第7章 韓国ドラマ映画
韓国映画 ハント
 
 
久しぶりに10月10日「新宿バルト9」に韓国映画を鑑賞しに行きました。
イ・ジョンジェ初監督作品『ハント』、本国2022年8月ロードショー開始作品です。

 

 

韓国と公開タイムラグが凡そ1年有り、韓国での公開時のニュースと反響を毎度キャッチして居る私としては長いブランクにより映画を観たいと言うパッションが殆ど消え去ります(笑)。
『ハンサン〜龍の出現』の様に情熱を1年間も持続出来るのはとても稀(まれ)な事。
よっぽど興味有る史劇映画に限られます。

 

 

この映画も存在自体失念して居て家内の提案に重い腰を上げました。
私より「重苦しい映画」が苦手な筈の家内がこの様なノアール色タップリでパニック映画っぽい硬派な映画を観ようと誘って来たワケは?
 
勿論イ・ジョンジェ初監督作品&主演、大親友でビッグネームのチョン・ウソン共演と言うネームバリューも大きかったでしょうが、理由を聞きさも有りなんと納得。BTSのジンが入隊前に試写会に招かれ話題になったとの事。
ジンペン(ファン)の家内がその事実を逃すワケはございません。
 

 

実際、韓国ドラマ映画にさして興味の無いアミトモ(BTSファン友だち)にも映画観賞を誘われたのだとか。アーミーの結束力・行動力や恐るべし。
気を使わずアミトモ同士で観に行ってくれても全然OKでは有りましたが、ブログ記事執筆のアイテムとパッションをくれて有難うです(笑)。
最近中々ドラマ・映画レビュー記事が執筆出来ませんから。
 
ロードショーまで鑑賞しに行くと折角なので何が何でもレビュー記事にしようと気合いが入ります。ひとまず映画パンフレット購入は必須。当然の儀式として売店へ。
しかし店員さんの「売り切れです。」との無情な声が。ナントハントが売り切れとな?(失礼)

 

 

イカゲームイ・ジョンジェが出演して居るとは言え韓国映画のパンフが売り切れだなんて。
後の話しにはなりますが悔しいので他の映画館に電話して、帰り道お台場に寄りパンフを購入する羽目になりました。
パンフが売り切れる理由は映画鑑賞後多いに納得、一言で難解なのです。

 

 

韓国現代史を熟知する我々在日コリアン(ウリハッキョ朝鮮学校出身)でも解りにくい設定とあらば日本の人となれば尚の事。
ましてや私たちの鑑賞した際の劇場観客席の方々は殆どが老年層、映画の背景が1980年代と有って理解し難い設定だった事でしょう。私ですら制作意図など監督の言葉を聞きたかったくらいですから。

 

 

おかげ様で予定に無かったお台場へのパンフ買い出しも追加された為に夕方帰宅ラッシュ渋滞に巻き込まれ、家に着いた頃には疲れでグダっとしてしまい、ブログ記事執筆準備も放棄せざるを得ませんでした。
本日気を取り直しようやく執筆開始と相なった次第ですが、誠に罪作りな映画です。
私のこだわりが強いだけですが(笑)。
 
いつも以上にどうでも良い前振りが長過ぎました。普通ならこのくらいでレビュー記事終了しても良い程です(笑)。
お付き合いに感謝の念が絶えませんが、この記事が書籍に掲載される際には上記の文章はバッサリ、カット必然ですのでお読み頂いた方にはレア感有りかもです(?)。

 

 

と、本論に入りましょう。
この映画、観終わり結局何が言いたかったんだろうと1日考えました。
ナムWikiのジャンルを見ると「アクション」「スリラー」「諜報(スパイ)」「ドラマ(ドラマチック展開)」「ノアール」「ハードボイルド」「時代劇」「ミステリー」「サスペンス」「ピカレスク(悪役中心)」と多彩です。
殆ど全編スパイトンリム東林は誰かと言う『謎解き』に主眼が置かれ、まさかの犯人の正体が観客の驚嘆を誘います。
とは言え何がメインテーマ?と聞きたかったくらいでしたが、パンフ記載のイ・ジョンジェ監督のコメントで溜飲が下がりました。
2時間の間ジャンルが盛りだくさんで分かり辛くは有りましたが、こんな意図が有ったんですね?
やはりパンフ購入は必須です(笑)。

 

 

イ・ジョンジェ監督のコメントを引用します。
 
監督だけでなく、脚本と演出まで担当することになり、観客が本作を観るべき理由を考えるとともに、共感してもらえるよう構想した。
映画の舞台で有る1980年代は勿論、現代においても私たちは絶えず対立し、葛藤して居る。その対立を生む個人の信念がどこから来たのか、それが果たして正しいのか疑問を投げかけたかった。
 
フェイクニュースを含めた情報過多の世の中で、特定の組織や政府までもがイデオロギーを通じて我々を扇動しようとして居るのではないか、あるいは厳しい規制が我々を専制政治に従わせようとして居るのではないか?と考える事が有る。
私たちの良心と自己認識が紛争や暴力を止め、次の世代にその禍根を残さない為に貢献しなければならない。
 
(引用 ハントパンフレット 監督コメント)

 

 

全て載せたい気持ちは有りますが、やはり全文は実際パンフを読むべきと控えました。
さすがは文化人、メディアの怖さ、独裁・専制の怖さを熟知して居ます。
イ・ミョンバク、パク・クネの『ブラックリスト』が今も存在したら100%搭載、圧力を受けた事でしょう。
否、既にユン・ソクヨルの『文化人弾圧リスト(仮称)』にトップで搭載されて居るかも?

