<映画 パイレーツ>
 
ワンポイントコラム
<韓国朝鮮 歴史のトリビア>
249. トジャン図章ハンコ
 
 
 
 
毎度ネタ探しに明け暮れて居る私に新たなネタが立ちはだかりました。
ネタを提供してくれたのはいつものNHKの「チコちゃん」です。
いつもネタ探しに四苦八苦して居る私にとって強い味方です(笑)。
 
<玉璽>
 
今週のチコちゃんで「何故ハンコを押すの?」と言うテーマでハンコについて説明しましたが、今や本家の中国では使用されず、使用するのは日本•韓国•台湾のみだと有り、これには少々「眼から鱗が落ち」ました。
この放送を見て我が国のハンコの歴史について調べて見ようと思い付いたのです。
 
<映画パイレーツの玉璽を持つ主演者>
 
とは言え、「立ちはだかった」と表現したのは整理がとっても難しかったせいです。
資料が断片的で、纏めるのに隘路が付き纏いました。
何とかイメージ付いたので記事にさせて頂きます。
長くなってしまったので2回に分けて述べます。
 
<古代印章発掘のニュース>
 
まず、言葉の由来から。
日本では印章の事をハンコと呼びますが、その由来は江戸時代によく作られた版画に使う板のことを「版行・板行(はんこう)」と呼んだのが由来だそうです。
それが転じて「ハンコ」と呼ばれるようになり、版行(はんこう)を使って書物を印刷する事と、印章で捺印する事が混同したので、印章のことも「ハンコ」と呼ぶようになったとの事。
「判子」と言う字も有るので押す事から来たと思ったのですが、この説にもチト「眼から鱗が落ち」ました。
 
<色々な玉璽>
 
朝鮮語では「トジャン도장」と呼びますが、漢字では「圖(図)章」と書きます。
インジャン인장印章とも言いますが、どちらも『圖印文章』の略語だそうです。
つまり図で押して記した文章と言う意味ですね。
他にもハンコ印章の異名として印・章・信・図書などの用語を使用しました。
 
後に述べますが、署押・花押・ハム(啣、銜) · 着名 ·着押· 手決· 手例 · 手押 · 手掌 · 手寸などのサイン(sign)も印章の代用として使用した信標と言えます。
 
<メソポタミアのシールス(印章)>
 
ハンコは紀元前5千年前にメソポタミアで作られたのがその始まりと言われて居ます。
これが中国に伝わり朝鮮半島など東アジアにも伝わりました。
紙が発明される前には竹簡をまとめて封をする「封泥」と言われる粘土板が主流でしたが、その後現在の印章になりました。
 
 
秦の始皇帝が「篆書体(てんしょたい)」という印章用の文字を定め、官印制度として正式に統一した事で、印鑑の制度が確立しました。
 
 
その後、漢の時代に印章が広く使用されるようになり、皇帝からその信頼の証・統治の証として諸国の王に授けられるようにもなりました。
朝鮮や日本にも伝わり、日本では最古の印鑑「漢委奴国王」の印鑑が有名です。
我が国では文献的には紀元前2世紀に扶餘で国王が「濊王之印」という玉璽(ぎょくじ)を使用したと言う記録が初めてだそうです。
 
< 漢委奴国王>
 
我が国のハンコつまり印章は中国の影響を受け、主に3種類
❶『ポイン寶印』❷『クァンイン官印』❸『サイン私印』に区分されました。
 
『ボイン寶印』には國璽オボ御寶が有ります。
國璽は国名を刻んだ 「朝鮮國璽」「大韓國璽」や 「朝鮮國王之寶」ㆍ「皇帝御璽」 など実務で使用された実用印が有りました。
 
王の印章は三国時代、高麗時代までは国璽と言い、朝鮮王朝時代には玉璽と言いました。
王と王后、世子の印章も同様に呼びました。
国王の璽以外は殆ど身に付けて居たそうです。
 
オボ御寶とは宗廟に保管した王の尊号、諡号などの、儀礼的に王の嘉礼や公式行事に使用したハンコを指します。
 
 
官印とは、中央の官衙や地方の官衙で使用した官吏の印章です。
古くは高句麗時代の『晉高句麗率善韓佰長』と言う官印が存在します。
官印は執務に使われた印章で、階級・身分・地位によって規格が全て決まって居ました。
官吏は中央官から地方官に至るまで官印を持参し、穴を開けてひもを縫い、腰に付けて通いました。
 
<官印>
 
元々、印章は身分の象徴として作られ、王や地方官が自分の政策案を決裁する時に案を認めると言う事を示すために作られた物でしたので平民や賎民は印章を使用出来ませんでした。
 
しかし、高麗時代以降、私印サインが登場します。
サイン私印は個人が使用した図書印、圖章などを指します。
高麗時代以降、私印が盛んに作られ使用される様になりました。
 
 
朝鮮初期には官人だけでなく官吏の夫人もサイン私印を使用しましたが、特に各種売買文書や分財記(遺言書)でその用例を見る事が出来ます。 
そして落款の流行が起こり、文人墨客たちによって書画に落款が使用されました。
 
朝鮮時代に私印サインは前代より広く一般化され、その材料も石・象牙・青銅・木・玉など多様で有るだけで無く、印章の形態も四角・長方形・円型をはじめ、縦型・鍋型・ 香炉型・梅型など様々な多角形が製作されました。
 
 
朝鮮時代の私印サインは種類が多く、
大きく 
① 姓名字号印
② 詞句印
③ 收藏・鑑賞印
④ 封緘印
⑤婦人図書に分ける事が出来ます。
 
姓名字号印は、氏名・字・号をはじめ、姓号・堂号・本貫などを盛り込んだ印章です。
 
<姓名印>
 
詞句印は詞句や文章を刻んだ印章で、経典・訓戒などが書かれる事も有りました。
 
收藏・鑑賞印は主に書画や書冊に所有や感想を示す為に使用した印章で、「~秘笈」、「~永寶」、「~蔵書」、「 ~家藏」 、「~眞賞」、「~珍賞」、「~図書記」など多様なフレーズが使われました。
 
封緘印は、鑑札(手紙)を封印する為に使用された印章で、印郭、書体、布置の側面で他の印章とは異なる特殊な様式でした。
 
 
婦人図書は女性が使った私印です。
朝鮮王朝時代に男性は署名に着名・署押を使用しましたが、女性たちは印章を信標として使用しました。
したがって、他の私印とは異なり、主に証拠の性格を持つ文書に使用されました。
印文は朝鮮王朝初期には「○鄕○氏(某鄕某氏)」とし、後期には主に「○妻○氏(某妻某氏)」と言う風に表示されました。
 
このように、印章は国家を統治する為のシンボルで有ったため、印章の性質と色は、基準、材料、用途などに応じて厳格に区分され使用されました。
 
<朝鮮王朝時代の文人印>
 
次回はこの印章がどの様な理由で日本•韓国•台湾で今も主流で使用されるかについて見ようと思います。
 
余談ですが、大ヒットした映画「パイレーツ」〜海賊:海に行った山賊は玉璽の行方を描き人気を博しました。
2022年続編が公開されます。
 
 
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<参考文献>
국가문화유산포털  한국인장의 개요
나무위키 
【印鑑とは?】印章・印影・印鑑のことばの違い 印鑑うんちく事典