第7章 韓国ドラマ映画
110. 映画 色男ホ・セク 기방도령 2019
ドラマ映画レビューネタが見つからず、Netflixの映画でこのタイトルを見つけたので視聴しました。
原題は「기방도령キバントリョン」で『妓房お坊ちゃん』と言った意味合いです。
歴史的にこの様な言葉は無く、創作だそうです。
まずは作品概要を。
2PMのジュノと大ヒット作品の精鋭キャストが集結した豪華絢爛エンターテインメント!
朝鮮初の男妓生=ジゴロを「2PM」のジュノが艶やかに演じ、次々と女たちを魅了していく。
超人気K-POPグループ「2PM」のアーティスト活動のみならず、映画『薔薇とチューリップ』『二十歳』や「ただ愛する仲」(TV)などで演技力を高めてきたジュノが、兵役前のラストを飾るにふさわしい時代劇絵巻。
朝鮮の伝統的な琴や舞踊を短期間でマスターしたジュノは、韓服をまとい多芸多才な色男ホ・セクを熱演し、観客を虜にしていく。
ヒロインには映画『二十歳』に続きジュノとは二度目の共演となるチョン・ソミン。
さらに『エクストリーム・ジョブ』で注目されたアイドル俳優コンミョン (5urprise)が主人公のライバルを演じ、個性俳優チェ・グィファがムードメーカーとしてストーリーを盛り上げる。
(引用 公式サイト)
次にあらすじを。
自由に生きてきたホ・セクが選んだ道は、朝鮮初の男妓生(キーセン)!
美しく整った容姿、優れた技芸、女を酔わす話術を兼ね備えた青年ホ・セク(イ・ジュノ)は、生まれ育った妓房が経営の危機に瀕していることを知り、女性客を相手にした〝朝鮮初の男性妓生〟になることを決意する。
破天荒だが頼りになる相棒ユッカブ(チェ・グィファ)とタッグを組んで大胆な宣伝活動に乗り出すと、ウワサを聞きつけた朝鮮の女たちが店に押しかけ、たちまちセクに魅了されていく。
順調に客数を伸ばしていたある日、セクは町で美しい女性へウォン(チョン・ソミン)と出逢う。
これまでどんな美女にも心トキメくことはなかった彼が、自分の魅力に全くなびかないへウォンに急速に惹かれてしまい、猛アタックを開始するのだが……。
(引用 公式サイト)
この映画は、朝鮮王朝時代に男性版のキーセン妓生が居たら?と言うヒュージョン史劇・コメディー史劇です。
この映画を理解するには朝鮮王朝時代の未亡人(寡婦)の置かれた状況を知る必要が有ります。
朝鮮王朝時代、未亡人に対する要求は男尊女卑の儒教の教えに従い、厳しい物でした。
若くして夫を失っても再婚せずに一生貞節を守り、ひいては殉死する事が未亡人の重要な徳目と見られました。
朝鮮王朝時代の基本的な法律で有った『経国大典』には、「孝道・友愛・節義などの善行をした者、子孫を和解させた者、患難(かんなん)を救った者など」を毎年年末に定期的に選定し、国王に報告し褒賞する」とされて居ます。
朝鮮時代の歴代の国王は、毎年年末になると全国の監察司たちに烈女たちを報告させ、礼曹が定期的に記録し、国から烈女にチョンムン旌門、チョンリョ旌閭、ポクホ復戸、賞物など様々な恩恵を与える事で、婦女の貞節を奨励しました。
チョンムン旌門とチョンリョ旌閭は孝子・忠臣・烈女たちの家や村の前に建てるようにした赤い色の門です。
別名「リョルニョムン烈女門」とも言います。
ポクホ復戸とは色んな負担の免除を言い、税金などを免除しました。
この様な奨励策で女性達に貞節を強いました。
朝鮮王朝時代、庶民達は女性から離婚もし、再婚も普通に行いました。
未亡人になっても普通に再婚しました。
しかし、士大夫に於いては、実際には再婚が多くなされて居た物の、建て前の上では上記の様に貞節を模範化する事により、守節を強いたのです。
これは女性に多くの不幸をもたらせました。
19世紀末の民衆変革運動で有った甲午農民戦争の農民軍の改革要求にも寡婦の再婚を法的に認める事が入って居た程です。
この映画の女性向けの男性版キーセン妓生と言う発想には、この様な非人道的な朝鮮王朝時代のしきたりに対する批判精神が根底に存在すると言えます。
前半部分はコメディータッチで進行しつつも、後半部分はそう言うシリアス面が支配して居て、コメディーになり切れず毎度韓国映画の「新派的(お涙頂戴)」進行パターンが踏襲されて居ます。
売り上げ額も$1,541,025、韓国国内観客動員数も286,189人と奮いませんでした。
この様に中途半端感は拭えませんが、アイドルグループ2PMのジュノが当時のアイドル「男性版キーセン」を好演して居て、実際にこんな存在が有ったらと言う面白さが有ります。
あり得ない話を歴史的空想でストーリーテーリングする事に意味が無くは無いと思われます。
そして、何より当時の男尊女卑のタテマエに置かれた士大夫の女性達の苦しい状況を知り、今なお完全に改善されたとは決して言い難い男女同権問題を過去を振り返りつつ考えるにも良い素材だと言えます。
何よりも、朝鮮王朝時代の華やかな『キバン妓房』の姿を垣間見るのに打って付けです。
時間が有る方は是非。
<参考文献>
나무위키
한국민족문화대사전