第7章 韓国ドラマ映画 
179. 梨泰院クラスと六本木クラス
 
 
 
 
昨日から話題の韓国リメイクドラマ『六本木クラス』が始まりました。
普段、日本のドラマに全く興味の無い私も楽しみに待ち侘び、楽しく視聴しました。

 

 

そう言えば本家の『梨泰院クラス』もレビュー記事を書かずに居た事を思い出しました。
と言う事で、今回は梨泰院クラスと六本木クラスの第1話視聴レビュー記事を書かせて頂きます。
 
昨日、『六本木クラス』第1話を観た限りでは「日本の現地化ローカライズ」が上手く行って居るとの印象を受けました。
視聴率も9.6%とまずまずの数字。

 

 

余談ですが我が家のミックスツインズの娘が『六本木クラス』と言う言葉の響きが『梨泰院イテウォンクラス』に比べて軽く感じるとのたまっておりました。
 
梨泰院イテウォンを東京に置き換えると六本木しか有りませんが、確かに朝鮮王朝時代において宿場の様な役割を果たした「梨泰院イテウォン」に比べて「六本木」と言う言葉には余り歴史を感じません。
いっそ旧町名『「麻布六本木町」クラス』とでもすれば両者釣り合うでしょうか?
チト題名が長すぎ?(笑)

 

 

配役も振るって居ます。
私生活では何かと物議を醸して居ますが、スポーツマンで爽やか、濃すぎないイケメンの竹内涼真、以前TBSで好演した『テセウスの船』の誠実で愚直な主人公の姿とダブります。
 
そして、このドラマの最大のキーパーソンとなるヒール(悪役)はこの人しか居ません。日本の誇る名優で悪役の代名詞となった香川照之

 

 

韓国の『半沢直樹』と称されるドラマです、本家本元が1番似合うでしょう。
どうせなら主人公は竹内涼真では無く堺雅人でも良かった?(年齢がダメ?)
 
日本では少々無理の有る設定を何とか「ギリギリOK❗️」のレベルに持ち上げてくれて居ます。
「ムリな設定」については後ほど。

 

 

まずは原作ドラマの概要と参りましょう。
 
不合理な世の中、頑固さと客気で集まった青春たちの「ヒップホップ」な反乱が始まる。
世界を圧縮したような梨泰院イテウォン。
この小さな街、それぞれの価値観で自由を追う彼らの創業神話<梨泰院クラス>。
青春たちの創業神話を描いた青春ドラマだ。
クァンジン作家の同名のウェブコミックである梨泰院クラスを原作としたウェブコミック実写化作品。
 
と有ります。

 

 

次にコチラも原作の制作意図を。
 
「好きなことばかりして生きられるのか」「一人で生きる世の中か?」
 
だれでも一度ぐらい聞いた事が有る様な言葉。
多くの人がこんな他人の言葉に馴らされてて、
自分の価値観を「現実」という「障壁」に合わせて妥協しながら生きている。
 
だれも非難できない。
決められた枠の中に自分を当て嵌めるのが大人っぽいし、
社会生活を上手くやっていると思われるこの時代なので。
持たない者の「所信」は限り無く「頑固」で「客気」となる世の中。

 

 

しかし、そうやって他人と世界に合わせていく人生が本当に豊かに生きる人生だろうか?
誰のための人生なのか?
 
人生で一番大切なのは自分自身でなければならないんじゃないか?
あなたの人生にあなたは居るのか?
 
ここに意固地、客気で固まった社会不適応者が一人がいる。
パクセロイ。
 
この男はひざまずけなくて高校中退、前科者になった。
財閥のパワハラで夢も家族もみんな失って
果てしない奈落の中でたまたま歩いた梨泰院の街。
様々な人種、感じの良いエキゾチックな建築物、自由な人たち、各国のおいしい料理。
世界が圧縮されたようなイテウォン梨泰院で自由を感じた彼は、
再び希望を抱いて惚れてしまった此処、イテウォン梨泰院の路地で
志の合う仲間たちと創業を始める。
 
『所信に代償がない、そんな人生を生きたいのです。』
 
主人公パクセロイは妥協しない。
自由を追う力のない者の所信、

 

 

必然一緒に訪れる苦難と逆境の中でも
自分の所信を貫徹させ、望むことを成し遂げようとする。
彼は頭が賢くもないし、並ぶ才能もない。
ただ硬いだけ。
 
そんな普通の人のセロイの澱(よど)みのない行動は多くの人々に、
一時は彼と同じ人生を生きたが、現実に妥協した、
または、その険しい道を歩いている多くの視聴者に対して、
カタルシスと強い刺激を与えるだろう。
 
(引用 番組公式サイト)

 

 

う~む。
この制作意図は沁みますね〜(笑)。
「誇大広告」過ぎず、ドラマの中心を突いて居ます。普段、オーバーに感じる制作意図ですが、ドラマのスケールに似合っていて、さほど大げさに感じないのは私だけでしょうか?
それは、このドラマがそれ程スケールの大きいドラマと言う裏返しです。
 
