第7章 韓国ドラマ映画 
142. ドラマ国家代表ワイフ
 
 
 
KBSワールドで現在放送中のドラマ「国家代表ワイフ」で現在韓国が抱える教育格差問題を垣間見る事が出来ます。
 
このドラマは、家を江南カンナムで買ってワンランク上の人生を過ごすために奮闘する主婦が本当の幸せを見つけるラブコメ・ホームドラマです。

 

 

ハン・ダガム、ハン・サンジン、シム・ジホが主演で、視聴率も現在、最高視聴率18.8%で総合2位を走っており、去年年末のKBS演技大賞でも受賞の栄冠を受けました。
 
夫の投資失敗で江南カンナムを去る事になってしまった主人公で有る妻チョヒ(ハン・ダガム)。
彼女は娘が中学生になる前に江南カンナムに戻り、より良い教育環境を整えたいと張り切りますが、俗物的な考えの妻に愛想を尽かし始めている大学教授で有る夫ナムグ (ハン・サンジン)は妻の行動に懐疑的です。

 

 

日本で言えばNHKテレビ小説とも言えるKBS『イルイル(日日)ドラマ』ですが、例えば故橋田壽賀子の「渡る世間は鬼ばかり』にも似た家族間、登場人物間の生々しい葛藤が、イライラを誘いつつもスカッと爽快感を与えてくれます。

「渡鬼」の様にシリアスでは無く、かなりのコメディー・ドタバタ劇です。

 

夫婦間の問題、嫁姑問題、ウォーキングマムを取り巻く環境や職場問題、その他家族が引き起こす様々な問題が描かれます。

多少オーバーにデフォルメして有る事は当然ですが、韓国社会の現在と問題点を炙り出してくれ、韓国社会を垣間見る上で参考になります。

 

 

あらすじを。
 
夫ナムグ (ハン・サンジン)が全財産を使ったファンドでうまくいかず、江南カンナムを離れることになったチョヒ (ハン・ダガム)。
江南 (カンナム)に再び住むことを夢見て広告会社のチーム長として誰よりも熾烈な生活をしていた。
(引用 KBSワールド)
 
エピソードが多すぎてこれ以上あらすじを書く事が出来ません(笑)。
家族を巡り毎回ドタバタが起こると見て良いでしょう。

 

 

面白いのは、日本でも例えば東京都内で「世田谷区」と「足立区」などと言う山の手と下町間の23区内の教育格差が顕著になり密かな問題となって居ますが、メディアで大っぴらに語る事は憚(はばか)られます。
しかし、その教育格差問題をメインテーマに挙げ、堂々と描いて居ます。
 
<ソウル地図>

 

即ちカンナム江南を巡って教育格差・地域格差の影響で、子どもたちの中でイジメが起こる程、問題がおおっぴらに展開されて居るのです。

 

 

これはデフォルメは有れどカンナム江南を巡る地域格差が尋常では無い事を物語ります。
 
ここで、カンナム江南を日本で置き換えると何処にすれば良いでしょうか?
 

<カンナム江南の位置>

 

東京で言うと渋谷・世田谷・目黒(一部品川)などの城西でしょうか?
一部、最近マリネーゼと称される中央区佃・勝どきと江東区豊洲の雰囲気も有ります。

 

<カンナム江南>

 

他に東京郊外と言う意味で、「新山の手」と呼ばれる多摩プラーザなどの東急田園都市線のイメージが有りますし、千葉で言うと断然、京葉線沿線、舞浜・新浦安などに当たるでしょう。
ハイソな新市街と言った感じです。

 

<カンナム江南>

 

カンナム江南が今日の様にハイソな街として人気を得たのには歴史的経緯が有りますが、長くなりそうなので後ほどワンポイントコラムで述べさせて頂きます。

 

 

簡単に述べれば江戸の「川向こう」と呼ばれた江東地区の様な新天地でしたが、パクチョンヒ軍事政権から始まった「カンナム移住計画」により今や教育熱心な富裕層が住む街になったと言えるのでは?
 
