韓国ドラマ映画
107.偽りの隣人이웃사촌  2020
 
 
 
久しぶりに映画を観に行きました。
1月にイ・ビョンホン主演の「南山の部長たち」を観に行って以来9か月ぶりです。
 
コロナ禍が有ったり、仕事などで精神的に忙しかったりしましたが、これ程映画館を覗かなかった1番の理由は、私がブログ記事の執筆で時間的余裕が無かったせいです。
 
 
毎週水曜日は幕張新都心のイオンに朝イチで入場して、TSUTAYA併設のスターバックスでコーヒーとチーズケーキを食べながら、記事を1本か2本書き終えたら気になる新書を一冊読みます。
 
2時にはイオンを後にして、家に戻り撮り溜めたドラマとNetflixを片っ端から見終えます。
なんせ観なければならないドラマ・映画が多すぎて早回ししながら観ないと追い付きません(笑)。
 

<当日料理店ピョルチャンで食べたメニュー>

 

ドラマ・映画鑑賞もブログ記事執筆の重要な下仕事なので、結局私はブログ執筆に支配されてると言えるかも知れません。
現在、ブログ執筆が毎日のルーティン化して居るので、とてもとても映画を観に行こうと言う気にはなれません。
 
 
しかし、今回は故金大中キムデジュン大統領をモチーフに描いたコメディー映画だと言うので、どうしても観たくなりました。
政治的なメッセージが込められた映画には、俄然興味が湧きます。
同じお金を払うにも得をした気分になるのは何故でしょう?
前回観た「南山の部長」も観た甲斐が有った映画でした。
 
 
興行収入で「バトルオーシャン:鳴粱」を抜いて1位を確保した「エクストリームジョブ」も面白いとは思いましたが、さほど政治的メッセージは少なくて、観た甲斐が有ったとまでは思えませんでした。
 
ただのコメディーなら何も映画館に行って観なくても…と言う気持ちになります。
韓国映画でしか作れない骨太の映画が好きなのです。
 
 
勿論、史劇なら有無を言わず観に行きます。
韓国の史劇ドラマを見始めてしまうと、日本の史劇ドラマ映画が霞みます。
なんせ人物・事件にフィクションが多く、形に嵌らず、型破りな映画が見られるので。
 
と言う事で久しぶりに必ず観てみたい映画が登場したので、多少無理を押して行く事になりました。
 
 
実は、今回映画を観に行くにあたって、韓国での興行成績を覗きませんでした。
いつもは毎回、必ず興行成績と評価を事前に覗きます。
大体韓国の映画は日本で公開されるまで1年位タイムラグがあるので、興行結果と評価が分かります。
その情報を知った上で観るのですが、今回は敢えて事前情報をシャットアウトして観る事にしました。
前もって得た情報が、映画視聴にマイナスに働く事を避ける為です。
 
 
ここで、まずは概要とあらすじを。
 
韓国歴代興収10位、日本でも親子愛に号泣する観客が続出したヒット作『7番房の奇跡』(2013)のイ・ファンギョン監督が、待望の最新作を発表! 
 
2020年12月の韓国公開時に初登場1位を獲得した。
 
冤罪を生んだ司法制度への批判をファンタジックなエピソードに包んで描いたファンギョン・マジックは、本作でさらに進化。
 
 
韓国現代史における軍事独裁政権と民主化運動の対立をモチーフにした社会派ドラマではあるが、衝撃の実録ドラマ『1987、ある闘いの真実』(17)や『タクシー運転手 約束は海を越えて』(17)とはアプローチを変えて、心に浸みるヒューマンドラマに仕上げた。
 
監督自身はあくまでも物語はフィクションであり、特定の政治家をモデルにしたものではないと語るが、時代背景や海外への逃避行、政治信念からは、日本ともゆかりの深くノーベル平和賞を受賞したあの元大統領が想起されるだろう。 
 
 
軍事政権が国民の民主化運動を弾圧していた1985年。
政権から目の敵にされ、海外に逃れていた野党総裁のイ・ウィシクが緊急帰国する。
諜報機関のキム室長は彼の大統領選出馬を阻止すべく、ウィシク一家を自宅軟禁。
 
隣の民家での盗聴拠点ではデグォン含め3名の盗聴チームが24時間体制で監視し、共産主義者に仕立てるミッションに動き出す。
 
しかし、家族を愛し、国民の平和と平等を願うウィシクの声を聞き続けるうちに、デグォンは過激さを増す上層部に疑問を持ち始める。
 
(引用 公式サイト)
 
<実際の当時 金大中の写真>
 
この映画、あらすじを知っただけで結末が何となく想像付きます。
必然的にその方向しか無いせいです。
有る意味、観客はおぼろげながら分かっている結末にどの様に向かうのかを確認しながら観る事になります。 
そして最後に原題のダブルミーニングが畳み込んで来る仕掛けになって居ます。
 
原題の「이웃사촌」とは日本語で「遠くの親戚より近くの隣人」と同じ意味のことわざです。
사촌サチョンとは従兄弟(いとこ)の事ですから、
「隣近所は従兄弟」位に翻訳出来るかも知れません。
 
 
邦題は「偽りの隣人」とサスペンス映画風なので、身構えてしまいそうですが、原題は「이웃사촌」イウッサチョンですから、かなり違う気がします。
サスペンスよりも何処かトボけた印象を持ちます。
実際にポスターを比べると歴然です。
 