このドラマの本質は社会不適合な主人公たちが理不尽な社会でどう生き抜くかと言うマイノリティ讃歌的要素を多大に含んで居ます。

 

 

土下座出来ずに刑務所暮らしまでした社会不適合者のパクセロイ、Sociopathソシオパスと言う精神障害を抱えたヒロインLGBT者、肌の色の違う外国人など、社会的弱者たちがひとつの家族まさしく『ファミリー』を組んで社会の荒波に立ち向かう。
人気アニメ『ワンピース』にも似た様相を呈して居ます。
 
社会に適合出来ないマイノリティーが『イテウォン梨泰院』と言う韓国でも特有の「坩堝(るつぼ)」で、もがき苦しみ這い上がって行くサクセスストーリーと言えそうです。

 

 

イテウォン梨泰院は韓国でも特殊な街です。
元は朝鮮王朝時代、首都ハンソン漢城の郊外の宿場の様な『院』が有った場所。(記事有り)
解放後、アメリカ軍団8軍司令部(別名龍山米軍基地)と隣接し、在韓米軍のナイトライフとして発展。
多くの外国人が訪れる観光地になり、様々な文化圏から来た人々が自分たちの文化を梨泰院に伝播したためソウルの代表的な多文化街となった街。

 

 

外国大使館も多く、梨泰院1洞の人口に対する外国人の割合は2010年代基準で25%を超えるそうです。
梨泰院イテウォン消防署の丘を登ると、イスラムのモスク『ソウル中央聖院』があり、イスラム教徒が礼拝をささげる姿を見ることが出来ると言い、韓国のイスラム教徒、アラブ圏やトルコ、パキスタン、バングラデシュ、インドネシア、中央アジアなどイスラム国家から来た人々が多い街でも有ります。

 

 

この様な人種の坩堝(るつぼ)を舞台として、彼ら社会から弾かれた社会的弱者が「権威」「権力」に立ち向かう姿が、日本で人気を博したドラマ『半沢直樹』に似たリベンジドラマと言う事で日本でも珍しく男性から多くの支持を受けました。
 
その雰囲気そのままに日本での「現地化」を試みている事に好感が持てます。
 
しかし、バックボーンが韓国と日本では根本的に異なると言う事を押さえて置く必要が有ります。

 

 

それは一言で、日本の大企業の創業者は基本、人格者で有り、自らタスキを掛け、トイレ掃除を率先して切り盛りして来ました。
子女教育も一部例外は有れど幼い頃から帝王学を施し、カスタマーのサイドに立つ様に教育され育ちます。
すなわち、江戸時代から続く商売の伝統「社会規範」として社会に染み渡っているのです。
敵を叩くにしても「慇懃無礼」スマートに叩くでしょう。

 

 

一方、韓国では商業は元々「賎業」で伝統は有りません。
モデルは朝鮮王朝時代に権勢を振るう「守領スリョン」です。
買官買職に突っ走り、権力を握ると5年の任期内で元を取ろうと苛斂誅求(かれんちゅうきゅう)の収奪に走ります。
権威=権力で、お金を稼ぐ者は必ず権力を目指します。

 

 

この様な伝統から、現在韓国でも最大の社会問題と言える『カプ甲チル』=パワハラの象徴と言う行為が生まれたと、私は見ます。
 

勿論、この『カプ甲チル』=パワハラ文化を今日の様に広めたのは長年の軍事独裁政権で有る事は言うまでも有りません。

 

財閥でさえ所詮成り上がりに過ぎず、権威を持った者は限り無く傲慢で無礼を働いても当たり前だと勘違いしてしまう文化。
これは韓国で中々退治出来ない『風土病』とも呼べる「悪習」です。
この様な文化が有るからこそ『梨泰院イテウォンクラス』の様なドラマが成り立つので有り、日本で同じ行為はあくまで例外に過ぎません。

 

 

この様な意味で、「土下座」にこれ程の執着を持つヒールが、半沢直樹の名土下座シーンで有名な香川照之のおかげで、何とかドラマの「ムリな設定」を中和させてくれ、現実味有るドラマとしてスタートさせてくれて居ると私は見ました。
 
今後、この「無理くりな設定」をリアルに描いて行けるかどうかが、今回のドラマ『六本木クラス』のキモだと見ました。

 

 

私はウチの家内と違って、1話観たら相当で無い限り最後まで観る人間なので、原作との比較としても最後まで観続けると思います。

 

その都度、感じた時に出没させて頂きますので、今回はご挨拶とさせて頂きます。
ご挨拶にしてはディープ過ぎたとしたら平にご容赦を。♪
 
最後に、もし私のこの記事に賛同して頂けるようでしたら、
ウチのミックスツインズの写真
ポチ!して下さいます様~♪ここにお願い申し上げます。m(__)m

 

 

<参考文献>
나무위키 
[영화 속 마음을 읽다] 이태원 클라쓰 - 존재론적 영웅들의 전장
 
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