カンナム江南がこれ程『教育富裕層』が住む街になったのには2点理由が有ります。

 

 

大きく、❶学校移転と❷高校平準化制度です。
これを簡単に述べて見ます。
 
❶学校移転
 
1970年代、パク・チョンヒ大統領はソウル市民を漢江以南に移住させる事を国政の重大な目標に掲げ、江南開発を進めました。
1972年「江北カンブク抑制策」にも関わらず、人口が江南に移転しなかった為、江北に有る名門高校の江南移転カードを切りました。
名門キョンギ京畿高校を江南区サムソン三成洞に移す計画を発表し、強力な反対を押し切って1976年に実行しました。

 

<キョンギ高校>

 

続いて、ソウル江北地域の学校の新設・拡張禁止(1974年)、ソウル4大門内に存在する入試学院(進学塾)の江南移転誘導(1976年)などの措置を相次いで発動し、1970年代以降学校20校のうち15校が都心からカンナム江南·ソチョ瑞草·ソンパ松坡·カンドン江東などいわゆる江南カンナム圏に移転しました。
 
この様な経緯によりカンナム江南と他地域の教育格差が拡大しました。

 

<住居費格差>

 

❷高校平準化制度
 
「高校平準化制度」が、図らずも教育格差の大きな原因になって居ます。
 
貧富の差による教育格差を減らすと言う
触れ込みにより、1970年から地域的に順次高校入試を無くし、地元学校群への入学を進めました。
首都ソウルでは2010年に始まりました。
 

 

これは高校入試を取り止め、中学の時の入試戦争を廃止すると言う肯定的な側面は有れど、深刻な問題点も発露します。
 
江南地域に移転した学校はソウルの学校平準化政策の施行によって、より良い教育を受けようとする親たちの意志でカンナム江南への住居移転を促進する事になるなど、8学区地域には優秀な人材が集まるようになりました。
 
そして、大学入試の為の入試学院(進学塾)のカンナム江南への集中をもたらしました。

 

 

学校標準化により高校の良い内申が出にくくなる、一般高の地位が全体的に落ちる、学校間の格差が発生する、入試競争、特に「特目高」入試競争がさらに激しくなるなどの副作用が取り沙汰されます。
「特目高」とは英語教育などの特別な目的に特化した高校で、高校入試希望の受け皿になって居ます。
 
この様に、高校の選択権を侵害し、むしろ地域間の教育格差を深める結果に繋がって居ると指摘されて居ます。

 

 

ドラマではカンナム江南に住む児童たちが遠くから通う主人公の娘リアンに『カンナム江南に住まない人間は学院(塾)から出て行け』と集団イジメを行い、親たちも学院長もトラブルを起こしかねないので退塾しろと、公然と要求します。
観て居て視聴者が胸くそ悪くなるやり取りが続きます。
 
あくまでドラマの世界なのでオーバーとは思いますが、韓国社会の教育格差問題が表れて居る事に間違い有りません。

 

 

地域格差・教育格差問題は今春の大統領選挙でも大きなイシューとして取り上げられて居て、各候補とも様々な選挙公約を打ち出して居ますが、ソウルの住居費の高騰と相まって一朝一夕に解決する事は非常に困難と思われます。
 
この様な深奥なテーマをメインテーマに描いている事がこのドラマの特徴だと言えますが、テンポが良く、毎回持ち上がる問題がスカッと解決(表面上)して行くので毎回の視聴が楽しみです。
特に主人公のチョヒ役のハン・ダガムがウォーキングマムを魅力的に演じて居て、韓国での人気が頷(うなず)けます。

 

 

120回と長期放送ですから、力を抜いて眺める事にします。
再度気になった頃、また出没させて頂きます。
では。

 

 

<参考文献>
나무위키 
한겨레  강남 집값을 이해할 수 없다는 당신에게

 

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