韓国映画のタイトルはダブルミーニングが好きな様で、例えばソンガンホ主演の「弁護人」などは結末にダブルミーニングが分かる洒落た作りになって居ます。
その様な意味では邦題をもう少し違った題名に出来なかったのか、惜しい気がします。
 
 
この映画、2017年に撮影終了して居たにも関わらず、韓国で3年間上映出来ずに居ました。
それは、主演のオダルスのセクハラ容疑の為です。
 
韓国版「Me To」運動の引き金になった彼の性暴力嫌疑は10年以上前との事で嫌疑不十分で不起訴となりましたが、2年間活動を自粛しており、そのせいでこの映画も含め彼が主演する3本の映画が上映出来ずお蔵入りして居ます。
 
<歴史的事実と映画の対比表>
 
今回、ワーナー・ブラザーズが韓国を撤退する事により版権の売買がされた為、急遽上映される事になったそうです。
 
以前記事でも紹介しましたが、韓国で「1千万人妖精」と呼ばれたオダルスのスクリーン復帰が吉と出るか凶と出るか注目を浴びました。
 
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私が映画を観た感想ですが、
この映画は一言で『幕の内弁当』の様だと思いました。
最近観る韓国映画は殊にその傾向が強い様に思います。
 
 
ナムWikiではジャンルを「コメディー」として居ました。
映画のパンフレットには「ヒューマンドラマ」と有りました。
政治を扱い、殊に軍事政権時代を扱って居ますからサスペンス物とも言えます。
1985年と言う特定の時代を扱っている事も有り「歴史物」とも言えます。
 
 
特に、歴史を扱って居ながら、歴史的事実を扱うでは無しに、全くのフィクションで引っ張って居るので、韓国で最近人気のフィクションに近い『ファクション(ファクト事実+フィクション)』物とも言えます。
そして、最後はお決まりの「新派劇」つまりお涙頂戴のメロドラマになります。
 
この様に、主題が1つに絞れず、どのジャンルをもカバーして居る所がポイントだと言えます。
 
実際、その様に主題が曖昧なせいで、韓国では評論家や批評家達から良い評価は受けられなかったと有りました。
 
 
ドラマ前半はお決まりのコメディー調で行くのですが、重苦しい時代背景の事も有り、現地の韓国人では無いと言う制約も有り、キーワードに乗りにくく、当日映画館で観る我々観衆から笑いは出ませんでした。
 
私も「多分韓国ではここで大笑いするんだろうな〜」と思う場面が沢山有りました。
主題歌にもなったミナの「ピングル・ピングル」などは好例です。

 

韓国では軍事政権時代、意味も無く当局の恣意性により大衆歌謡が禁止曲になる事が多く、現実的には禁止曲になって居ない上記の曲が「ファクション」の世界で映画の様なバカバカしい理由で禁止曲にされる事も多かったろうと思うと、韓国の人なら思わずクスッとしてしまう場面でしょう。
 
 
中盤になってやっと呼吸が掴めて来たのか、館内から笑いも出ましたが、政治を扱う暗い時代をバックにした作品のコメディー化には隘路が付き纏う物なので、敢えて果敢に取り組んだ監督・スタッフの気概を思い知りました。
 
この様に民主化弾圧の自国の暗黒の時代さえコメディーとして「茶化(ちゃか)す」余裕が有る事自体、韓国エンタメの懐の広さを感じます。
 
 
ドラマのストーリー展開自体は歴史的事実とは大きく異なっており、監督自身が「歴史的人物を参考にしたのでは無く、ホームドラマ、ヒューマンドラマとして観て欲しい」と再三強調して居る通り、あくまでメルヘンとして観るべきでしょう。
出来れば映画の様な歴史展開になれば最高の結末でしたが、現実はそうなりませんでした。
 
そう思うと、監督の代表作の「7番房の奇跡」や日本でも流行った「愛の不時着」の様に、この映画も観衆に現実逃避を与えるメルヘン映画として観る必要が有るでしょう。
以前、「ラストプリンセス」のレビュー記事にも使った題名『そうなって欲しい歴史』と言う言葉が1番シックリ来ます。
 
 
そうなり得なかった歴史的事実に対して、国民にカタルシスを与える事は決して無駄な作業では有りません。
そうなるべく、国民に更に影響を与える訳ですから。
 
これは、現在軍事政権下で苦しんで居るミャンマーを始め、世界の軍事政権下の民衆にも訴えて居る、普遍的なメッセージと言えるでしょう。
平和な日本で、こうした映画を観る理由もそこに有ると思いました。
 
肝心の韓国での成績ですが、残念ながら幾ら探しても最終成績を探せませんでした。
 
 
監督のネームバリューや先のオダルスの話題などで、年末ボックスオフィス1位発進で15週連続1位を獲得しましたが、コロナ禍の影響で観客動員にはかなりの隘路が付き纏った模様です。
 
また探せたら追加したいと思います。
 
最後に言葉遊びを。
主人公のオダルス演じるイウィシク의식で意味は「意識」つまり民主化への意志を表し、チョンウ演じるテグォン대권「大統領選挙」と「大権」大きな権力を表して居ます。
こう言った遊びも監督らしく遊び心が一杯だと感じました。
 
<パンフレット>
 
パンフレットもテグォンのノート風で洒落て居ました。
画像をお借りします。
 
<パンフレット内部>
 
<参考文献>
나무위키 
오달수 신작이 말하고 싶은 것은 무엇이었나?
<이웃사촌>, 그들이 말하는 이웃사촌에 전라도는 없다
한국경제 넘치는 감정과 설정…영화 '이웃사촌'

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