ワンポイントコラム
<韓国朝鮮歴史のトリビア
215.夜明珠ヤミョンジュ
BS-TBSで目下放送中の「帝王の娘 スベクヒャン」を観ていたら、『ヤミョンジュ夜明珠』なる珠(たま)が出て来ました。
王女が王様から頂いた大事な宝物だそうでしたが、何と凶器に使われてしまいました(！)。
初めて聞く名前だったので、気になり調べると、実在する宝石でした。
なので、今回はこの不思議な『ヤミョンジュ』について述べたいと思います。
「ヤミョンジュ夜明珠」とは、その名の通り、夜になると自然に光を出す玉(ぎょく:球)で「ヤグァンジュ夜光珠」とも言います。
一説には「鯨の目玉고래눈알コレヌンアル」とも言うそうです。
日本語では「ヤメイシュ」と読み、中国音で「イェミンジュ」とも読むそうです。
良く中国の古典小説や武侠小説で登場するそうで、想像の産物とされ易いですが、驚くべき事に現代にも存在します。
中国の皇室でも貴重な宝物だったそうで、歴史の記録にも皇室の宝物としてヤミョンジュがしばし登場します。
近くでは、中国近代の軍閥で有る孫殿英が、莫大な副葬品を狙って西太后が埋葬される明東陵を盗掘しましたが、彼女の口に嵌めて有ったヤミョンジュを取り出す為に、彼女の遺体を損傷して奪ったそうです。
現代科学を介して明らかになった、ヤミョンジュの光の正体はまさに石の内部の微量の放射性元素に起因する蛍光だそうです。
近代物理学が発達する前の前近代の中国では、その正体を知る事は出来ませんでしたが、光が放つ神秘的な石は全部「ヤミョンジュ」と称した様です。
その後、西太后の死体の口にあったヤミョンジュは、ヤミョンジュの一種とされた蛍石(ほたるいし:フローライト)で有る事が確認されました。
西洋では魔除けとして、古くからパワーストーンと珍重されて居ました。
蛍石の結晶に含まれている微量の元素が崩壊し光が出ます。
この際に微量の放射能が出ますが、日常生活に人間がさらされている放射能の量よりも少ないそうです。
しかし、夜に輝くだけに、ヤミョンジュの中にはラジウムやウランなどを多く含有した、人体に害を与える石も有ると言います。
知りませんでしたが、我が国にもヤミョンジュは存在しました。
三国時代、百済チョンジ腆支王5年(410年)に倭国が使者を送ってヤミョンジュを捧げたという記録が有ります。
時代考証がメチャクチャな事が多い韓国史劇ドラマですが、この「帝王の娘 スベクヒャン」はそう言う意味で、意外にも考証に忠実と言えるでしょう。
<帝王の娘 スベクヒャン>
幸運のシンボルとして知られるヤミョンジュは昔から中国では皇帝に捧げるジュエリーでした。
中国の雲南省に有名なそれが知られており、倭国からこの宝石を贈られた百済の腆支王は、ヤミョンジュを贈った倭国の使者をとても優遇したと言います。
韓国の国内一般でヤミョンジュが知られる様になったのは、2005年～2006年に放映されたドラマ「ソドンヨ薯童謡」に五色のヤミョンジュが出てからだと言います。
実は ドラマ「ソドンヨ」に出て来たのは、トパーズでした。
<ソドンヨでヤミョンジュ代わり使用したトパーズ>
このドラマでヤミョンジュが紹介された後、ヤミョンジュを求める人が多くなったそうです。
その後、2009年にドラマ「ソンドク善徳女王」でもヤミョンジュが皇室の宝物として紹介され、知名度が更にアップしました。
<ヤミョンジュの明るい時と暗いときの姿>
外が明るい時に光を貯めて、暗い時に光を発散する宝石という自体が珍しいと言うしか有りませんが、最近では人工物が多いそうで、本物の天然石なら価格も当然、物凄い額になります。
例えば、2002年の国際宝石市場で直径40cm重量104kgのヤミョンジュが1900億ウォン(約178億4千万円)と鑑定されました。
<95億ウォンのオークションで出てきたヤミョンジュ>
最近では、2009年の『世界限定品博覧会』で
8.1kgのヤミョンジュがオークションにで95億ウォン(約8.9億円)で出展されました。
2007年外モンゴルで発見されたヤミョンジュは、3年間研磨を掛けて2010年、直径1.6m重さ6トンの3700億ウォン(約347億5千万円)で披露されました。
<3700億ウォンのヤミョンジュ>
この様に正に夢の宝石ですが、三国時代に既に存在した事が、歴史のロマンを我々に掻き立ててくれます。
普段無心に観る史劇ドラマですが、この様に、登場する小道具にも関心を払って見て下さい。
また新たな発見が得られるかも知れません。
<参考文献>
나무위키
잘 알지 못하는 보석이야기 야명주
