8月29日(日)


今朝は、昨日より大きなマルシェへ車を走らせた。



こんなに空は青いのに、空気はヒンヤリ。

カタカタと震えながら、冷え切った私は夫の手を握りしめ、皆の後に続いた。
MimiとMicの"Le mariage en France" pour le moment...


思えば、仕事の翌日、大慌てで荷造りをし、空港へと飛び出したあの日から…

疲労とストレスで、一気に体調を崩していた私…


今日もなんだか胃が痛い。

それに加えて、このCampagne(田舎)の寒いこと!

厚手のパーカーを夫から借り、日焼け止めを塗り、帽子をかぶって来た私。

空気の乾燥も気になるので、しっとりタイプの乳液をたっぷり塗って来た。


挙式まで、後一週間。


ところで色々な地方のマルシェを見てきたけれど、ここのマルシェも印象的だった。

道路沿いに延々と続くテントは、終りがないのではないかと思うくらい長かった。



MimiとMicの"Le mariage en France" pour le moment...


↓犬や猫はリヨンでも売られているのを見たことがあるけれど、これはCampagne(田舎)っぽい。

いつだかワーホリ中に2ヶ月程度通った、アリアンス・フランセーズで"Le bonheur dans le pre"というfilmを授業で観たのを思い出した。古い映画だったけれど、嫌いじゃなかった。むしろ、もう一回じっくり観たい。
MimiとMicの"Le mariage en France" pour le moment...


「ちょっと上に行ってみようか。」



道を横に曲がると、坂になっており、丘の上には教会があるみたいだった。


「うん」



皆で坂を登っていると、爽やかなミントグリーンの色をした窓に、白い石のレンガの壁…窓辺には綺麗な花が咲き…古いけれど、とても素敵な家があった。



「こんな家に住みたいね」



皆であーだの、こーだの話しながら、ズンズン、坂を登っていった。



すると、教会が見えてきた。




「二人とも、そこに並んで!練習練習♪」




教会の入り口に夫と二人で並んだところをパシャリ。

ママが写真を撮ってくれた。



ところどころで、ママは写真を撮ってくれ、帰りにも街の入り口―― 看板があるところで、わざわざ車を止め、私の記念写真を撮ってくれた。



「これでこの街のこと忘れないね。」



そう言っていた。

なかなか慣れないと思っていたフランス家族との生活。

張り詰めていた気持ちが、少しずつ緩くほぐれていくようだった。







マルシェから帰ると、昼にはママの妹が遊びに来た。

二人は仲良し姉妹らしく、しょっちゅう遊びに来るので、パパは焼きもちをやいているとか。


フランスの我が家…特にここ、Campagneでは、日本の正月に皆でやるようなゲームがいっぱい。

テラスで輪になり、皆でゲームを始めた。



こんな普通の週末に、家族でこうやってゲームやるんだ…

なんて、ちょっと日本じゃあまりやらない、贅沢な休日の過ごし方に思えたりして。


「Mimi、いつも帽子かぶってるわね」


ママの妹に言われ、こう答えた。


「結婚式まで、日焼けしないようにしてるの」


…そんな私は、このフランス滞在中、どんなに暑かろうがいつもパーカーをはおり…

日傘使用率0%のこの国で、唯一の日よけである帽子をかぶり…

頻繁に日焼け止めクリームを塗っていた。



何ゲームか連続で遊ぶと、そのうち各自昼寝をしたり、サッカーを観たり、雑誌を広げたり・・・

思い思いの行動を取り始めた。

私も最初はパパが買ってくれたオレンジページ風料理雑誌を広げ、あれこれと眺めていたが、それも終り…

実は特別することがないことに気づいた。



昨日は探検に行ったり、一昨日は料理を習いに行ったりとしたが、周りに何もないこのCampagneで、テレビをママと観ても、イマイチついていけず…夫とパパはサッカー(テレビ)に夢中。ママの妹は昼寝。



昼下がりの午後・・・



何もすることがなくなってしまった私は、急に来週の結婚式のことや、買わなくてはいけないお土産のこと、まだまだ本当はやることがあるのに、ただ、ここでは何も出来ない。と言うことに、段々苛立ってきた。



(すごく時間の無駄!)←日本人の悪い癖



そんな気さえして来た。




(・・・結婚式のメイクでも、見ておこうかな。)

日本から持ってきた雑誌を広げ、眺めているけれど、かといって練習するわけでもなく・・・(←そんな雰囲気ではなかった)



―― ふと、化粧ポーチから鏡を取り出し、覗き込んでみた。



(ぎゃっ!!!)



出発前まで、順調だった私の肌…

温泉に行って、つるつるだった、私の肌は、顔中粉を吹き…それどころか、皮が剥け、赤く腫れ、完全に乾燥しきっていた。




「ねぇ、アタシの顔、腫れてない?」


夫に尋ねると


「・・・うーーーん・・・少しね。でもそんなに気にならないよ。」



うそだー!完全に腫れてるよー!!



リヨンにいる時はまだ大丈夫だったが、田舎へ来て、強い紫外線と乾燥した空気から守ろうと、日本から持ってきた乳液を頻繁に塗っていたが、全く効いていなかったのだ。

…前回フランスでワーホリしてた時は、この乳液と化粧水でやってきたんだけどな・・・



朝、ママに借りたニベアのクリームもピリピリしびれたし・・・もう自分の化粧水ですらしびれる。

完全に肌が弱ってる。


(あー…終わった…)




ぐるぐる、マイナス思考の渦にのまれた私は、このどうしようもない気持ちを落ち着かせようと、1人散歩に出ることにした。




「ちょっと、散歩行ってくる。」




「え?」




夫が急いで着いてきた。





「僕も行く。」




「いいよ、一人で行くから。」





「いいよ、一人で行かせられないよ」





そう行って着いてきてくれた夫にも苛つき、無言で歩き始めた。




てくてくてく…




あてもなく歩き続けると、沼地に着いた。




二人で腰かけ、目の前の景色をぼうっと見ていた。




「どうしたの?」




そう尋ねる夫に、

急に涙があふててきた。





「あなたにはわからない」





「テレビもついてけないし、何もすることもないし…こんな事ならパリに行ってくれば良かった。」





そんな不満を全部言った。

文化の違い、考え方の違い、食の違い、時差、言葉・・・そして肌荒れ・・・

全部がストレスになっていた。




「それは、僕も同じだよ。」




・・・そうだった。

1人で日本に来てくれる彼。

私が今感じている事がそっくりそのまま彼に移動するだけなのだと、その時気づいた。




思ったことを全部言って、彼もそれを受け止めてくれて、とことん話した後・・・

少しずつ気持ちが和らいでいった。



やってくしかないんだ。




「On verra bien. とりあえず、やれる事やってみよう。」



「うん。」



「じゃぁ、帰ろうか」



「うん。」






二人は立ち上がり、もと来た道に戻った。

・・・これから、どんな事があるかわからないけれど・・・





そんな不安も少し抱えながら、でも、強く手を握り締めて。