写真撮影。



パパの同僚が“週末カメラマン”をやっているのと、彼女のお姉さんがデコレーション関係の仕事をしていたので、姉妹セットでお願いしたのだ。



彼女達も到着し、せっせと箱の中から今回の装飾道具を出し始めた。



この辺には何もないので、なぜか夫がこんな時に持ってきたサッカーボールで、友人と3人でサッカーをし始めた。一旦仕事をやめると、こんな感じである。

私とママは、近くの街へと車を走らせ、挙式に使うブーケをオーダーしに行った。



少々遅い…っていうか、遅すぎると思うのだが、勝手のわからないフランスで、前日で良いといわれるままに花屋さんに出かけたのだが、案の定…



「遅すぎます、来るの!」



と店員に言われた。(ほらねー)



こんな小さな街で、そんなに花なんて置いてあるわけもなく…

ウキウキでブーケの雑誌まで日本から持ってきた私は、すっかり落ち込み…

それを見たママが、何とか喜んでくれるようにといろいろ考えてくれたんだけど。



手に持っていた雑誌は、薄いピンクやイエローが混ざる淡いブーケ。



けど、花屋さんにあったのは、どぎついピンクに木の実。

…木の実かよ!?



明日なら薔薇が入る、ということだったので、私は敢えて色んな色を使わず、白いブーケを作ってもらうことにした。(白というか、アイボリー)



「T'es contente?? T'es pas triste?!(ねぇ、嬉しい?悲しんでないよね?)アタシが馬鹿だったわ。

もっと前もってくれば良かった!」



帰り道にママが言った。



――夕方になると、一台の車が入ってきた。パパのいとこファミリーだ。



遠路はるばる。

数時間かけて来てくれた。



挨拶をし、よく見ると…

パパのいとこも何やら日本語が書いてあるTシャツを着ていた。



“可愛い”



私達はまた笑った。

可愛いっていう意味を、パパのいとこに言うと、彼も大笑いした。



こういうのって…どこに売ってるんだろう?!




続々やって来た友人や親戚。

私とママは料理の準備に取り掛かり、サラダとバーベキューで夕食を簡単に済ませた。



ドキドキ。いよいよ明日が結婚式!!!



夜遅くまで話し込んでいた私達は、ようやくジットに戻り、シーツの準備などをし…



眠りについたのでした。――って言いたい所だけど…



ここは田舎。

部屋の中に虫がいるよ~あせる


こわっ!!!

荷物を高い所にのせ、怖い怖いと騒ぎながら、目がランランとしてきた私。



次第に眠りに就いた夫のいびきに悩まされ…

前日の緊張もあり、なかなか眠れなかったのでした。