 

 

確かにこの映画でユン・ソクヨル現政権による独裁政権時代のゆり戻し、専制政治の危険性をいち早く察知し我々に周知させたいと言う意図、それらへの批判精神をひしひしと感じました(分かり辛いですけど:笑)。
 
遅くなりましたが、ここで映画情報を。
 
Netflixの大人気ドラマ「イカゲーム」で主人公を演じたイ・ジョンジェが脚本を手がけて自らメガホンを取った監督デビュー作で、20年来の友人でもあるチョン・ウソンとともにダブル主演も務めたスパイアクション。


 
1980年代の韓国。安全企画部(旧KCIA)の海外班長パクと国内班長キムは、機密情報が「北」に漏れたことから、組織内にスパイがいることを告げられる。組織内の人間全員が容疑者という状況の中、パクとキムはそれぞれ部下とともに捜査を開始する。
二重スパイを見つけなければ自分たちが疑われるという緊迫した状況下で、スパイを見つけ出すことができないパクとキムは互いの動向を監視するようになり、次第に対立を深めていく。
 
そんな中、大統領暗殺計画が発覚し、その緊張は頂点に達する。


イ・ジョンジェがパク、チョン・ウソンが対立するキムをそれぞれ演じる。
 
(引用 映画.com)

 

 

とにかくお金が掛かって居てアクション場面が秀逸、いえ、秀逸を通り越して「ヤリすぎ」感満載です。
日本やバンコクでのアクションシーンは有り得なさ過ぎでしょう(笑)。
推理作品・ミステリー作品としても鑑賞可能なので犯人探しに観客は時間を忘れ引っ張られる事間違い無しです。

 

 

映画は1980年代を背景に、「時代劇」をモチーフにしたフィクション作品ですが、当然ながら幾つかの史実を脚色して描きました。
 
時系列で挙げると
❶1880年光州クァンジュ事件とアメリカの鎮圧容認
❷1983年2月共和国ミグ戦闘機亡命事件
1983年10月ミャンマーラングーン・アウンサン廟大統領爆弾テロ事件
❹1984年在日コリアン留学大学院生スパイでっち上げ事件
などです。

 

 

上記事件については紙面の限りも有り詳しい解説は避けますがコレらの史実と空想を上手く組み合わせ、大胆なフィクション作品を作り上げました。
この時代背景を念頭に置かずには理解し難い事でしょう。
時代背景や映画の制作意図を知ろうと映画鑑賞後多くの観客がパンフレットを買い求めた事は想像に難く有りません。
他にも豪華な友情出演者、派手でお金の掛かった爆発シーンなど舞台裏が覗けるのでパンフを購入しない手はまさに有りません(笑)。
決して私はイ・ジョンジェやパンフレット出版先の回し者では有りませんので悪しからず。

 

 

この様に、映画を観終わって肯定部分も多数有りますが否定的部分も多いに有り、韓国映画だけに『反共和国』『反共』主義がいつも以上に目立ちます。
特にネタバレに繋がりますが、在日コリアン・ウリハッキョ朝鮮学校・朝鮮総連所属者へのステレオタイプ的偏見も少なからず感じます。歴史歪曲も。
コレはユン・ソクヨル政権出帆以降の南北対立ムードの反映でしょうか?残念に思います。

 

特に最後の場面は蛇足(不要)です。

 

 

テーマ、ジャンルを多彩にし過ぎた為か主題がハッキリ浮かばず散漫、理解しにくい事も欠点に挙げられます。
 
本国での制作費25億円、損益分岐点は420万人と推計、2023年8月現在韓国での総動員数は4,352,513名と損益分岐点をクリアし、イ・ジョンジェ監督の初作品としては無事成功を収めました。
 
あらゆる要素満載・混在のこの映画、隠れたモチーフは勿論、イ・ジョンジェとチョン・ウソンの影に大河の如く流れる友情『ブロマンス』です。
2人相反する組織で成果を我先にと反目し凌ぎを削るライバル?好敵手?映画上では『仇(カタキ)同士』と言う言葉がピッタリと来る憎しみに支配された関係ですが、根底に互いを認め信じ合う『ブロマンス』が流れて居ます。その流れは後半に行くにつれ顕著です。

 

 

我々は当然彼らのブロマンスを知り、重ね合わせながら鑑賞するワケですが、彼らの実際の信頼感を映像で確認出来る事も映画鑑賞の静かな楽しみと言えるでしょう。
撮影中、彼らは役柄上なるべく顔を合わさず私的な交流を絶ったと言いますから彼らの友情に則(のっと)った『ブロマンスの闘い』(私が勝手に名付けた造語:失礼)を鑑賞の楽しみにする事もまた一興です。

 

 

映画を語ると言葉が尽きませんが重大なネタバレが襲って来る事も感知し今回はコレまでと参りましょう。
ロードショー終了未定にて絶賛上映中ですし、このレベルの映画で有れば上映終了後Netflixで配信される事必至でしょうから機会を見て是非ご覧下さい。
大掛かりなセット、アクションシーン満載なので劇場の大画面での観賞は確かにお勧めです。
細部を確認したいので私も2度目の鑑賞をすべく配信サービス開始を楽しみに待つことにします。
では。