――その晩、空港近くのホテルに泊まった私達は、翌朝始発のバスで空港へと向かった。



至る所に泊りがけと見られるアジア人(中国人?)が毛布の上で身を起こし…

いつもとは違う表情の空港に、少し緊張感が走った。



幸い、早くに出発したので、スムーズに事が運んだが、帰国すると見られる多くの外国人が列を作り、改めて"こんなに外国人が日本に来ていたんだ"と思った。

それにしても、再入国許可証を取得する為入国管理局に並んだ外国人は、少なくとも


『また日本に戻ってこよう』


と思っているに違いなく――そうでなければただ帰国すれば良いので――いかに日本が心地よかったのか…未だこんなことになってしまったのが信じられず、出国する前から家に帰りたい気持ちになった。

買ったばかりの自転車、先日届いたばかりのホームベーカリーは、まだ一回しかバゲットを焼いてない。

お気に入りの韓国ドラマに、予約していた美味しいレストラン。



当たり前のこと全てが、どんなに幸せだったのだろう。



搭乗口に向かうと、赤ん坊連れの国際夫婦が実に多く…きっと皆も苦しい決断をしたのかもしれない。




『またすぐに戻ってこようね』



夫と合言葉のように口にして、日本を後にしたのでした。